東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「快」について

 四日目は「快」について考えたいと思います。よろしくお願いします。
 二日目のブログにも書きましたが、痛み(特に鈍い鈍痛)は大脳辺縁部で記憶されることがあるだけでなく、脳内で痛みという感覚をつくりだしてしまうこともあるようです。この脳内の痛みを、痛みの訴えのある患部に対してアプローチしても、根本的な解決にはならないのではないのでしょうか。
 例えば骨折後のクライアントが、骨折部は癒合して治癒したにも関わらず、一年経過しても痛みは変わらないという方も見受けられます。このような場合、精神的問題、痛みの感受性の問題として捉えることもあるのではないでしょうか。皆さんならどのようにアプローチしますか。
 僕は、操体の学びの中に答えがあると思います。とくに「快」というからだのききわけに、大きな可能性を感じます。「楽な方向、動きやすい方向に可動極限まで動かし、2〜3秒たわめて(動きをとめる)瞬間急速脱力させる(第一分析)」「楽」の動きでは、脊髄反射による効果に留まるのに対して、からだの感覚受容器で聞き分けたきもちよさは「快適感覚」として感覚の中枢である脳内にいき、ホルモン分泌により痛みの感覚が抑制さるほか、ホルモンや細胞の働きによってからだの治癒能力・免疫力の向上などに繋がるなど様々な効果が期待できるのではないかと考えます。脳内の痛みの抑制に働くとされる快楽物質のホルモンは20種類ほどあるようですが、その中でも最強の快楽物質とされるホルモンは視床下部、脳下垂体で分泌されるβエンドルフィンとされ、このβエンドルフィンは「快」という感覚に対して分泌されるそうです。
 「快」は感覚中枢を経由するからこそ、身体運動の法則(重心安定の法則・重心移動の法則・連動の法則・呼吸との相関性・目線との相関性の3法則と2相関性)に基づき、ひとつひとつの動きに対して快適感覚の有無をからだに確認(動診)しますが、からだの感覚をききわけることが大切なのです。そしてききわけられた快適感覚を十分に味わう(操法)(第二分析)ことで、ホルモン分泌や細胞などからだ全体の反応が期待できるわけです。
 感覚には、特殊感覚、体性感覚、内臓感覚があり、その中の体性感覚は表在感覚と深部感覚とに分けられ、第二分析は深部感覚のききわけに位置します。この深部感覚の快の感覚をからだにききわけるという動診を、決め付けやからだへの感覚のききわけを省略すると、第一分析のように脊髄を介した反応になってしまうから、からだは本当に不思議です。快の質が高いほど治癒能力・免疫力が比例して向上します。もちろん「楽」を「快」に言葉だけ変えたとしても、「快」を探すような行動しても効果は「楽」の効果とかわらないはずです。
 今日はこの辺りで・・・。ありがとうございました。