東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

道三と性の指南書『黄素妙論(こうそみょうろん)』

ようやく最終日となって参りました。さすがに一週間、色事についてつらつらと考えていますと、家内曰く、悶々とか、ムラムラとかしないのか?と質問を受けつつも、何の反応も示さない我が金時様に悲しくもあり、涙をこらえつつ最終日、突っ走りたいと思います・・・
昨日同様、日本医学中興の祖『曲直瀬道三(まなせどうさん)』について書きたいと思います。
この道三が説く医療の根本衣食住の何事も、ほどほどを心掛けた生活をと、言っています、む!っと思った方は操体マニアですねぇ・・橋本敬三先生が仰っていた60点の法則とよく似ていますねぇ、間に合ってればいいんだよぉ。

そして、今日の本題である健康長命のためのもう一つの重要な要素として、道三は『正しい男女の交合法』を説いているのです。
その、戦国のHow to SEX!マニュアル本とでも言うべき名著が『黄素妙論(こうそみょうろん)』です。
我が国にはこのような、SEXのHow toを説いた『房中術書(ぼうちゅうじゅつしょ)』『医心方(いしんほう)』「房内篇」(正しくは『医心方』巻二十八・房内)が知られています。
但し、この『医心方』は朝廷に献上された秘本であり、いくら道三が著名と言えども、たやすく閲覧や筆写は難しかったのではと思われます。
では道三の書いた『黄素妙論』のベースになった原本は、何であったかと言えば、その後の専門家達の研究により、中国の『素女妙論(そじょみょうろん)』ではないかとのことです。この中国の明代に出版された本が日本に伝わり、道三によって更なるエッセンスを加えたのが『黄素妙論』ではと言われています。

ではこの『黄素妙論』を道三は誰のために書いたのかと言えば、以前のブログにも書いたのですが、私が個人的に好きな戦国武将松永久秀です。
この松永久秀という武将は数多い戦国武将の中でも特に“エグイ”武将です。
出自はハッキリせず、山城(京都近辺)とも播磨(兵庫近辺)の人とも言われています。もっとも下克上を体現した人物とも言われ、有名な話として、天下人信長が家康を招いた際に、久秀を紹介したエピソードが残っています。
『この老人は全く油断ができない。彼の三悪事は天下に名を轟かせた。一つ目は主君三好氏への暗殺と謀略。二つ目は将軍(義輝)暗殺。三つ目は東大寺大仏の焼討である。常人では一つとして成せないことを三つも成した男よ。』と言って家康に紹介したそうです。
戦場においても松永の兵は、信長などは固く禁じていた“略奪や強姦”を公然と行っていたので、他国に恐れられ、松永の兵が来ると言うだけで女子供が恐れたと言います。
又、その一方で、茶の湯にも通じる風流人の一面もあり、天下の名器『九十九茄子(つくもなす)』『平蜘蛛茶釜(ひらぐものちゃがま)』など多数を所有し茶人としても位置付けは高かったようです。
結局、最後は信長を裏切り、ドサクサの中で謀反を起こしたのですが、部下の裏切りを決して許さないことで知られる信長が、名器『平蜘蛛茶釜』を差し出す事を条件に許すと言ったのですが、何を思ったか久秀は『平蜘蛛茶釜』に火薬を詰め込んで、これ又、日本の公式記録上初と言われている、爆死をしてしまうのです。
まぁ、何とも豪快と言いますか、親父だったら嫌ですが、他人だったら気が合いそうな気がします・・・
このままだと、松永話で終わりそうなので、ボチボチ『黄素妙論』に戻します。

この『黄素妙論』“素女(そじょ)”と言われる“房中術”に通じた仙女と中国伝説上の皇帝黄帝との会話から出来ており、黄帝の質問に対して素女が答えていくという問答形式になっています。
内容は多岐にわたっており、いたすのに対して、忌避日や忌避場所、相手の状況などかなり細かく設定されており、全部は書けませんので、その一部を紹介したいと思います。きっと目から鱗です・・・

(原文):読みやすく若干変えてます
夫(それ)女人の淫念(いんねん)いたらざる間は男子しゐてまじはるべからず、女人に淫欲の情念のいたるしるし五つあり。

  1. 男女ひそかに対面し物語などするに、俄に女のおもて赤くなるは心中に淫事の念をきざすしるし也、其時男子の玉茎(たまぐき)を女人の玉門(ぎょくもん)にあてがふべし
  2. 女人、はなをすすらば、欲念肺の臓にうごくと知るべし、即ち玉茎を少し入れるべし
  3. 女人目をふさぎ、口をあき、舌をさまし、いきつかひあらく成は、淫情脾の臓にいたるとしるべし、其時ゆるゆると玉茎を出入すべし、あまりにふかく入べからず
  4. 女の玉門の中、あたたかにうるほひ、ゆたかにして津液外にながれは腎気のいたると心得て、玉門の口へ玉茎をぬき出し、左右をよこにつくべし
  5. 女の足にて男の腰をはさみ、女の手にて男の背をいだきしめ、口をすはんことをもとめば肝の臓の気いたると心得て玉茎をふかく玉門の奥さしつめて、しづかに左右につくべし。

(訳)
正しい男女交合において、女人が交わりたいという欲望がおきていないうちは、男子は決して交接の行為に及んではなりません。女人に情欲がおきると、交合を求めるきざしがあらわれます。それは次の五つの反応で分かります。

  1. 男女が向かい合って親しく語らい、秘め事の話などをしていると、急に女の顔が赤らんでくることがあります。これは、女の心の中に交接の欲望が起きた印と言えます。この時男子は玉茎を女人の玉門にあてがうのがよいでしょう
  2. 女人が鼻をすすったならば、欲情が肺臓を動かしていると知ることが出来ます。この時男子は玉茎を玉門に少し入れるのが良いでしょう。
  3. 女人が目を閉じ、口を開けて、舌を出し、息づかいが荒くなった時は、欲情が脾の臓にまで達したと知ることが出来ます。この時男子は玉茎をゆっくり玉門に出し入れすると良いでしょう。余り深くまで入れてはなりません。
  4. 女人の玉門の中が暖かくなって潤い、愛液が溢れるほどに流れ出て来る時は、欲情が身体の奥の腎気にまで達したと判断出来ますので、男子は玉茎を抜いて玉門の入り口の左右を横に突くようにするのが良いでしょう。
  5. 女人が絶頂に達し、感極まってくると、足で男の腰を挟み、両手で男の背中を抱き締めて、唇を合わせて口を吸ってきます。これは欲情が肝臓の気まで達した証拠です。この時、男子は玉茎をはじめて深く玉門の奥に差し入れ、そのまま静かに左右に突くようにすると良いでしょう。

(補足)これはそのまま『陰陽五行説を基盤にした世界を表しています。一から五までの『心・肺・脾・腎・肝』は五行の『火・金・土・水・木』がそれぞれ配当されます。因みに男子の『玉茎』陰茎、女人の『玉門』を表しています。

どーでしょぉー、傍若無人の松永弾正が、これを参考にしたと考えるだけでも、何だか微妙な感動を覚えます。ちょっとエロな話をしつつも、女性の反応を見つつ、表情の変化、呼吸の変化などから、相手の状態変化を見るって、まるで我々の『診立て』とよく似ているので、勉強になります・・・
そして、以前のブログで『五傷之法(ごしょうのほう)』は紹介したので、今回も男性必見!秘伝中の秘伝を最後にご紹介したいと思います。

【八深六浅一深之論】(はっしんろくせんいっしんのろん)
(原文)
黄帝問てのたまはく、八深六浅九浅一深とはなんといふことぞや、素女答ていはく、八深六浅とは、ふかく指入(さしい)れていき八息をつき、あさくぬきあげていき六息をつく也、ふかくいれて八たびつき、あさくぬいて六度つく事にはあらず。あさくとは琴弦(一寸)より玄珠(四寸)にいたるを云、ふかくとは嬰鼠(三寸)より谷実(五寸)にいたるを云、右此浅深の秘術を心得て常におこなふべし、はなはだ浅き時は女心美快ならず、余りにふかき時は男女のために毒となることおほし。
(意訳)
黄帝がお尋ねになった。男女交合において、八深六浅、九浅一深という言い方があるようだが、一体、どんなことを言うのか?
その問いに素女が答えた。八深六浅とは、玉門に玉茎を深くさし入れて、八回呼吸し、浅く抜き出して、六回呼吸することを言います。深くさし入れて八度突き、浅く抜き出して六度突くことではありません。浅深の目安ですが、浅くとは琴弦(一寸)より玄珠(四寸)までを言います。深くとは嬰鼠(三寸)より谷実(五寸)までを言います。右に示したように、浅深の秘術を心得て常に交合を行って下さい。その際、浅すぎる入れ方では女人の快感は削がれ、反対に、余りに深いと男女の養生のために害毒を及ぼすことが多くなりますので注意して下さい。

って、こんな感じでしょうか。“八深六浅 九深一浅”って一時期週刊誌等で取り上げられたことがあるので、目にされた方もいると思います。
ですが、その殆どが誤訳で、八回深く突いて、六回浅く突く様な書き方をされているのが殆どです。素女もそうじゃないよ!って本文で強調しています。
やたら突きたがるのは男性の感覚であって、セックスにおける男性の勘違い部分であると素女は言いたいのではと思います。

その中で、セックスの仙人、素女がポイントとして挙げているのが『呼吸法』であると言っています。深く指し入れて八回呼吸浅く抜き出して六回呼吸(八深六浅)、九浅一深も同様ですねぇ・・・操体でも『息・食・動・想』の教えの中で、『息』を説いていますが、息の重要性を改めて感じる部分でもあります。

この『黄素妙論』から全体的に感じるのは、昨今言われている『スローSEX』とかポリネシアン・セックス』等の匂いがすることでしょうか。いずれにしても、男が独りよがりでいたすことを戒めており、女性のため、お互いの健康のための養生としてのセックスの重要性を言っています。

戦国時代と言えばとかく戦いに明け暮れた側面もあるのですが、それだけでは無く、人間がより人間臭く本能に対し従順に生きた時代であったとも言えると思います。
女性達は男性を意のままに操縦するために日々セックスの腕を磨き、男性も様々な工夫を凝らし、女性を快に導き、健康になるためにと様々な手法を用いことに及んでいたなんて、何だか素晴らしいと思いませんか?
『快』に対してお互いが工夫し、歩み寄り深めていく、そこからは『生きる』ということに対しての大いなるパワーを感じます。

今年の京都のフォーラムは『愛と生』がメインテーマで8月28日(日)に開催予定です。道三ゆかりの場所で大いに生と性を語ろうと思います!是非、多数の方がご参加戴けることをお待ち致しております。
一週間ありがとうございました!明日からは我らの師匠、三浦寛先生の登場です、お楽しみに♪

戦国武将の養生訓 (新潮新書)

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