東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ナザール・ボンジュウ

一昨年はトロールビーズに凝っていた。「トロール」というのは北欧の言葉で「妖精」という意味である。トーベ・ヤンソンムーミンシリーズは日本でも人気があるが、もともとムーミンは「ムーミントロール」なのである。北欧の妖精のビーズ、というのがコンセプトらしい。

たのしいムーミン一家 (講談社文庫)

たのしいムーミン一家 (講談社文庫)

余りに凝ったので最近は熱がおさまったが、デパート(東京なら銀座松屋の1階)の売り場や、たまに出店する期間限定店舗などに行くと「うずうず」するのである。トロールビーズは基本的にチェーンと好みのロック、それに好みのビーズ(ガラス、天然石、シルバー、ゴールドなど)を通し、ビーズがすべらないようにビーズの両側をストッパーで押さえるスタイルである。この他にも皮のひもで出来たブレスレットもある。ビーズには一つ一つ名前がついていて、それぞれに意味がある。春と秋には毎年新作コレクションが出るし、一昨年はトロールビーズの神様からのご褒美(?)か、デンマーク大使館で行われた、トロールビーズジャパンのプレス発表会にも何故か招待され、割引料金で新作のトロールビーズを買い、更には開催側の不手際ということで、お詫びのお土産にビーズをいただいたりした。

トロールビーズジャパン

それはさておき、昨年マドリッドの帰り、イスタンブールに滞在した時のことだ。今日の夕方日本に帰るという日で、ホテル近辺で参加メンバーがそれぞれ買い物に興じていた時である。私は何だかあまり物欲が湧かず、空港で何か買おうと思っていたので、ホテルのテラスカフェでワインを飲みながら誰かと雑談していた。すると誰かが「三浦先生が呼んでます」と呼びに来た。何だろうと思って行くと、ホテルの近くのアクセサリーショップの前で三浦先生が待っていた。師匠はブレスレットとか貴石とかシルバーなどが好きなので、ちょっと店を覗いてみたらしい。
そのお店に入って師匠が歩いて行った先には、シルバーやガラスの小さいビーズが通されたディスプレイスタンドがあった。要は、細い棒にビーズが焼き鳥のごとく通されており、それが飾られているのである。師匠はそのスタンドを見ながら「これはオマエが好きなビーズじゃないか」と言った。

「いえ違います」私は即答した。確かにビーズはビーズだが、これはトロールビーズではない。このビーズには、ホール(穴)にシルバーの金具がついており、そこには"PANDORA"の刻印がされていた。
「これはパンドラですね」
トロールビーズは1976年にデンマークで創業されたが、パンドラは1999年に、トロールビーズに影響されて作られたものだ。アメリカでは2002年辺りに、パンドラビーズが流行ったそうで、アメリカとかではパンドラのほうが本物だと思っている人も多いらしい。
トルコ人のジュエラーは、私のほうに寄ってきて、「ビーズは好きですか?」と聞いてきた。私は勿論、と答えた。「これはPandoraですよね?」と聞くと、「そうだ」と答えが返ってきた。「私はトロールビーズをコレクションしているんだけど」というと、トルコ人ジュエラーは「パンドラのほうが本物で、トロールビーズはニセモノだ」と言う。師匠と私は店のテーブルに座って、ビーズを見ることにした。
「招き猫のビーズもあるよ」「これはトルコの目玉のお守り(ナザール・ボンジュウ)」など色々見せてくれる。確かにトロールビーズに形が似ているが、ちょっと雰囲気が違う。トロールビーズにも何名かのデザイナーがいるが、デザイナーによってちょっとづつ違うのだが、明らかに違う。特にシルバービーズのモチーフが微妙に違う。その辺りは非常に興味深い。

しかし何故、Pandoraがホンモノでトロールビーズがニセモノだという話になっているのだろう。何だかこういうことが起きてしまうのである。その後、渡欧経験者数名に聞いたところ、ヨーロッパの空港などでお土産にトロールビーズとパンドラビーズが売られているそうで、パンドラビーズを売っている人は「トロールビーズはニセモノだ。パンドラのほうがホンモノだ」と言うらしい。

正統派?トロールビーズ愛好家である私は、長袖をめくり上げて左の手首を出した。トロールビーズのプレスレットである。好きな紫系とブルー系でまとめて、シルバービーズを阿いくつか繋げてある(「温故知新」という意味を持つのと、「太極」のシルバービーズ)。


手前がパンドラの「目玉」

トルコ人ジュエラーは「ちょっと見てもいい?」というので、私はブレスレットを外して彼に渡した。彼は暫く眺めてから、"Amazing!"と呟き、「これ、いくらだった?」と聞いてきた。私はブレスの中でも一番高い石(ガラスではなく、天然石のアメジスト)をまず指さして値段をささやいた。それからロックとシルバーチェーンと、その他のビーズの値段をささやくと、ジュエラーは"Oh!"と驚いた。別に値段自慢をするつもりはなかったのだが、もしかしたら、トルコ人ジュエラーはトロールビーズを見たことがなく、パンドラビーズがホンモノだと思っていたのかもしれない。まあ、パンドラがニセモノでトロールビーズがホンモノという決めつけもヘンなのだが、いずれにせよ、トロールビーズが先に世に出て、パンドラビーズはホールの金具をシルバーにして、ロゴを入れるという工夫をしたのである。それがアメリカをはじめ、オーストラリアなどでも流行したという次第だ。パンドラは中国製ということも明らかにしている。逆にトロールビーズは逆に希少性(職人がビーズを手作り)のイメージがある。多分シルバーのチェーンやストッパーなどは海外生産なのではないかと思うが、「デンマーク製♪」という夢はある。
売り方の違いもあるのだろうが、パンドラビーズの販売員は「トロールビーズはニセモノだ。パンドラがホンモノだ」とかなりの確率で言うらしい。これはちょっといただけないような気もする。

まあ、いずれにせよ、私はトロールビーズのほうが好きだ。

といいつつも、その店ではナザール・ボンジュウをイメージした、トルコらしいビーズを一つ買った。
ナザール・ボンジュウというのは、目の形をしたトルコのお守りで、嫉妬や妬みから守ってくれるらしい。
嫉妬や妬みから守る、という効能がなんとも異国的である。

ナザール・ボンジュウはイスタンブールの空港でお土産にたくさん買った。実行委員へのお土産である。私は自分と自分の母用に二個買ったが、好評で一個も自分の手元には残っていない。パンドラの「目玉」だけが残っている。


畠山裕美


2011年東京操体フォーラム分科会は4月29日に千駄ヶ谷津田ホールにて開催いたします。http://www.tokyo-sotai.com/

2011年2月から足趾の操法集中講座を開始します。


Facebook東京操体フォーラムのファンページをつくりました。

東京操体フォーラム Tokyo Sotai Forum

ファンページも宣伝する