東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

『快と楽の違い』

「暑さ寒さも彼岸まで」とは良く行ったもので、私の住んでいる福岡の街も暑さも和らいで来て随分過ごしやすくなって来ました。暑くて眠れなかった熱帯夜の苦痛を思うと本当に『楽』になって来ました。初日はSotai Forum in Madridの話題から入りましたが、今日2日目からは今回のリレーブログのテーマであります。『快と楽の違い』についてという内容で書いて行きたいと思いますのでお付き合いをお願いいたします。

どうやらお茶にも、お花にも、謡にも、フラダンスにも日本舞踊にも何かにつけて○○流や○○派といった派閥や流派というものがあり、考え方や作法など様々な違いがあるそうだ。手技療法の世界でもカイロプラティックや指圧の世界では、行くかの流派というものが存在している様子、しかし私達が日々学んでいる操体においては、操体の創始者である橋本敬三医師の意志を継いだもの達が切磋琢磨しつつ、その学びの質的な差こそあれ○○流操体や○○式操体などと云う様なスットンキョウなネーミングをつける事無く発展しているように理解しています。(希望的観測ではありますが・・・)

しかし、先にも書きましたがその学びの深まりの中でひとつ未だに曖昧にされているものがあるます。操体法の臨床を行う際の動診を「気持ちの良い方」に通すのか、「楽でスムーズな方」に通すのかという『快か楽かの違い』です。これを読んでいる一般の方には「何のこっちゃ?」という話だと思いますので、まずは操体法のいろはの「い」から今日は入って行きたいと思います。

操体法は仙台のお医者さん 橋本敬三医師によって正体術、あんま・指圧、鍼灸、ヨガなどの様々な東洋医学のエッセンスを集約したい系図けられた医学であり、それはひとつの治療技術だけには留まらず、呼吸、食事、運動、思想という生きて行く中で誰にも変わってもらう事の出来ない4つの場(最小限責任生活)のバランス制御を柱にした包括医療の形態を取っている。通常我々が操体法と読んでいるのは、その中でも運動のカテゴリーに入ってくるのではありますが、全ての症状疾患の元となってくるボディーの歪みを取り除く為のアプローチの方法を指しています。


橋本敬三医師

私達のからだはからだの中心(腰)からの連動装置になっていて一箇所の関節が動くと全身が連なって動くようになっています。だからこそ一箇所の以上が全身のボディーのバランスに影響してしまう。またこのボディーの歪みが生じてくるとそこには必ず感覚異常が起こり痛みは無いまでも「重たい」「だるい」「疲れやすい」などと云う診断はつかない不定愁訴に悩まされる事になるのです。そしてこのような状態の時にからだの関節に相反する動きを動作分析してみると必ず動かしやすい動きと動かしにくい動きに分けられる。そしてこの相反する動きがある場合は動かしづらい運動はやめて、動かしやすい方に運動するだけでもボディーの歪みは整復される。このような筋肉や骨格関節の持っている特徴を使いボディーの歪みを正常な状態に回復させるのが操体法による治療です。

これだけ書くと「じゃ〜、痛くない方に動かしてやれば痛みが取れるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、これは半分ピンポンで半分はブーなのです。どんな治療にもパーフェクトという事はあり得ないのでしょうが、この痛くない方に楽な方に動かす方法で素直に取れてくれる歪みもあれば、楽な方に何十回、何百回やっても取れない歪みも存在するのです。様はからだが楽に反応しないのです。あんま・マッサージ・指圧に上手下手があるのは、治療者の技術的な差が大きいのかもしれませんが、操体法ではその差は操法に楽な方へ動かすのか、気持ちの良い方へ操法を通すのかという「楽か快の違い」で変わって来ます。楽な方よりも、気持ちが良い方を患者さんのからだにききわけてもらって、そのからだが要求する気持ち良さを味わっていただく事が最適な整復コースに繋がって来るのです。

このように書いてみると、誰もが「じゃ〜、みんな気持ちが良い方にすれば良いよね。」と思いますよね。では何故気持ちよい方にではなく、未だに楽な方を選択してしまうのでしょうか?

3日目につ・づ・く



2011年秋季東京操体フォーラムは11月6日(日)、東京千駄ヶ谷津田ホールにて開催予定です。