東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

イスラエリー アラン

ネパールに着いて4日目の朝、グリーンラインというツーリストバスでカトマンドゥを7時に出発してポカラに向かった。
妻は旅の疲れでぐったりとしていて、ポカラまでの道中殆ど寝て過ごしていたが、私はというと遠足気分で近くに座っているツーリストとお喋りで盛り上がっていた。

前半、その様子はちょっとした国際サミットみたいで、メンツはインド人のご夫婦、オーストラリア人の男性、イスラエル人の男性、ネパール人の男性でお互いの国の文化について話たり、とりとめのない話をあーでもないこーでもないと話していた。

しかし8時間に及ぶ長距離バスの旅。次第に会話はぽつぽつと減り、眠りについたり、車窓から見える景色を眺めたりと各々が自分の時間を過ごすようになってきた。
私も車窓を流れる段々畑の景色や、農村の集落の景色にどこか懐かしさを感じながら味わっていた。



(ネパールの山村)
そんな時間をしばらく過ごした後、隣に座っているイスラエルでケータリング業を営んでいるイスラエル人男性「アラン」と会話が弾み、色々と話をした。

「ヒロ(私の事です。)、僕はブディストでね、主な仏跡はほとんど行ったよ。僕はああいった東洋の哲学が好きでね。座禅も毎日しているんだ。」

「いいね、僕は2年前インドに行った時にブッダガヤとサールナートに行ったな〜。面白かったよ。僕が住んでいる 京都っていう所にもいっぱいお寺があるんだよ。」

「そうかい。今回の旅でルンビニには行くのかい?」

「いや、行きたいのだけど、時間がなくて行けそうもないね。」

「そっかー、そういえば僕は日本に少し住んでいた事があるんだ。会津若松ってしっているかい?」

「ああ、行った事はないけど知っているよ。」

「僕は昔そこに少し住んでいた事があってね、自作のアクセサリー等を売ってヒッピーみたいな暮らしを当時していたんだ。英語が話せる人が少なくて大変だったけれど、愉しかったなぁ〜。日本では東京とか大阪といった都市よりも地方の方が僕は好きだったよ。」

「なかなか渋い趣味だね。」

「そうかい、日本は物価が高いけれども文化が豊かでいいね。僕は銭湯が好きでよく通ったものだよ。ヒロにとって、日本の文化って何だい?」

「う〜ん、そうだなぁ、すぐ思いつくものは寿司、天ぷら、歌舞伎、忍者、相撲、着物とかかなぁ〜。ところで、イスラエルの文化はどういうものがあるの?」

「・・・・・・。」

アランは少し言葉に詰まり、
「そんなものはないさ・・・。僕の母親、お婆ちゃんもそうだけど、みんな違う国で生まれて育っているんだ。だからイスラエルに文化はないよ。」と語り、口をつぐんだ。

そこで私は、
「そうかぁ〜、だけどさーアラン、イスラエルの文化はこれから君たちが作っていけばいいんじゃないの?
 そういう作業ってすごくおもしろいと思うなぁ〜。俺、イスラエルのロックミュージック好きだぜ。」

アランの口元が緩み
「ハハハ、そうだよな!!」と笑みを浮かべた。

流浪の民イスラエル人。
男子3年、女子2年の兵役義務のある彼等は、兵役を終えた途端、アジアを中心とした旅に出るものが多いと聞く。
まるで自分のアイデンティティを探し求めるかのように。

イスラエルは1948年にイスラエル国を建国してから現在で62年目になる。
色々と直面している問題はあるだろうけど、良い文化を築いていってほしいと願っている。

アランよ、いつか君たちが築きあげた文化の中で操体の臨床ができる日を僕は心待ちにしている。
それではその時まで、Good luck!!


(ヒマラヤ 実物は圧倒的に美しい)

小松 広明

8月28、29日は大徳寺玉林院にて「東京操体フォーラムin 京都」開催
9月18、19日スペイン、マドリードにて「操体セミナーin スペイン」開催