東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

臨床家による操体セミナー

先週のシルバーウィーク最終日・9月23日(水)に千葉行徳のゴールドジムで<臨床家による操体セミナー>が行われました。
東京操体フォーラム主催によるもので、臨床家である実行委員が、一般の人々を対象に開いたセミナーです。
そのセミナーの翌日、参加して戴いた鍼灸学校の女学生から、次のようなお言葉。

「佐伯さん、操体は奥が深くて一生かけて勉強するものだと思いました。だから、私はまず学校を卒業して、それからゆっくりと学びたいです」
また、
操体をされている方々の顔が、生き生きしていてホントに素晴らしい!」との声も。

ちょっと自画自賛ですが、よくもまあ、こんなに才能がある若手が集まってきたものだと、感心するほどのメンバー(私は、今年55才。残念ながら古手)です。

今後、このセミナーから発信する波動がさらなる若手発掘の
機会を増やしていくことは間違いありません。益々面白い展開になってゆく予感でワクワクしてしまいます!
と最後に言うべきことを思わず喋ってしまうほど充実したものでありました。

それでは、このセミナーの様子を9月23日(水)に戻って覗いてみましょう。
9/23
13:15
実況中継:「あっ、ムラサキ色をしたセーター姿の華奢な男性が、猛然と毛深い男性に突っかかっております。
華奢な男性の年齢は推定61才。
毛深い男性は、ガッチリした体型で<氷川きよしの歌が上手、特にズンドコ節>と顔に書いおります。

ぶっ飛んでおります、毛深い男性!また、飛ばされた!!
どうしたことか、毛深い男性、飛ばされるたびにニコニコ笑っております。
少し変な性格かもしれません。解説の平さん、今の技は・・・?」

平解説者:
「見事な一本背負いです。続いて小外刈り」

「またもや・・今度は毛深い男性、上に乗られているようですが・・・」
平解説員:
「あれを袈裟固めといいます」

「なるほど、あれが有名な袈裟固め・・・しかし、あまりにも一方的な展開に、観客の皆さんも唖然としておられますが・・・」
平解説員:
「・・・・・・」

「あっ、試合が終わったようです。ムラサキ色の推定61才の男性にお話を伺ってみましょう!お強いですね〜」

ムラサキ色の男性:
「武道は、年を取るほど上手くなるものだ。
それと、若い頃オレは先鋒でよ、負けると下の毛剃られたもんだ。だから強くなったんだ!!」

「なるほど、強さの秘密がやっと分かりました。どうもありがとうございました」

13:30
ムラサキ色のセーターが素敵な三浦先生が中央。実行委員10名が、先生を三角形の頂点とするように囲み、般若身経(身体運動の法則)のビデオ撮り。
会場のゴールドジムは、つるつるした黄色のマットが敷き詰められ、歩くと気持ちがよく、思わず柔道をしたくなるような環境です。
広さは150畳位あるでしょうか?壁の一面は鏡張りになでっており、自分自身の姿を見ることが出来ます。
まるで、コーラスラインの役者になった感覚。
三浦先生のかけ声の下、ゆっくりと調和のとれた般若身経が出来上がりました。この映像をYouTubeでご覧になれます。


http://www.youtube.com/watch?v=UA0QASrTQvU

14:00
畠山裕美常任理事による、操体解説。
畠山理事は、三浦先生が、女性日本一の操体プラクティショナー操体法操師)と認める実力の持ち主。
まずは、からだの硬い男性に2人モデルになって戴き、両足を揃え膝伸ばしの状態で前屈。
なるほど、床に手をつけることができません。20センチ位は離れています。それを、身体運動の法則に従った前屈を2回するだけで、10センチ程前屈が深くできるようになりました。

「だから、無理矢理に柔軟体操する必要はありません。身体運動の法則に従った動きをすれば、からだの柔軟性を獲得できます」と説得力のある解説。

そして、自力自療の説明。
操体で言う自力自療とは「本人」にしかわからない感覚をききわけ(自力で診断・分析)、味わう(自力で治療)ということであり、感覚のききわけを行うのは「本人」。
そのため基本的には一人でやろうが介助者あるいは操者がいて、二人でやろうが、今回のようにセミナーに於いて数十名でやろうが、自力自療。

続いて、平直行相談役から感覚に関する独特の話。
平相談役は、総合格闘技の寵児として活躍され、様々な分野に影響を与え続けておられます。

超人気漫画「グラップラー刃牙」のモデルとしても有名。著書には、「平直行の格闘技のおもちゃ箱」(福昌堂)があり、年内にBABジャパンという出版社から、「格闘技から武術への気付き」というタイトルの本が出版されます。これは、操体をはじめとする様々な日本文化の底流にあるものを平相談役の豊かな感性で書き上げ、それと武術との関係を想像力豊かに描いた異色の本です。
この本のイラストを平相談役のご厚意により、私が担当。
楽しい絵を10枚程描きました。平相談役の鋭く優しい感覚の文体にマッチしたものになっているはずです。

格闘家として、ご自身のからだと向き合い感覚を高めておられた平相談役。自然の法則に従う操体に出会うことで、益々感性を磨くことに。
そこには、平相談役独自のからだ管理法が存在しているように思えました。

前日行ったご自身の操法を、岡村理事に介助してもらい再現。
すると、平相談役のからだに、いきなり快適感覚のスイッチがオン。気持ち良さに委ねた無意識の動きが始まりました。

私も、自身の皮膚に触れ無意識の動きを導き出すことは、ある程度できます。しかし、平相談役のようにスイッチは早くありません。

生死を賭けて瞬時に状況を感じ取る訓練をしていると、常人では出来ない切り替えスイッチがあるはずです。
平相談役にはそれがあります。そのため、前日に行った操法の感覚に瞬時にトリップし、操法に入れるのです。

参加者の方々は、一体何が起こっているのだろう?と興味津々・・・この操法が、最後に三浦先生指導で、岡村理事介助の操法への伏線となっていったように思います。

         

        ー平相談役岡村理事


15:00
さて続いて、若手男前集団の般若身経の時間!

辻知喜実行委員が進行役で、般若身経の解説をして行き、西田尚史実行委員、中谷之美実行委員がモデル。秋穂一雄理事が総監督といった役割分担で、立位における前屈、後屈、左右側屈、捻転をモデル二人にしてもらい、そのあと参加者全員で行いました。

参加者は60名程。残りの実行委員と三浦理事長が個々に指導するという操体初体験の方々にはとても入りやすいプログラム。


指導しながら感じたことは、畠山理事が指摘していましたが、恥骨が後ろにいき(操体では後弯曲といいます)胸が張り出す傾向が、格闘技をしている男性に多く見られたことです。
この状態だと、重心が拇趾球にいかず、踵に近づきます。また意識も臍下丹田には行かず、胸郭辺りにいってしまします。

恥骨を若干前に出すと、骨盤が前弯曲し、力みのない安定した立位になりスムーズな重心移動ができます。このことをもう少ししっかりと指摘すべきだったと反省しています。

まあ〜それはさておき、参加者が熱心で、三浦理事長の大きな声がこだまする会場の雰囲気。それはそれは、心地のよいものでした。皆様どうもありがとうございました!
16:00
さて最後の1時間は三浦理事長
まず岡村理事秋穂理事と、一般参加の男性3人(全員右利き)にヤンキー座りになってもらい、左足に重心を置いて起き上がる場合と、右足に重心を置いた場合の違いをききわけてもらいました。
すると、一般参加の男性だけが、右足の方が楽と言い張ります。
う〜ん、シナリオ通りにいきません。本来なら、右利きの人は左に重心軸がずれているため、左足に重心を置いた方が楽に立ち上がれるはずなのに・・・・

そこで、三浦理事長は、
「全体重を左足にかけて起き上がって見て下さい」と極端な指摘。
それで比較した結果は・・・・左足!
私の勝手な憶測では、この男性は大柄で太ももが大きかったため、ヤンキー座りで右足に重心を置いたつもりが、苦しい姿勢のため、起き上がる時、重心が左に移動したのではないかと睨んでいます。

この「右利きの人は左重心」に関して「重心軸を正中線に矯正できないものか?」「左右使える人で重心軸がぶれていない人はいるのか?」など、明快な質問があり、

三浦理事長は、「あえて重心軸を矯正する必要はなく、感覚をききわけることで調和すればよい。また、本来右利きの人が、左手を使っても重心軸のぶれはある」と返答されました。

今回、参加者の多くは操体初心者であるにも拘わらず、いきなり、「芸術だと思って、臨床をしている。そして、治すことに関与することなどは、下の下である」、こんな話が飛び出しても、違和感なく進行していったことに三浦理事長の凄みと誠実さを感じました。

また、実行委員も教わっていない最新の呼吸法を、初心者がほとんどのセミナーでオープンにお教えする姿に参った!!であります。
その呼吸法とは・・・・誠に残念ですが、まだお教えするわけにはいきません(もう少し時間をいただきます)。セミナーに参加された方は、ホントにラッキー!

ただこの呼吸法で般若身経を行った充実感、安定感は最高でした。これからしばらくは、この秘法で般若身経に臨みます。

終了間際に、三浦理事長の指示により、ジムのメンバーらしき男性を患者とする臨床(膝の左右傾倒、膝の伸展、肩甲骨の押し込み)を行ないました。

岡村理事が臨床の介助。患者の左膝窩、右肩甲骨にあった圧痛硬結が操法後どちらも解消。
3時間のセミナーを締めくくるにふさわしい10分間。
かたずを飲んで見入っている参加者の表情が印象的でした。

セミナー無事終了後は、韓国料理屋で打ち上げ!
操体の未来を熱く語り、それはそれは、美味しい料理とお酒でした。めでたし、めでたし!


佐伯惟弘