東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「自分にとって操体とは」というテーマを意識して。

おはようございます。
今週は比較的に暖かく感じますね。
今日は午後から、多くの地域で雨が降るそうです。
私の住む地域は乾燥した日が多かったので、久しぶりの湿り気は歓迎なのですが、先週大雪に見舞われた地域の方々は、雪崩などに十分注意していただきたいと思います。



「自分にとって操体とは」
このテーマを聞いて、何を書こうか自分の中で自問自答を繰り返し、日々意識する中で、偶然なのか必然なのか、一冊の本にめぐり合いました。
染織家でエッセイストの志村ふくみさんの「語りかける花」という本なのですが、染織家と操体臨床家との職種の違いこそあれ、共感共鳴するものが多くあり、大いに学ばせていただきました。
その中の「織色」というエッセイが、まるで自分の描く操体観のような感じがしたので、今日はそのエッセイを紹介したいと思います。



  織色

 経糸に青を、緯糸に赤を入れて織ると、青と赤がかさなり、青でも
なく、赤でもなく、やや紫に近い色があらわれる。それを織色と呼ん
でいる。さらに七彩を七倍に、たてよこ織り成せば無限の織色が生ま
れる。すこしはなれたところからみると、視覚混合の働きによって真
珠母色の輝きを得る。色と色は決して混ぜ合せることなく、一つの純
粋な色として重ね合さるのである。
 かりに経を空間、緯を時間とすれば、我々の日常もまた歓び、哀し
みの織色である。記憶や夢に、もし色があるとすればそれもまた織色
であろう。自然現象の中ではさらに神秘な織色があらわれる。晴れた
日の海が緑翠色に輝くのも、群青色の海と、太陽の光の織り成す色
である。京都の街をかこむ山々もまた、春の霞にはじまり、夏の驟雨、
秋の霧、冬の時雨など、緑の遠山にうす青く、水蒸気がかかり、或日
は灰色のヴェールが、或日はうす紫の靉靆した靄がかかり、遠近の山
なみは暈繝ぼかしの玄妙な織色を呈する。それはまさにしっとりと潤
いを含んだ日本的織色の世界である。幸か不幸か私はこの織色の世界
から宿命的にのがれることができない。それならば私は、色が混り合
うことを拒み、互いに補色し合い助け合おうとしている色の法則性に
従順でなければならない。
 人もまた、他者との、かかわり合いにおいて他と混同することなく、
互いに調和をつくり出してゆくことをそれは示唆しているのかもしれ
ない。




今日はここまで、とさせていただきます。


友松 誠。