東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

お気楽なお話 その2

ずーっと前の事です。
まだ僕が20代でプロの格闘家として試合を始めて
まだ僕が若手だった頃の話です。


プロの練習はミットという練習をします。


皮の中に布切れを小さく切ったものやスポンジを小さく切ったものを沢山パンパンになるまで詰め込んだ物を
トレーナーが持って。


選手がそこにパンチやキックを叩き込む。


時間は僕のジムは5分1ラウンド。
それを試合の前には5ラウンド以上やる。


その他にサンドバックやスパーリング色んな練習をするんです。


5分と言えば短そうです。


朝もう少し寝ていたい時の5分なんかあっという間に過ぎてしまいます。


でもミットの5分は朝の1時間に匹敵するんじゃないのかな。


真剣に僕は思ったことがあるくらい、ミットの5分は大変な時間です。


20代の頃のある日僕は気がついた事があるんです。


その日はたまたまあんまり調子が良くなくて、試合もすぐにはないしジムを休もうかな。


何て思いながらもジムに行った、そんな日でした。


ミットを蹴る時に、僕はこんな事を考えたんです。


悪魔が降りてきたのかな。
どうせ試合もないし、適当に軽く蹴っちゃおう。


いつもよりも遥かに力の抜けた蹴りでミットを蹴る僕。
パスーンって間の抜けた音でもするんだろうな。


いい加減に蹴った僕の足は。
スパーンと良い音でミットから離れたんです。


力が抜けてもやっぱりミットを持ってくれてる人がいるからそれなりには蹴る。


そうすると面白いんですよね。
力が抜けた分、身体がバランス良く上手に動いてくれるんですね。
力が抜けてるから押す力と引く力がバランス良くなってる。


蹴る時でも何でも力が入り過ぎてると押す力だけで良いのに引く力も一緒に出しちゃう。


そうすると結局意味が無いんですよね。


自分で自分にブレーキをかけてるだけ。
アクセルを踏み込んでブレーキをかけてる。
それじゃあんまりスピードが出ない。


そんな蹴り方をしてたんでしょうね、若かった頃には。
頑張って無駄な力をいっぱい出す。


その時でも下手な人は頑張って力を出してる感覚しかない。
だから苦労して無駄なエネルギーを消費してるだけ。


それではミットに力は行かない。
行かない力は何処かに消える事は決してない。


その無駄な力は自分の力んで歪んだ身体のバランスを保つ為に消える。


そして自分の身体に負担をかけてるだけ。


汚いフォームは力がない。
余計な努力してるから反応も鈍い。


何よりも毎日そんな無駄な事してたら無駄な力がいずれ自分に帰ってくる。


何度も何度も繰り返した無駄な力は自分の腰や肩やなんかをいずれ痛めてしまう。


楽に蹴って良いんです、同じ力が蹴りにあれば
楽に蹴ったほうが良い。


楽に同じ事が出来れば相手に対して余裕が生まれるから。
スパーリングなんかも楽しくなる。


楽だと楽しいんです。
間違って頑張りすぎて余計な事をしても強くはなれない。


そんな事に気がついた日でした。
だから降りてきたのは本当は格闘技の神様なんです。


ありがとうございます、本当は感謝の日だったんです。


調子が悪くてもジムに行ったからプレゼントが貰えたんでしょうね。


格闘技って頑張るのが美学的な部分があるから。
間違って頑張るのはよくないって思うんです。


間違ってるのって、勘違いしやすい。
身体に負担をかけてるのを、ただの辛さを頑張ってるって勘違いしやすい。


そんな事に少しだけ気がついたのが。
20代前半の頃で


ようやく最近少しだけ
なんであれだけ違ったのか分かるようになってきました。


だから僕は道場で楽を教える。
サボるんじゃない楽を、工夫して楽しさに繋がる楽を教える。


それは気持ちが良いって事と同じ。
僕はそう思う、人はサボりたいものだから。


そのくせ楽して良いってあんまり良いって感じないみたい。


質の高い良い楽は無駄な努力よりずーっと良い。
無駄な努力の方が多分楽をしてる。


ただ適当に身体を動かせば良いんだからサボってる事になる。


変な楽をしてるのが変な頑張り。
間違った動きで欲張っても力は無駄になるだけ。


そんな風に僕は最近思う。


楽って言葉は楽しいと同じだから。
サボるんじゃない楽があるように感じる。


楽にして良いよっていうとみんな変な顔になる。
それで説明すると面白がってくれたりする。


そんな変化が僕には面白い時間。
若輩者だからお気楽に楽しみながら、色々と遊びながら考えてます。


まだ間違っても良い時間は凄い楽しい時間。


若手だった頃に格上の選手との試合は楽しかったな。
負けて当たり前の試合の出来る時間はいつまでも続かない。


やがて試合に勝って上のランクになると。
取りこぼしは許されなくなってくる。


大物を食うのは若手の特権。


そんな時間が懐かしかったりしたな。
プロでメーンとか張ってた頃僕はそんな事を感じてた。


取りこぼしの出来ない時間はあんまり僕は好きじゃないな。


またそんな時間がやって来て嬉しさを感じてる。
(まあ年齢は若手じゃ全然無いただの若輩者なのですが。)


失敗できる時間に色んな事を試せる時間って素敵な時間。
あとでアチャーって思い出すような事はいつまでも出来ない。


そんな時間は凄く大切な面白い時間。
その時間は面白い時間。


僕はそんな素敵な時間を40代になってまた感じてます。
ありがたい楽しい時間を過ごしてます。


許される範囲で暴れたいな。


もちろん本当に暴れるんじゃなく、どんどん無鉄砲に学びたいなですよ。(笑)


平直行



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