東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

原初からの解放(三日目)

前日のつづき
リバーシングという呼吸法は、エナジーとは何かを知るのに一番てっとり早い方法である。リバーシングにより身体が浄化されるので、多くの病気の治癒がなされるのも事実である。また、バース・トラウマにより形づくられた、自分の生活のパターンを認識するのに役立つ。胎児は母親の子宮の内ではとても幸せに過ごしていた。我々はその子宮の中にいた記憶をそのまま持続している。記憶というのは脳の内だけではなく、身体のすべての細胞、すべての線維組織の内に存在する。その記憶は身体のすみずみに浸透している。子宮の内での10か月は、はてしない歓び、くつろぎ、まかせきった状態だった。容易に忘れることなどできるものではない。
バース・トラウマによって意識の表面から断絶させられたとしても、無意識は依然としてそのことに憧れ続けている。その結果、科学は子宮を外側に創る努力をするようになった。エアーコンディショナー、新幹線、ジェット旅客機、快適な衣服とかは科学技術によって子宮を外側に創ったものに他ならない。子宮内で味わった「完全」への欲求のために、その努力全体が子宮と同じものを創ることに向けられている。しかし、科学技術がどれだけ発展しても、決して満足するまでに至らない。完全な状態には決してならない。そこには依然としてギャップがあり続ける。完全への欲求とともに生きることなどできるものではない。これが神経症の一つの原因をつくることになった。
これにはバース・トラウマをもう一度経験することが役に立つ。バース・トラウマを意識的に通過することができたなら、そのときには誕生全体の意味が変わる。意識的に自分の無意識の内に入って、完全への欲求が湧きあがってくるところまで入り込んでいく。まずは子ども時代へ入っていき、家庭や学校そして社会での教育や条件付けされてきた幾層にも重なった倫理や道徳の皮をはがしていかなければならない。そして最後にバース・トラウマにたどりつく、自分の生まれたその日に・・・・・・。
バース・トラウマを再び経験すること、それがリバーシングという呼吸法のすべてである。バース・トラウマをもう一度経験することによって一体、何が起こるのか? 全体の景色が変わってしまう。それを意識的に経験することができたなら、そして子宮から出てきたばかりの赤ん坊に後戻りができるとしたら、それは大変な苦痛と苦悩を通り抜けることになる。生まれた時と同じ痛みで苦しむ。呼吸は乱れて激しくなり、呼吸困難を感じ、それどころか呼吸はまったく止まってしまうかも知れない。身体は麻痺し、死につつあると感じるかもしれない。なぜなら、それは子宮から出てきたときに感じたことだった。とても狭くて、暗いトンネルの中を通過しているような息苦しさを感じる。そして大きな恐怖が湧きあがってくる。
それゆえに誰か助けてくれる人が、介助、指南してくれる人が必要になる。誰か、護ってくれる人が必要だ。誰か力づけてくれる人が必要となる。「怖がらなくてもいい。心配しなくてもいい。それから逃げないで入っていきなさい、大丈夫だ」と言ってくれる人が・・・・・・。
明日につづく