東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ギャップ大好き

先週は春期東京操体フォーラムが東京であり、久々にネクタイなんぞ締めてスーツで街を闊歩しておりましたが・・
今日の私はとっても素敵なスタイルです。


頭にはパチもんのニューヨークヤンキースの帽子をかぶり、もう普段は着なくなった時代遅れのシャツと首にはタオルを巻きつつ、手には滑り止めの付いた軍手、紫色のズボンに足は膝まであるゴム長靴を履き・・・



そう、昨日、今日、そして明日の3日間は毎年恒例の農事作業です。
まあ、早い話が田んぼの手伝いという事です。私の家は現在、約8反ほどの田んぼを作っております。因みに1反が約300坪になりますので、約2,400坪程度の田んぼを作っている事になります。



作っていると言っても実質上は両親が作っているわけで、私が1年間を通して参加?出来るのは主に5月のお米の苗を作る段階の種蒔きと今回行っております代(しろ)かきと言われる作業、後は秋になり稲刈りをするのですが、稲刈りをした後に稲を乾燥さすための干し場を竹で作るのですがその組み立ての補助、そして刈った稲をそこにかける作業。
後はその乾燥させた稲を脱穀し、袋詰め、それをもみすり。
大まかに私が携わるのは5月と秋の収穫期のみといった感じです。


因みに今頃の農業は殆どの所で機械化が進んでおり、田んぼの水の状況を見たり、農薬を蒔いたり、草刈り等の細かいアナログな作業を除けば、ほぼ座った状態で米が作れるほどに進んでいます。
ですが、大規模農家であればそれでも良いのですが、私の所のような毎年お米を作っても15万円位の赤字が出るような小規模農家では如何に金をかけずに最小限の人力で最大限の効果をあげるかが、大きなテーマとなって来るのです。


よって、私の家ではほぼ昭和40年代後半の農業風景が未だに見られます。
今週私が行っております“代(しろ)かき”なる作業も田植えをする際に水を張って田んぼの表面を平にして行く作業なのですが、私の家では以前は牛がやっていた作業を私がやっております(牛の代用品という訳で・・・)。


作業はハシゴに紐をつけて、それを自分の腰に巻きます。そして田んぼの中をそのハシゴを引っ張って歩くのです。これが中々どうして結構にキツイ作業で、雨が降った日には足はとられるわ、泥の荷物は付いてくるわで、しっかりと腰を落とさないとひっくり返りそうになります。この様な時は色々なことを考え、妄想しながら作業をしていくと結構楽しめます。重心を何処において歩くと最も疲労が少ないか!とか、“むむ!”拇指球側に意識をおくとどうだろう・・などと様々な事を考えながら歩いているうちに大体終了してしまい、カラダの楽な使い方を覚えた頃には全ての作業が終了し、来年へと先送りになってしまいます。



ただ不思議なことに年々歳は重ね、足腰も弱くなっているはずなのですが、不思議と作業自体は楽に成っている気がします。重心が安定してきて余り酷く足を取られなくなったのです。田んぼの中で足を抜く際もコツがあり、足を真上にズボッと抜いてしまうと足を取られるのですが、骨盤を意識し骨盤の前面を押し出す様にし、滑らす様に歩くと楽に歩行が可能になります。そしてやはり目線は真っ直ぐ正面を見て、下を向かないこと。こうすることで更に腰が坐り動きが安定してきます。


ですが、それ以上に自分自身が田んぼに出ることで癒されていることにフト気付きました。このハシゴを引くという単純な作業の最中にも、自然が息づいているのを懐かしい様な思いで感じ、ノスタルジックな甘酸っぱい気分になるのです。


足元を見るとアメンボウが水面を走り、カエルの卵がプカプカと気持ち良さそうに漂い、ヒルは足下をウロウロと独特の泳ぎでくねっています。
ふと目線を田んぼの脇に外すと、蛇が慌てて逃げ出しています。


そう言えばガキの頃は蛇を首に巻き付けて遊んでいたなぁとか・・カエルを餌にしてザリガニを釣ったり。
自然の中で遊ぶことや旬も含め今の時期にどんな昆虫がいて、どんな動植物があるかも殆ど把握していたなぁ・・・など、思わず気分は昭和40年代にタイム・スリップしていました。


私の家は現在、ありがたい事にお米、旬の野菜、家で飲むお茶(全部では有りませんが)など、食卓に並ぶ殆どの物が自給自足でまかなえています。但し、あくまでもこれは両親のお陰であって、私たち夫婦に至っては農業は殆どレクリエーション・レベルにしか有りません・・・


今、両親がやっている作業を全てやりなさいと言われた日には、気を失うか、3でアホになるしかないのです。
それ位、根気とプラス食べる人が喜ぶ姿が想像出来なければ出来ない事だと思います。
ですから、両親には本当に感謝しています。少しでもカラダに良い物をという両親の気持ちや本当に土が好きで、農業が生き甲斐と語る二人を見ていると格好いい!って思います。
私も出来る限りなら今後も両親に協力しつつ、日本の食糧自給率を上げるため、毒入り餃子を食べなくても良い様に最大限の努力を惜しまぬ様に地道にやっていきたいと、小さく心に誓います。小さくですよ・・・
PS 今日も両親はお茶摘みに出かけております・・・・



福田 勇治