東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

盲点その3

 昨日書いたストレッチや筋トレも含め、現在のからだの治療手技は、からだの感覚に対して盲点になっているような気がします。
 実際にからだを治療する際に、第三者の治療従事者がからだに触れるわけですから、自分のからだでもないのに相手の感覚がリアルにわかるはずがないという声が返ってきそうですが、ここに大きな問題が隠されているのではないでしょうか。
 患者のからだの感覚を無視するかたちで、第三者の治療従事者が治療やアプローチをするために、患者のからだは目的とした筋肉や腱・関節など単一な効果として速効的に反応が現れることだと思います。しかしこの速効的効果は脊髄を介した反射でしかなく、元に戻るのは早いという特徴を持っているように感じます。脊髄を介した反応だからこそ、筋肉の性質から皆同じ条件で「○秒○回」というように第三者が決定できるのだと思います。単純に痛みの原因が単一の問題であれば、これらの方法で解決すると思いますが、現在の痛みを主訴とする症状は複雑化している場合が多く、痛みを訴える部位と、痛みの原因を作っている部位が異なっている場合があります。
 例えば、痛みという不快体験を脳内で記憶している場合や、情動を司る大脳辺縁系の一部でもある扁桃帯が関係し、脳内で痛みという知覚を作り出す(ニューロマトリックス理論)こともあり、このような場合に痛みを訴える部位に対して治療・アプローチをしても、治癒の遅延に繋がる可能性が考えられます。
 からだには感覚という情報を感じ取るセンサーが無数にあります。この感覚をうまく利用することで、大脳からの反応がからだの治癒能力としてあらわれます。この感覚というのが「快適感覚」なのです。
 からだの感覚をききわけるということは、第三者の治療従事者が決めるということはできません。まさしくからだの感覚は本人しか感じ取ることができないからです。からだの感覚をききわけ、快適感覚の有無、あじわいたい要求の有無、脱力方法、回数の要求すべてが患者本人のからだも要求のききわけとなります。ききわけた質の高い快適感覚には、第三者の治療従事者が治療に全く介入できないほどの治癒能力がからだに生まれていることがあり、この時の効果は遅効的反応で持続される傾向にあると考えられます。
 明日はこの快適感覚によって大脳の反応について書きたいと思います。
 今日はこのあたりで・・・ありがとうございました。