東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

The Walking Dead

毎回恒例、最近はまっているものシリーズ?ですが、毎度の事ながら海外ドラマシリーズから、「The Walking Dead」です。
ウオーキング・デッドと聞いて分かった方は、結構なホラー好きですなぁ。。
タイトルから言えばそのまま、死んだ人が歩くゾンビドラマです。
私は昔からホラー大好きで、特にスプラッター・ホラーと言われるB級作品が私の心をくすぐってしょーがありませんでした。そんな中でも神作品Night of the living Deadから始まり、「ゾンビ」「死霊のえじきといったジョージ・A・ロメロ監督の三部作にまんまとはまり、特に「ゾンビ」は私の中では衝撃的作品でした。内容はともかく、特殊メーキャップに衝撃を覚え、若かりし頃の一時期、真剣に特殊メーキャップ・アーチストを目指そうと思った時期もありました。
このゾンビでの特殊メーキャップ・アーチストが人体破壊系アーチストの神こと、トム・サヴィーニ氏でした。ジョージ・A・ロメロ監督にはトムがセットという位に一時期のハリウッド特殊メーキャップに、残酷描写アーチストとして一大センセーションを起こしました。
この特殊メーキャップにも色々と芸風があって、ディック・スミス氏の様に、「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドへのメイクなど、シリアスな映画のイメージを壊さない芸術的繊細なアーチストや、リック・ベイカーやスタン・ウインストンの様にマイケル・ジャクソンのPVやSF的要素も含めた創造的なメイクを施すアーチストもいます。

しかし!そんなアーチストと一線を画すのがトム・サヴィーニ大先生なのです。芸術を微塵も感じさせない、ひたすら“血!血!血”と胴体はちょん切れるわ、顔面吹っ飛ぶわ、内臓飛び出しのオンパレード。まともに見ていると、当分肉料理は食べられません。まぁ、今に至るゾンビの社会的認知はジョージとトムの功績と言っても良いでしょう。

このままだと、またまた話が脇道に逸れていくので、元に戻しますと、私が現在ハマリ中の「The Walking Dead」もゾンビ満載の物語なのです。
但し、私が愛してやまないトム先生とは芸風の違った、ゾンビストーリーとなっております。最初は単純にゾンビが大量に出てくる際物ストーリーかと思いつつ見ておりましたら、設定が妙にリアルで気が付けば、思いっきりはまっていました・・・保安官である主人公のリックが職務中に拳銃で撃たれ、昏睡状態の長い眠りから醒めると、世界は大きく変わっていた・・・とまぁこんな感じの出だしだったのですが、街中に溢れるゾンビ達と戦いながらも、別れ別れになった妻と息子を探しながら、生き残った人間の仲間達と安住の地を求めて旅をするゾンビ・ロードムービーといった感じでしょうか。
面白さの一つは人の描き方です。法律も常識も無くなった世の中で、必死に正義を貫こうとする主人公に対し、生き残るために非情に生きることを是としたかつての同僚など、男女問わずその都度の生きるための選択が、誰が正しいのか?思わず考えずにはいられません。正常な精神状態で無くなった時に何を基準に物事を考えるのか?など、自分だったらどうするだろうか?を思いつつ見ております。

最初はゾンビドラマと思って見ていたら、途中から何だか以前見たことがある様な錯覚にとらわれました。よくよく考えてみると、一昨年、WOWWOWで日本初放送された、アメリカのテレビドラマ「The Pacific(ザ・パシフィック)」と重なる部分が多々あり、何だか妙に考えさせられることとなりました。
このドラマはスティーヴン・スピルバーグが映画プライベート・ライアンテレビドラマ“バンド・オブ・ブラザーズ”の二作品で欧州戦線を描き、最後に太平洋戦線を描いたのが、この「The Pacific」でした。
アメリカ側から見た太平洋戦線ということで、当初から興味を持って見ておりました。ガダルカナル戦線、硫黄島、沖縄といった激戦地を転戦して行く主人公達が徐々に心を蝕んでいく様子が物語を通して描かれ、最初は恐ろしくて引き金を引くのもためらっていた若い兵士が、戦線を重ねる度にまるで、物を処理するが如く引き金を引いていく様は、アメリカ・日本どちらから見ても、戦場の狂気を充分に描かれた作品だと思いました。

「The Walking Dead」でも最初は元々人間だったであろう人々に銃口を向けるのをためらっていた人々が、仲間を殺され、自身が生きていくためにと理由付けてゾンビの頭を打ち抜いていく様は、何だか「The Pacific」での日本兵と対峙したときのアメリカの若い兵士の姿とダブるところがあり、妙に考えさせられました。
自分の身内がゾンビに噛まれれば、数時間後にはゾンビになってしまう。生き残るためには頭を打ち抜かなければならない。この究極の選択・・・元は人間だから治るかもしれないと納屋にゾンビを監禁して、殺さないという選択をする人々や、こんな世の中には生きていたくないと、自ら死を選ぶ人など、ゾンビドラマでありながらも、現在の先が見えない混沌とした世の中を暗示しているかの様な描き方に、見る人を引き込む魅力があります。

個人的に家族愛を前面に押し出す今のアメリカ映画には余り共感出来ませんが、ことテレビドラマに関しては秀逸なものが多く、日本の様に見栄えが良いだけのタレントを使って喜んでいるドラマとは違い、中身も予算もふんだんに使われ、視聴率が悪ければバッサリと切るのも制作側を含め、緊張感があり、それがより質の良い番組製作へと繋がっているのだと思います。
まあ、「The Walking Dead」に関してはグロ系NGと言われる方も是非、見て下さい。そして、自分ならの選択肢を考えてみても面白いと思います。

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