東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

最終日。

こんにちは。
今日は、昨日の夜に雨が降った為か、随分と涼しく感じられます。それでも30℃。昨日の昼間が暑すぎたのでしょうね。涼しく感じられるのはいいですが、雲行きが怪しくなってきたので、今日は早いうちから一雨きそうです。

今回のブログも今日で最終日です。
2日目以降は、橋本敬三先生がNHKラジオ第1放送に出演した時の様子を記録した、人生読本「人間の設計」の中に収められている最後の方の文章の「その勘が鈍るとね、今は勘よりも知識が発達しているから」の「知識」と「だから有難いってことをわかるのに知識が必要なんだよね」の「知識」との違いについて、自分なりに考察してみました。
 はじめは一日分だけのつもりが、色々なつながりが出来、ひろがっていった。色々と考察する中で、様々な文献にも目をとおしたが、橋本先生の言葉というのは、その場限りの言葉ではなく、どの分野でも、いつの時代でも通用するものなのだという事が改めて感じられた。言葉が生き、つながりをもつのだ。なぜそうなるのか。それは物事を根底から理解されていたからなのだと思う。橋本先生は医師であったが、局所的改善ばかりに拘り、全体の事やその後の事など、どうでも良いという態度であったなら、そうはならなかったと思う。また操体も生まれなかったであろう。しかし、橋本先生はみんなが、健康で快適に毎日を過ごせるようにと願い、生命体の成立の根本から医学を見直していくようになったのだと思う。これは次の「現代農業」に寄稿した文章の一部からも窺い知ることができる。
「私も医者になりかけの若いときは、病気をなんとか治したいの一心だったが、だんだんそんなことは下の下だと思うようになった。医者が治してやるということではなく、生命体の成立の哲学に触れ、大自然を畏敬し、恭順すべきことが、はっきりした」
生命体の成立の哲学とは宇宙現象創生の中心理念のことで、宇宙現象創生の中心理念である太極が陰(−)、陽(+)を設定し、愛と調和によって万物を具現化したことを指している。太極は万物発祥の源であり、無極無限である。この無限界のうちに陰、陽の現象が展開するのであって、現象のうちには無限が貫通普遍していることになる。元始は太極の意志が陰と陽の異質な二質を表して、そこに運動が起こり、物象が形成される時には、愛と調和によってムスビつくことから始まる。これは絶対なのだ。一つの物象となったものにも太極の意志により、陰・陽の性質が決定される。ここからは物的相対の世界で、素粒子、無機原子、有機、生物と次第に複雑な高次元の集合となり、各世界を形成していく。だから絶対純粋なる陰または陽は存在せず、総じて相対性となる。また陰と陽の性質上、同性は反発する。そして異性間は親和といえども、その差が大なれば激しく親和して火花も飛ぶ。しかし、物象を現わしている以上、その存在には太極の意志が普遍貫通しているのだ。だから、より複雑化した相対性の世界でも太極の意志が貫かれ、秩序が構成されてくる。その秩序の構成要因は自然の法則なのだ。だから自然法則は自在してあるというのだ。
先月行われた「操体曼荼羅」で三浦寛先生は「太極は自在であり、混沌(カオス)である。この存在の世界は陰陽分極の相対的基準の世界であり、秩序のある世界(コスモス)である。」と仰っていたが、存在がある限り、無極無限の太極は自在しているのだ。生命現象も自在が貫かれた存在だ。存在の世界は複雑で時には反発も起きる報いの世界でもある。しかし複雑さに自分自身を失ってはいけない。どんなに複雑に高度化しようと存在である限り、太極は自在し、自然法則もそこに自在するのだ。そして調和に向かっている。調和するための羅針盤は原始感覚であり、調和に向かう原動力は快だ。だから、存在の世界の一現象である症状、疾患だけなんとかしようとしても、生命現象としては根本的には良くならない。生命現象として根本的に良くするには、生命の起源である太極に学び、自在する自然法則に従順になる以外にないのだ。 
 橋本先生も、先程の「現代農業」に寄稿した文章の一部でもわかるように、医者になりかけの若いときこそ、病気を治したい一心だったが、生命の本源に触れることで、その後は一貫して太極に学び、自然法則の応用貢献に励むということを重ねられ、生命体である人間を、根本からより良く健康に導くようにしていったのだと思う。
 そんな橋本先生であるから、言葉も絶対的見地から発したり、用いたりしているのだと思う。だから私のようなものでも学べば学ぶほど、その言葉に有り難味を覚える。そして、違う分野の人でも、一流とか達人とか呼ばれる人ほど根底でつながり、言葉の意味が理解できるのだと思う。


一週間どうもありがとうございました。
来週は中谷さんの担当となります。
来週もお付き合いの程、どうぞ宜しくお願いいたします。


2012年秋季東京操体フォーラムは11月18日(日)津田ホールにて開催