東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

性論〜その5〜

ある先生に紹介して頂いた本が手元にあります。
「乗り移り人生相談〜島地勝彦著、講談社〜」
この著書の面白いのは、しばしば文章に故柴田錬三郎氏、故今東光氏、故開高健氏の魂が移っていること。
つまり島地氏の受け答えには、三人の師匠・先輩が今も生き続けていることなのです。
経験豊かで含蓄のある「性」に関しては、間違いなく高級な品揃えです(笑)
誰かに相談しにくいケースがあれば、ブランデー片手に御一読をお奨めします。

ンッ・・・アイヤ〜、ふと考えれば、この人生においてワタシは操体を知ってしまったんですネ。
知ってしまったと言うことは、操体を受けていく責任でもあり、操体を引きとる責任でもあり、
操体を継承していく意味を、自身で学んでいく事に繋がっていくはずなのです。
それは、責任を受け継ぐ意志でもあり、受け継いだゆえの喜び。
島地氏のような含蓄ある言葉、センスあるユーモアも生まれ、更に育まれていることからも理解できます。


さてここからは、昨日に引き続き「骨盤から考える自由とは?」をテーマにお送りいたします。
注:十八歳未満の方、及びお堅い方(局所部位除き)、自称ウブな方々は十分に気をつけてください。

(性生活と日常への繋がり)
例えば、男女のセックス時に、女性の膣口の位置を称して、
“下つき”と“上つき”という言葉で表現することがあります。
この所以とは、正常位でのセックスの際、男性と女性の骨盤の位置関係からしても
お互いに“後湾曲”では適合しにくい=しっくりできないことにあります。
古来、“後湾曲”の女性側の骨盤を前湾曲させるべく、臀部の下に枕を敷きながらやや前湾曲気味に取らせていると、
結合具合が次第に良くなってくる。とありますが、これはまた後湾曲が過度である場合(骨盤を含む)治療にもなっていたようです。

いかがでしょうか?これはまさに日本の伝統的骨盤救済処置です(私が考えた訳ないッス)。
経験が産んだ素晴らしき知恵でありますし、即効性のある処置法とも言えるのです。
日本人の性生活とは、古来より布団中心であり、そこにベッドのような段差はありません。
だからこそ正常位が基本たりえるのではないでしょうか。
更に言うならば、日本式の便器は普通、しゃがんで小用をたすことも同様です。
このしゃがんだ際に、骨盤が前湾曲しておらず後湾曲のままであれば、
狙いは定まりにくく便器のあたりに粗相してしまう可能性が高くなるのですから。

余談になりますが、日本の住まい様式も変化し、
食習慣も欧米化しておりまして、便器までもが洋式になってしまうことで、
最近の子供には日本式の便器では用を足せない、苦手な子供が増えたそうです。

西洋化、核家族化が産みだした現象の一つに、「子供の自由」を認めることがあります。
テーブルに椅子で食事をさせ、好きなお菓子を食べさせ、個室を与え、
幼いうちからベッドに一人で寝かせておけば、西洋的嗜好は強くなるでしょう。

古来日本の伝統として大切にされていた躾、文化とは連綿と繋がっている先祖からの智慧。
このような素晴らしい文化を放棄してしまうことは、
様々な日本の伝統的な生活様式を抹消していくことなのです。
このことに懸念するのは、私だけでは無いはず。
なぜ、日本人として生かされているのか、意識して生きてみることも必要となり、
そもそも、西洋は東洋に混じりこそ発展し、東洋が西洋に混じる土壌では無いからです。

ですから、本来は自由を知り自由であることを尊び、
それを慈しむ文化と土壌を大切にしていた先人達の智慧、日本人としての文化としての意義、

その神髄とも言える、橋本敬三先生の説く「骨盤の前湾曲=前傾・後傾ではない」を、
理解しながら、日々の臨床における応用貢献を、そして、
私たちの文化遺産と共に成立させる意義に賛同して頂きたい・・・それを願うのです。

(*注:「前湾曲」を知りたかったら、4月29日の東京操体フォーラム分科会へ!)
                                        岡村郁生