東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

心とからだの研究(三日目)

昨日の続き
からだの動きは筋肉活動だといってきたが、平均的な人間にとって、横紋筋のような随意筋や内臓筋の不随意筋もともに完全に休息の状態になることは殆んど起こり得ない。筋肉には、どうしても一定の緊張が残ることになるが、この緊張のことを「基礎張力」と学説は定義している。基礎張力の一部は、筋線維を形作っているミオシン蛋白質自身の構造による弾性的性質に由来するものである。残りの大部分は、神経系器官からの神経インパルスによる筋肉刺激が要因である。
意識的な筋肉活動である筋収縮と基礎張力には質的な違いはない。この基礎張力というのは無意識に筋収縮が起こっている状態のことであり、不随意筋の内臓筋肉や随意筋の体性筋肉にも基礎張力は分け隔てなく起こる。また基礎張力は筋肉の長さに関係しており、我々の意志とは無関係であって、筋肉自身から発生する刺激によって、それが脊髄に達し、再び筋肉へと生体電気的なインパルスとして戻り、基礎張力を作りだすのである。このような大脳皮質の関与しないスタイルで直接筋肉に戻る反射のことを生理学では「短絡脊髄反射」と呼んでいる。
こうした筋肉の基礎張力は、静止状態で働いているバランス力という見方ができるが、もしこの静止状態が乱れると痙攣発作が起こり、強い痛覚が感じられる。これが筋肉の疾患といわれるものだ。痙攣を生理学的に言うと、意志によらない筋繊維の異常なひきつけ状態を起こしているのである。これを操体の動診で対応すれば、高レベルの運動エネルギーと低レベルの熱エネルギーに変換して基礎張力の静止状態に戻すことができる。
筋肉活動は生体電気的なインパルスによって、ある種の化学反応が起こって、筋肉蛋白質に潜在していたエネルギーを放出することにより筋収縮が起こる。これは筋肉内にある糖質が燃焼することにより進行するわけであるが、操体動診における動きの誘導がこれにあたる。もしこのときの収縮が高い運動エネルギーだけで終わってしまったなら、治癒につながってこない。そこで操者の介助抵抗をかけることによって低い熱エネルギーに変換することができる。そして筋肉は基礎張力の静止状態を保つことができるのである。そのためには運動エネルギーと熱エネルギーのバランスが必要であり、操者の介助抵抗に対して更に操者の動誘という誘導操作が求められる。この動誘というのは被験者に与えた目的の動きを軽く誘導することで、主に皮膚に対して働きかけることであるが、同時に操者の想念も必要となる。
動誘をかける操者の手には心臓の鼓動や血流の拍動や呼吸による拡張収縮、それに脳脊髄液の循環による骨振動などが被験者の皮膚に伝わっていく。操者においてはこれらの動力源を意識による想念波動でもって動きを誘導していく。まさに心とからだの協調性が必須条件となるのである。
明日に続く



三浦寛 操体人生46年の集大成 "Live ONLY-ONE 46th Anniversary"は2012年7月16日(海の日)に開催致します。