東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

境界線と意識

篠宮龍三氏は、現在国内で唯一人のプロのフリーダイバーです。
映画「グランブルー」で、人類初の潜水100メートルを記録したその人、ジャック・マイヨールの記録をアジア人で初めてクリアしています。

比べるのもおこがましいのですが、
少し荒れている海に潜れば、私の場合、自分の身長の2〜3倍で苦しくなりますね。
湘南に住んで始めたばかりの頃のサーフィンでは、ワイプアウト(ボードから転落)して波に巻かれてると、
1分も経たないうちに、「死んでなるか、なるものか」と必死に本気でもがきますから、
この記録に挑戦すること自体、どれほど大変な記録なのか想像はできます(関係ナイって?)

きっと苦しさとの戦いなのかな?とも思ったのですが、
篠宮氏の言葉は、私の想像を超えた言葉でした。

例えば、海に深く潜ることについての質問で”宇宙”という言葉にまで言及するのです。

「(フリーダイビングは)自分にとてもフィットしていた。人生を賭けて追究したいテーマに出会えた瞬間」「地上を離れ、海の中へ、地球の中心へ潜っていくというのは、
 光もなくなって、音もなくなって、しかも重力も感じなくなっていくので、宇宙に近づいていく感覚に近い。

「かなりの水圧も加わって、圧倒的に感じるのが、水の質感。
 すると、急激に時間が濃くなっていく」

「例えるならば、5秒に感じていたのが実際には20秒も経過しているような、
 つまり、それだけ気持ちがいい空間」

・・・というのですね。
つまり、ある環境に置かれた『からだ』にとって、快適な空間は時空を超えているのでは?

さらに驚いたことに、水深100メートルを超えると酸素が必要と感じないのだそうです。
勿論、体内では酸素を消費してガス交換をしているのですけれど、
数分にいたる”マ”では、酸素を吸えない状態を”からだ”が一時的であったにせよ、実際に受けいれているのです。

「(その時間)人間の能力は有限なのですが、その壁が取り払われたように感じて、
 (本当は)人間の能力は無限なんじゃないか、と実感する瞬間です」

・・・と話しています。
この話を聞いたとき、私はピンと来ました。

操体の臨床とは、このようなことも大いに含んでいる。
見えている現象はモチロンですし、目には見えないなことを通じて、ことの成り立ちを学ばせて頂くのですからネ。

臨床の場でも、向かい合っているのは相手なのに、自分にも向かっている。
感じることは、意識として受け入れる。受け入れるのは相手だけではなくて、自分にもあるのです。

このようなことは、操体法の創始者橋本敬三正師から、直弟子三浦寛理事長へと大事に受け継がれていて、
東京操体法研究快での学び、塾操体の学び、東京操体フォーラムの「快」に繋がっているのです。

有り難いことです。ありがとうございます。

                                         岡村郁生

追伸:龍のつぶやき⑥
「ほんとうにみえないものは、”かたち”ではなくて、意識として在る。
 じつはみえているものも、”かたち”なのではなくて、意識が薄くなれば消えていく。
 皮膚のはたらきは、”ながれ”を生じているものを感じることにあり、
 それは、振動によって生まれている感覚でもある。
 皮膚にとっていえば、振動を感じとること。生じていくものもあり、消えていくものもある」
 

東京操体フォーラムin 京都2011は8月28日(日)に開催されます。北村翰男(奈良漢方治療研究所、奈良操体の会)、三浦寛

Sotai Forum inMadridは、9月24日、25日の二日間、マドリードにて開催致します。三浦寛

2011年秋季東京操体フォーラムは11月6日(日)、東京千駄ヶ谷津田ホールにて開催予定です。