東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

なぜ、操法に名称をつけないのか??

お久しぶりです。畠山裕美です。


この前フォーラム実行委員ブログを担当したのが丁度9月の初秋の頃でした。あれから新しい年を迎え、今日から2月です。まだまだ寒いですが、春と春のフォーラムが待ち遠しい今日この頃です。


今回はたまに私が受ける操体についての疑問に関して答えていこうと思います。


操体あるいは操体法をされている方で、操法に対して名前をつけて呼んでいることがあります。有名なところでは「カエル足」とか「膝倒し」とか「つま先上げ」とか。他に私が聞いたところでは
「ヤモリの操法」とかいうのもあります。足趾の操法のことを「指チョンチョン」というのも聞いたことがあります。


ちなみに、私も最初の頃は「カエル足」とか(カエルさん、とか)「膝倒し」とか「つま先上げ」と言っていました。何故かと言えば
周りの人がそう言っていたからなのです。更にもう少し難易度が高いものを習ったときには『大腰筋の操法』とか『○○筋の操法』というように、ターゲットとする筋肉の名前がついたものを覚えていました。


しかし、あるとき気がついたのが『橋本先生のには○○操法とか書いてない!操体1とか操体2とか書いてあるだけで、具体的な名前はつけられてないけど、どうしてだろう???』ということでした。


例えば「カエル足」という言い方は、伏臥位で足を腋のほうに引き上げる格好が「カエル」に似ているように見えたわけで、おそらく「通称」だったものが『カエル足』という言い方になったものだと思われます。まあ、通称で患者さんに説明する場合などに使われたのかな、それが愛称あるいは通称として定着したのでしょう。


そして、その「どうして?」というナゾが解けたのは三浦先生(理事長)のお陰でした。特に『カエル足』とか『膝倒し』という言い方に違和感が無かった私でしたが、三浦先生の講習では『カエルさん』とか『カエル足』とは言いません(いえ、三浦先生が『カエルさん操法』とか真顔で言うのは想像できませんが・・)。


何と言うかと言えば『伏臥膝関節の腋窩(えきか)挙上』というのです。何だか難しそうな漢字ですがこれを見ると字のごとく、うつ伏せに休み、膝を腋の下に向かって引き上げる、という動きがわかるのです。また実はこの動き、単にうつ伏せに寝て、膝を腋のほうに引き上げるという動作だけなのではありません。


(勿論、患者さんにはこういう言い方はしませんよ。動診の際はちゃんと手順を説明し、介助し、言葉の誘導をかけながらやっていただくのです)




人間の動きは8つあります。
手関節だったら、外旋、内旋、橈屈、尺屈、背屈、掌屈、圧迫(おしこみ)、牽引(引き込み)足だったら、外転、内転、外反、内反、背屈、底屈、圧迫、牽引です。実はこの『伏臥膝関節の腋窩挙上』、足関節(そくかんせつ)の外転から作られる動きなのです。

操体では、基本的に末端関節からアプローチします。例えば、全身形態の連動を促すには、からだの中心腰から動くよりも、手関節、足関節など、末端関節から動かしてみるほうが、感覚のききわけをとらせやすいのです。これを「順連動」と言います。しかし、ボディに歪みがあるとか、何らかの理由で末端から動かしても感覚のききわけができない患者さん(クライアント)もいらっしゃいます。そういう場合は、末端からではなく、逆にからだの中心、腰から動きをとっていただき、感覚をききわけていただく、ということをやります。これが「逆連動」です。





足関節の外転に話を戻しますが、伏臥位で左足を二分の一屈曲位にとります。この状態から、左足関節を外転(かかとは内側、つま先は外側に回転させる)させてゆくと、左の膝は、左足関節の外転に伴って、腋の下のほうに向かって上がっていきます。足首は、外転するに従って、床に近づいてゆきます。この動きを続けていくと、いわゆる『カエル足』になるわけですが、『カエル足』と言ったのではその「おおもと」の動き(動きの源泉)が分かりません。


単にがばっとうつ伏せに寝て、平泳ぎのカエルよろしく足をひょこひょこ上下させるのでは、動きの意味が分からないのです。
しかし、足関節が外転するに従って、膝が腋のほうに上がってゆき、腰が上がっていく足の反対方向に捻転してゆきます。また、連動の法則というものがあり、首は上がってくる膝の方向に向けたほうが向けやすいのです。
なので、『足関節の腋窩挙上』と言うのです。


というのは、操者が『カエルみたいな動きをさせりゃいいじゃん』と思って介助するのと、足関節の外転に従って、膝関節が腋窩挙上する、と動きの流れをイメージするのとでは、患者さん(クライアント)の動きが全然違うからです。中には「カエル」に余りいいイメージを持たない方もいるでしょうし。私は「カエルみたいな格好してぇ〜」と、言われたらちょっとイヤですね(笑)


勿論私もクライアントに指導する場合は『膝関節の腋窩挙上』とは言わず、
『足関節を外側に回す』と言います(カエル足とは言いたくない!)。


このように、「動きの源泉、源流」ということを考えると、師匠三浦先生が、何故「膝関節の腋窩挙上」と言われるのか、よく分かるのです。



お持ちでしたら橋本敬三先生の著書を開いてみて下さい。操法が紹介されているものがあると思いますが、いずれも「操体1」とか「操体A」となっており、操法には具体的な名称がついていないのです。


これは、三浦理事長から伺った話です。
三浦理事長が橋本先生のところで修行中の頃だそうですが、当時まだ『操体』『操体法』という言葉はありませんでした。なので『先生がやっておられるのは何と言うものですか?』と尋ねたところ
『名称などどうでもいい、真理こそが大切なのだよ』と言われたそうです。


橋本先生が操法に名前をつけなかった理由も何となく分かる気がします。
操体、という言葉にせよNHKに出るので何か名前をつけなきゃならないということで、『体操の反対だから』『体操じゃないから』(諸説ありますが)『操体』という名前にしたという話も聞いたことがあります。


ところで、私が『カエルさん』とか『バッタさん』とか言うのを聞くと思い出すのがヨガです。
ヨガのポーズはその完成形に名前がついているようです。私も少しだけヨガをやったことがありますが、ヨガは順番があって、最後に完成ポーズをとり、そこで動きを停止(ポーズ)します。その時の姿形が動物に似ていたり、シンボリックな形をとっているのです。このあたりは日下実行委員に聞いてみて後々ご報告します。


一方、操体には『完成ポーズ』というものはありません。


あくまでも『動かして感覚をききわける』という行程が大切だからなのです。動かしていくそのプロセスで感覚のききわけ(快適感覚がききわけられるのか、ききわけられないのか)を行うのが操体であり、『カエルさんのような格好』をして、ストンと全身を瞬間急速脱力させることではないのです。


このように考えてみると、何故師匠(三浦先生)が『操法に名称をつけないのか』という意味が分かってきます。
・動きの源流を見失わないため
橋本敬三先生も操法には名称をつけられていなかったため


なのです。


というわけで、私達は操法に名称をつけずに、動診で呼ぶことが多いのです。



Hiromi Hatakeyama




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