東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

動診と操法の区別をつけよう!

皆さんは「動診」と「操法」の区別をつけておられるでしょうか?


実は「動診」「操法」の区別、というか違いを認識するということは、操体を理解する上でとても重要な事なのです。特に「快適感覚」を舵手として操法をすすめるには、これが本当に重要ポイントとなります。


操体の一連の流れを書いてみると
・問診、視診、触診(どのような治療法でもこの辺りはやります)
・動診
操法
・脱力
・回数の要求の確認


快適感覚をききわけ(診断:動診)、味わう(治療:操法、この関係をよく覚えておいて下さい。


◆◇動診◆◇


(1)操者は受け手に対して、『動きの安定』『運動充実感』『連動を促す』『感覚のききわけを促す』ために、受け手のからだに介助をかけます。場合によっては補助も与えます。基本的には、手関節、足関節など、末端関節です。また、操者の頭の中には、連動の仕組みが入っているので、操者はちゃんと手順を追って受け手に動きを指示することができます。その適切な介助と補助、言葉の誘導によって、受け手は感覚のききわけに集中しながら(からだの動きを)表現することができます。


(2)操者は「ゆっくり」というキーワードを用います。何故なら、動診の目的は『ゆっくり動いて感覚をききわける』ことだからです。この『感覚のききわけ』が、『診断』にあたります。つまり、 『ある動きをゆっくりためしてみて、快適感覚があるのかないのか、からだにききわける』のが動診なのです。
動診というのは、「快適感覚のききわけ」をするので、操者が指示する動きには目的があります。例えば左の手関節の外旋に
伴って全身形態が連動していきますが、初めての方や慣れない方ははっきり言ってなかなか動けません。
そこで、動きを知っている操者の介助や補助、言葉の誘導が必要なのです。


★いつも言っていますが『きもちよく動く』のは動診ではありません。『きもちよく動く』のは、操法に入ってからなのです★


(3)私は『きもちのよさがききわけられたら、教えて下さい』などと指導します。また、きもちよさがききわけられている時『はい、あります』と言ったりすると、きもちよさが消える場合もあるし、口をききたくない場合もあります。そういう時は『きもちよさがききわけらたら、左手でマルを作って教えて』というようにお願いすることもあります。


★ここで、きもちよさがききわけられたら、やっと操法にはいることができます。ききわけていないのに「きもちよく動いて、きもちよさを味わって」というのは動診と操法の区別がついていないのです。操体指導がどうも上手くいかない、という場合がありますが、この区別をしっかりつけていないことが大きな原因の一つでもあります。


★★★この区別がつかないとどうなるのでしょう。操体だけでは足りなくなるのです。


★さて、きもちよさがききわけられました。しかし、きもちよさにもピンからキリまであります。
私達はきもちよさ、というものをもう少し細かく分けてみました。
それは『そのきもちよさは、味わってみたい要求があるのか』『ないのか』ということです。
同じ「きもちよさ」でもきもちよさなら何でもいいわけではなく、からだが味わってみたいという要求を満たすような、質の高いきもちよさを選択していただくのです。


ここで大事なキーワードが『からだにききわけて』という言葉です。


『そのきもちよさ、味わってみたいという要求がありますか?からだにききわけて』と持ってくるのです。『からだにききわけて』、という大事なキーワードです。


★ここで『はい、あります』という確認ができました。あるいは、きもちいいけど味わってみたい程ではない場合もあります。そのような場合はやめていいのです。


はい、快適感覚、それも味わってみたいというからだの要求を満たす快適感覚です。


◎◎◎ここから、操法です◎◎◎


◆◇操法◆◇


(1)さて、からだはきもちよさをききわけました。そして、「このきもちよさ、味わってみたい!」と言っています。そうしたら、すでにきもちいい、ということを確認しているのですから


(2)「きもちよさに委ねて」「きもちよさを十分味わって」「一番きもちがいいようにからだのツクリを操って」というように、「きもちよさに委ねていいんだよ」と伝えます。これが「快適感覚を味わう」という『治療』なのです。
委ねていいので、どんな動きをとっても構いません。というか、本当に委ねていると、無意識の動きが起こったりします。無意識の動きというのは、通常想像できるような「運動的」な動きとはちょっと違います。
これも反応は人それぞれです。長い方は数十分も快適感覚を味わっています。


また、からだが要求している快適感覚なので、いくら味わっても大丈夫だし、飽きることはないのです。


◆◇脱力◆◇


(1)脱力の方法ですが、昔(第一分析)の時代は、呼気とともに瞬間急速脱力を指導していました。しかし快適感覚にゆだねた動診と操法の行程を踏んできもちよさを味わってからだと瞬間的には抜けません。
この場合も『からだが要求してくる脱力の仕方で結構です』というようにお願いすると、大抵はふわっと緩やかにそしてきもちよく、からだは脱力をつけてきます。呼吸を意識しすぎると、感覚のききわけの妨げになることがあるので、呼吸は自然呼吸でいいのです。


また、脱力すると「ぴょん」と戻る方がいらっしゃいますが、脱力したら脱力したままでいいのです。


★最高のきもちよさを味わっている時に、瞬間的に脱力させるのは、乱暴な感じです。うとうととたゆたっている時に、無理矢理起こされるような。


(2)瞬間急速脱力でもきもちよさがある場合があります。それは何かというと、筋肉を緊張させた後、一気に緩めると『脱力した後がきもちいい』のです。これもきもちよさのうちに入れてもいいかもしれませんが、これは本筋ではありません。世の中にはこれが操体のきもちよさだ、と言う方もおられますが、どちらかというと
操体ではなく『正体術』的な感じです。


しかし、ふわりときもちよく脱力した後には大抵脱力後の爽快感があります。筋緊張を「どすん」とほどいた後の脱力感とは少し違います。が、これもからだにききわけて、味わってみたい要求があれば『脱力後の爽快感も味わって』ということになります。


◆◇回数の確認◆◇


(1)「落ち着いたらもとに帰ってください」など、元のポジションに戻ります。そこで、回数の要求を確認します。簡単に言えば『今のきもちよさ、もう一度味わってみたいのかみたくないのかからだにききわけて、教えて下さい』ということです。ここでも「からだにききわけて」という言
葉が大切です。



何故かというと、人間「アタマ」で考えるからです。
例えば『この操法、もう一度やってみたいですか?』と、聞くとアタマで考えるので『回数を多くやった方が効果があるのでは』と
考えたりします。また、からだの要求感覚がなければ、対になった動きを比較して『右をやったから左もやらなきゃ』と思い、つまり
アタマで考え『左をやったから右をやったほうがいいんじゃないでしょうか』と考えることになります。


ここで『からだにききわけて』というキーワードを使うと、面白いことに『からだ』が反応します。
また、本当に快適感覚を味わった後は、考え込む時間もなく『あ、ありません、大丈夫です』という答えが返ってきたりするのです。



今日は動診と操法の区別ということを時系列に沿って書いてみました。動診、操法の違いを理解すれば、『きもちよさを探して動いて』という指導が適切ではないことが分かります。


主語は「からだ」なのです。ある動きをためしてみて、その動きにきもちよさがあるのか、ないのかからだにききわけるのは「からだ」なのです。


『きもちよさを探して動いて』という言葉でアクションを起こすのは『アタマで考えている私』なのです。


フォーラムでも何度かこの話をさせていただきましたが、何故『きもちよさを探して』という言い方がダメなのか分からない、という方に話を聞くと、やはり『アタマで考えている』ケースが多いように感じました。しかし、それはおそらく机上の理論ということで私の話を聞いて下さっているからであって、適切な介助補助、言葉の誘導があれば、『きもちよさを探して動く』のではなく『きもちのよさをききわける』ということは理解していただけると信じています。


実際、私のところに来ていただいて、『なるほど、分かりました』と殆どの方はこの大きな違いを理解して下さいます。


蛇足ではありますが、操体臨床が上手くいかない大きな理由は、今日お話した
■動診と操法の区別がついていない
■楽ときもちよさの区別がついていない
の2点です。これは全般的に「言葉の理解」と「言葉の誘導」にもつながってくるのですが、「きもちよさを探して」とか「どちらがきもちいいですか」という問いかけをしている操体指導者は、
余程の経験あるテクニシャンか、勉強不足のどちらかです。


最後は【断言】風になってしまいましたが、操体を勉強しておられる、あるいは勉強したいと思っている方々に、最初から道を踏み外して欲しくないのです。道を踏み外すと、元に戻るには大変な労力が入りますから。


操体を学んでいるちょっと先輩からのアドバイスからだと思って、素直に聞いていただければと思います。


フォーラムの席で上記二点に関してご質問があれば是非お寄せ下さい。懇親会の席だったらなおいいです(笑)



Hiromi Hatakeyama 畠山裕美



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