東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

快適感覚

今回は快適感覚をテーマに話を進めていくことにしたい。操体では、この 「快」 を味わうということを強調しているが、これには生体の内部環境の整備に果たす役割は、実に大きいものがあるということだ。この快という気もちよさをききわけることができると多くの病気を改善し、未然に防ぐこともできるばかりでなく、今後の人生を心身ともに大きく展開することができる。快感覚は生体内環境を整備すると同時に心の面に対しても大きな力を持っており、いわば心身両面にわたって偉大な効果を期待することができる。
快感覚を味わうとは読んで字のごとく快適な感覚を得ることであり、これを外から見れば、いわゆる恍惚感のある静の状態である。ところが快感覚をひとたび内面的に覗いてみると、生体内には驚くべき変化が刻々に起こっている。たとえば快感覚時の呼吸は通常の呼吸と少し違うところがある。快感覚時の洗練された呼吸は肺胞内におけるガス交換を完全にし、そのために血液中の酸素と二酸化炭素との比率を生体にきわめて有利な状態にする。またその洗練された呼吸運動は清浄化された血液をきわめて活発に全身に循流させるのに役立つものである。
特に快適感覚の状態にあっては、下肢に配分される血液量がきわめて少なくてすみ、その分だけ多く内臓に還流される。そのためにすべての臓器の機能を完全かつ快適に行わせることになる。快感覚時は静なる状態ではあるが生理学的に見れば、このように完全なガス交換と、それによって生ずるところの生体に有効な血液を、きわめて効率よく全臓器に循流させているのである。この場合、脳の循環も旺盛となるので、その面のプラスも軽視できない。
洗練された呼吸運動の内、呼息は気持ちを落ち着かせ、その上で行われるところの精神活動は、きわめて次元の高い精神活動を可能にする。快感覚がこのように心とからだの両面に与える効果は、予想外なものがあり、快感度の質の如何によっては、驚くほどの効果を現すものである。
我々の生命というものを考えてみると、生命体にはそれ自体で健康を保ち続けようとする力が備わっているものであるが、このことは人間ばかでなく、すべての生命にもあてはまる。このような健康の特性というものは、何びとにも例外なく与えられたすばらしい潜在力であり、この潜在する力は、時に応じ必要に応じて、はっきり現れてくることになる。この健康を保ち続けようとするプラスの力が何らかの原因で覆い隠され、反対にマイナスの他の力がより強く働くときに病気となって現れるのである。その原因を考えてみると、生体内部環境の撹乱にあると思われるが、そこで快適感覚を味わうことによってその生体の内部環境が強力に整備されることとなり、撹乱は治まるか、または起きないのである。
明日に続く



2012年秋季東京操体フォーラムは11月18日(日)津田ホールにて開催決定