東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

『何故楽な方よりも気持ちの良い方が良いのか?』

昨日は操体の臨床で『気持ちよい』という感覚を操法に通した方がからだの歪みが取れやすいのに何故痛みの無い『楽』を操法に選択してしまうのか?というとこロまで書きました今日はその続きです。これは一言でまとめてしまうならば『治療者の勝手な思い込み』に寄るところが多いのではないかと思います。その理由はいくつかあるのですが、まず第一に操体法創始者の橋本敬三医師の書き残した文献の中で気持ち良さをききわける動診と操法についての記載が一切無いと云う事があげられます。晩年橋本先生も近しい弟子に対しては「操体法の指導は気持ちの良さ(原始感覚)以外は指導するな。」と気持ち良さによってからだが変化するということを理解し、その指導を行っていたのですが、残された文献というのが、未だ気持ちの良さに対しての動診と操法の確立される以前の痛い方と痛くない方の二者択一の動診と操法についてしか記載がありません。それで実際に橋本先生から「気持ち良さで治るんだ。」という言葉を受けていない治療者にとっては痛くない方に楽な方にからだを操る操法こそが操体法による治療のセオリーであるという固定概念が出来上がってしまっているように思えて仕方ありません。確かに対になる動きを動かしやすいか動かしにくいかを比較して動かしやすい方に動かす事でボディーの歪みが矯正される事は紛れも無い事実であり治療者にとっても患者にとっても単純明快である事に疑いの余地はありません。問題は楽な動きでは改善する事が出来ないものに対してどのように対処するのかという治療の質が問われるケースがあるということです。そのような緊急事態に際して「もうお手上げです。」と白旗を上げてしまうのか、より質の高いアプローチを模索し続けて行けるのかが『楽』に固着しつづけるのではなく『快』をききわける動診と操法へ発展進化していったプロセスではないかと考えております。



2011年秋季東京操体フォーラムは11月6日(日)、東京千駄ヶ谷津田ホールにて開催予定です。