東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

パット

ゴルフ好きの方、すみません。パットと言ってもゴルフの話じゃありません。
パットというのは人の名前でして、パット・メセニーというギタリストのことです。10代の頃からの僕のアイドルです。
昔、東京でニセ学生をやっていた頃がありまして、そのパットがワールドツアーで東京にも来て5公演したのですが、ファンの僕は5日間とも観に行きました。そのうち1公演が三軒茶屋昭和女子大学人見記念講堂であったのですが、去年久しぶりに三軒茶屋に来た時にその事を思い出しまして、三浦寛先生・畠山裕美先生に初めてお会いする前に人見記念講堂の前でひとしきり懐かしがってからターミナルビルにお邪魔しました。操体とご縁をいただく前の僕にとって三軒茶屋といえばパットメセニーを思い出す街でもあったのです。
さてその5公演の間に中休みが1日ありまして、僕は彼のCDを買いに六本木WAVEに行きました。店で彼のCDを選んでいてふと眼を挙げると、目の前にパット・メセニーが立っていたんですね。どうもツアー中に各国のCDショップに行くのが趣味のようなんです。今思えば、その瞬間パッとCDを差し出してサインをもらえばよかったのですが、昔から咄嗟の時にうろたえる性格でして、「ア。」と言ったまま立ちすくんでしまいました。そんな僕を見て自分に気付かれていると気が付いた彼は身を翻して帰ってしまいました。あの時サインもらっとけばなぁ。今もそのCDを聴くとその時の事を思い出します。デビット・ボウイとの共作で「This is not America」と言う曲なんですが。

このパットの言葉で印象に残っているのがありまして「Jazzというものに変わらぬ伝統があるとすれば、それは絶えざる革新だ。」というのです。(正確じゃないと思いますが、ファンの方お許しください)パット・メセニーの音楽はJazzじゃないという人も大勢いらっしゃると思います。大きなCDショップだと「Fusion」の棚に並べてあったりします。僕はどこの棚にあってもかまわないのですが、とにかく発祥から、チャーリー・パーカーマイルス・デイヴィス、そして現代へと繋がるJazzの革新の歴史を彼も意識しているのだと思うのです。またJazzに限らずアーティストというのはこの「絶えざる革新」を生き続ける人じゃないでしょうか。
三浦寛先生にはよく「わかったと思うな、そう思ったらそこで終わりだ」と言われます。「掘り下げろ」「耕せ」と。先生も「絶えざる革新」の人なんですね。でも僕のようなオッチョコチョイはすぐわかったと思いたがります。ずっと何でも解決できる「答え」に辿り着きたいと思って生きてきました。きっと楽だと思うんです。楽をしたかったんですね(笑)。でも自分の体験から言えば実際のところ、楽をしようという生き方は苦しいです(笑)。まず辿り着こうとする道のりに何の意味も感じられない。結論が全てだと思ってるから過程を味わえないんですね。息を詰めて何にも眼を向けずに足早に一秒でも早くどこかに辿り着かなきゃいけないと思ってる。どこに向かえばいいかも分からないのに。そういう歩み方をしていると、どんなに豊かな森の中を歩いていても不毛な荒れ地を歩いているのと同じ事なんですね。何も学べないから歓びがない。歓びがないからますます急いで歩くようになる。悪循環ですね。

操体に出会えて、三浦寛先生に出会えて本当にありがたいなぁと思うのは、生きるということが生涯学び続ける事だということを師匠自ら身を以て示して頂いている事です。そういう背中を間近で見せて頂いて、「こうやって生きて行くんだな」と感じさせていただいています。まだヨチヨチどころか二本足で立つのがやっとというような自分ですが、今見せていただいている事の価値はヘッポコ頭よりからだが勝手に感じてくれていると思っています。僕が見る先生の姿は、パット風に言えば「操体というのは常に操体の枠を超え続ける事だ」といったところでしょうか。
呑気に人見記念講堂に寄り道なんかしてましたが、あの日ターミナルビルにお邪魔していなかったら自分がどうなっていたかと思うと、出会いのありがたさと巡り合わせの不思議を感じます。



さて今では三軒茶屋といえば操体、アイドルといえば三浦寛先生、の僕ですが、パットと違って三浦寛先生のサインは持っています。三浦寛先生の色紙は秋の東京操体フォーラムの名物でして、来て頂いた方には全員にプレゼントされるのです。誰にどの色紙が行くのかは決められていないのですが、不思議にその人に合う言葉が書いてあるそうです。僕も去年初めて参加した秋の東京操体フォーラムでいただきましたが、
「生命感覚としての快の本質はからだの無意識の内にある」
と書いてありました。今も大事に飾ってあります。
みなさんも是非秋の東京操体フォーラムに来て頂いてどんな言葉が自分のもとにやってくるのか、体験してみてください。
秋の東京操体フォーラムは11月22・23日に開催です。
今年は柳生心眼流竹翁舎主催の島津兼治先生、コンテンポラリーアーティストの田中稲翠先生をお迎えして、「SOTAI Moving Arts Festival 2009 〜全てに息づく操体の波動〜」と題してお送りします。
それではまた明日。