東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

心とからだの研究(四日目)

昨日の続き
意識動作として随意筋が働く場合、筋肉や神経以外に、骨や関節と密接に連動することになる。一つの動きを起こすには、筋肉と骨と関節が単一の運動装置として働くことになるが、それらは運動装置の中での異なった一部分にしかすぎない。作動原理からみれば、骨をテコに見立てると、そのテコの支点が関節ということになる。そして体性筋肉が腱によって骨と接した部分にテコの力が加わるのである。
たとえば前腕には橈骨と尺骨というテコになる骨がある。そしてこの前腕を屈曲させようとすると、肘関節がその支点になる。その際、少しの抵抗を手に感じるも、やがて屈筋の筋が付着している橈骨、尺骨に力が加わり、前腕は屈曲動作を果たすことができる。
骨や関節を機能的観点から見ると、静的にはからだの重量を支え、動的には筋肉活動を最終的な動作として発揮させるという二重の機能を持っている。からだのすべての骨は、関節によって互いに連絡しており、その大部分の関節の働きはボールジョイントと同じ機能がある。このボール部分は丸くて滑らかな表面をもった軟骨でできており、骨の関節部分を被った構造になっている。このように連結した関節部の軟骨の間には関節滑液という潤滑油の役目をする液体で充たされている。
関節には動作という機械的な働きのほかにからだの重量によって常に圧迫されていることから、土台である足首の関節には特に負担がかかってくる。肥満したからだの足関節が、生涯にわたって重い体重を支えながら動かし続けなければならないという、過酷な労働にさらされた可哀そうな器官であることもわかってくる。その上、自分の注意不足によって不自然な姿勢や運動不足などのアンバランスな生活を続け、不適切な食事内容も重なって足関節を痛めてしまうと、事態はさらに悪化する。こういった からだに対して害になる諸因子が、関節を錆びつかせ、耐用年数を極端に縮めていくのである。
このような足関節にみる疾患は骨関節炎と呼ばれている。その特徴的所見は関節部の軟骨がだんだんもろくなって徐々に失われていく。すると、関節システムそのものが消失する結果にもなりかねない。足関節だけに限らず、膝や腰においても骨関節炎に見舞われると、いずれ哀れなわが身を車椅子や寝たきりベッドの中に見いだすことになろう。
これらの症状を訴える肥満したクライエントには、下手な慰めは不要であり、ハウツー的な施術行為を無条件に行うべきではない。それよりも操体教典が示すように「息・食・動・想」の自然法則に基づいた生活習慣を指導することの方が先決であり、それに加えて施術を併用していくことが求められる。肥満は自己責任において招いた結果なのであるから、そのことを反省し、自然法則に適った生活に戻るための、心のあり方への指導がまず必要なのだ。
明日に続く



三浦寛 操体人生46年の集大成 "Live ONLY-ONE 46th Anniversary"は2012年7月16日(海の日)に開催致します。