東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

生命エネルギーと感覚

今回は「瞑想」において切り離すことができない、クンダリニーとチャクラについての真相に迫ってみたい。日本でも幾度かのヨーガブームにのってクンダリニーやチャクラという言葉を耳にしたことがあると思う。それゆえに誤解されていることが少なくなく、その誤解を理解へつなげてみようと試みるものである。一週間、お付き合いいただきたい。
クンダリニーやチャクラに関する経典によると、ハタ・ヨーガにはチャクラ(輪)と霊的資質の開発との関係について独自の理論があり、チャクラとは超心理学に属する生命エネルギーの中枢であるとしている。それには、チャクラは人体の中に七か所あって一連の体系をなしている。それは単なる生理的な肉体組織ではなく、エーテル体、あるいは幽体というからだの組織であり、肉眼では確認することはできない。しかし、熟達したヨーギはチャクラの存在をはっきりと実感することができるというのである。また、そのチャクラがクンダリニーという宇宙エネルギーの働きで活性化されると、肉体と精神の両面に色々と超能力が具現してくるのだと経典では記されている。
超心理学的に言うと、人体の中には生命エネルギーであるプラーナ(生命素といわれる気)が流れるナーディ(管、経脈)が7万2千本ある。古代アトランティス文明を受け継いだアーリア民族が、5000年も昔にヒマラヤの奥地に住みついてあみだしていった英知であるとされている。このナーディーという経脈に関して、プラクティー・ヨーガでは中国医学で行う鍼灸療法の経穴・経絡の原点となったものや、ヴィアヤーマ・ヨーガはナーディース治療法(幽点刺激法)というものがあり、人体の急所的部位を探求し集大成したもので指圧の原点となったものがある。これらのナーディーの内、最も重要なものが背骨の中央を流れるスシュムナーという中央の気道、左側を流れるイダーという月の気道、右側を流れるピンガラという太陽の気道の三本の管(経脈)である。
中央の気道であるスシュムナーは背骨の下底に始まって頭上に達しており、その周りをイダーとピンガラが交互にとぐろを巻いて上がり、それぞれ左と右の鼻孔に通じている。この三つの管が背骨の最下底のところで合流している場所に「三回転半とぐろを巻いて眠っているヘビ」として象徴されるクンダリニーという潜在的な宇宙エネルギーが未活性の状態で存在している。
このクンダリニーがヨーガの行法によって活性化すると、その潜在的なエネルギーが、あたかもヘビが目覚めて立ち上がるように、スシュムナーの気道を上昇し、六か所のチャクラを次々と打ちつらぬいて、最後に男神シヴァが鎮座している頭頂のサハスラーラチャクラに到達するのである。このようにチャクラが最下底から上に向かって打ち破られていくにつれて、次第に霊的、精神的物質が発現し、サハスラーラチャクラに至った時、究極的な「解脱」であるエンライトメント(光明)を得るといわれている。
クンダリニーはもともと、女身シャクティの分身であって、それが男性神であるシヴァ神とサハスラーラチャクラで合一するときに初めて人間存在の完成が実現する。つまり、人間に内在する地の霊である陰の原理と、天の霊である陽の原理との結合を将来するのがチャクラ理論のねらいであると、経典は綴っている。
しかし、このような理論的な知識が役に立ったということは未だかってあったためしがない。クンダリニーをどんなに解剖学的に視覚化してみたところで、実際のところ瞑想にとってはどんな意味ももっていない。何もクンダリニーやチャクラの存在を否定しているのではない。クンダリニーもチャクラも確かにあるだろう。ただし知識としての理解は微塵も役に立ちはしない。むしろ知識は邪魔にさえなる。それは多くの理由から障害物にならざるを得ないのである。
こんな理論的知識を追い求める傾向は操体を学ぶ我々にも同じように言えることである。知識なら書籍やビデオからでも得られるが、「百聞は一見にしかず」である。実際に「見て感じる」という心構えが求められている。この「見て感じる」というのは、本当の意味において、その時、その場にいなければならないということを理解する必要がある。
明日につづく

日下和夫

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