東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「合目的」

森田です。



キンモクセイの香る頃になりました。
オレンジの小さな花が愛らしいです。



残念ながら、小さいときに嗅いだ芳香剤の出来が良すぎて、
キンモクセイの香りは何かを連想してしまいます。
匂いの記憶は強力だなと、この季節いつも確認してしまいます。


なんだか色気なくてすみません(爆)。



さてさて、今日はある言葉について書こうと思います。
それは、「合目的」です。


yahoo!辞書では
・合目的
[形動]ある物事が、一定の目的にかなっているさま。


となっています。
私はこの言葉は操体の世界に足を踏み入れるまでは聞いたこともなかったです。
学び始めても初めのうちはいまひとつピンとこなかったのを覚えています。



操体の臨床を学ぶにおいてはではからだの使い方の習得は外せません。
これはただ患者さんにからだの使い方を教えるためだけにあるのではなくて、
患者さんに動診を通すときに、介助者としてからだの使い方、
つまり、般若身経を身につけていないと十分な聞き分けをする環境を作れないからです。


この場合の「合目的」の目的とは
「患者さんのからだの感覚の聞き分けがよりよくできる環境を作る」です。
ここではひとつひとつ介助に関してのポイントは説明しませんが、
例えば一人が患者役で動診を受けてみると、


・操者が目的にかなったからだの使い方をした時の患者のからだに生じる感覚の聞き分け
・操者がからだを局所のみバラバラに使った時の患者の感覚の聞き分け


この2つは1か100か、くらいの差が出ます。


患者役や操者役を通して、からだで「目的に合った」からだの使い方をすると、


・操者の腕力を使うことなしに効率よく力が発揮される。
・患者に与える介助が最初から最後まで安定する。
・無駄に疲れない
・むしろ自分のからだも気持ちよい


よって、患者さんの感覚を聞き分け、きき分けた快適感覚を十分に味わうという目的にかなうポジションがとれるわけです。


これを例えば、生活の中にあてはめてみますね。
重心安定の法則が身に付いている状態で包丁を使ったときはどうでしょうか。


1.足は腰幅、平行に開く
2.膝はホッと力を抜く
3.背筋は軽くのばし、目線は目の高さで
まず初めにポジションをとってみます。


この重心安定の法則に


4.利き足と反対の足を半歩前、


これを加えて包丁を使ってみてください。


もちろん手は小指、足は親指を効かせますと、自然と包丁は手前に引くような動きになります。
わかりにくいかもしれませんが、重心移動もこの姿勢だと安定して行われています。


これって、般若身経が身に付いてると料理人さんのからだの使い方と同じになりますよね。
重心が安定して、包丁でものを切るという目的にかなう、のです。
言葉をかえると、切るという作業に、からだ全身が「合目的」に動いてくれるのです。


からだに無駄な力が入らず、きれいに切れ、見た目もきれいで味もガタガタに切れているよりずとおいしいはず。
美しく切れることで、心の満足も満たされて、
食べてくれる人との楽しい時間も共有できるかもしれませんね。


これは、ものを持ち上げたり、歩いたり、どんな動作でも応用できます。


もちろん1日中こんなことを考えていたらオカシくなりそうなので、
時々「あ、そうだったっけ」と思い出すくらいでいいと思いますけど。


操体の施術者は、これが身に付くよう日々精進なのです。


それほど大事なので、フォーラムでは、毎回般若身経について発表しております。
こんどの秋のフォーラムでは、「般若心経を臨床に活かす」として、三浦寛先生と今昭宏先生が実技を交えてお話ししていただきます。


実行委員の我々も楽しみにしております。




あ、宣伝になってしまいましたが(ベタですね…)、



話を戻すと、以前は「合目的に」って言葉、私の辞書にはありませんでした。
日常で聞いていたとしても、耳を素通りしていたと思います。
でも、今では臨床をはじめ、普段の生活に「合目的」や「理にかなう」を
考えたり、口にするのも普通にできるようになってきました。
なんというか、気に入っているのです。「合目的」「目的に適う」という言葉が。


からだという自然の要求にかなうように生きる、
これって、何にでも応用ができます。


何かを行うときにからだ全体で取り組むことの出来具合に充実感やスッキリ感を味わうのは気持ちいいですよ〜。


では、今日はひとまずこの辺で。


森田珠水


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