東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

動診と感覚

 感覚は呼吸だけでなく、動きにも深くつながっている。

 操体の動診において、ゆっくり動作を行うと、自分の動作の過程を意識的にはっきりイメージすることができる。このような動作は精神の集中度を高めるとともに、自律神経の調和を得て、身心の相関関係が密接となってくる。
 からだは全体で成り立っており、全体があってこそ部分も位置付けられている。それは健康を考えても同じこと。たとえば胃が悪いから胃だけを良くしようとするのではなく、ストレスを受けなくてもすむ心の強さや、肝臓や腎臓の強さも必要なのである。胃は、からだ全体の中の一部であるから、からだ全体のレベルが上がることで胃も強められていく。病気は健康になれば治るというが、いかにも的を得た表現である。
 からだの歪みを考えても必要なことは同じである。片方の肩甲骨が歪んでいるからと言って、その歪みだけを治そうとしてもそれは無駄な努力というもの。肩甲骨に問題が現れるのは、からだ全体の歪みの現れである。肩甲骨が歪むとすれば、腰も骨盤も、首にも問題があるに違いない。からだ全体の有機的な関連の上に、背骨や肩甲骨の働きはあるはずだから。
 それでは、からだ全体のレベルを上げるにはどうすればいいのか。その鍵は動診にある。動診ではからだの末端部から全身へ連動を促す。この連動が引き金となって、快感覚へとつながってゆく。そして、それがからだ全体のレベルを上げてゆくのである。からだ全体のレベルを上げること、全体のレベルが上がることで背骨や骨盤や肩甲骨などの弱さが欠点ではなくなっていくこと、そういう考え方が必要とされる。からだ全体のレベルが上がると、からだの素質は全体的に高められ、しかも固有のからだの感覚を通して、自己の意識が高められていくための大きな助けとなる。からだは人間である限り、人種の違いを超えた共通の基盤である。からだを動かす喜びが味わえるようなものが操体の動診から導き出されるとは思えないだろうか。