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東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

エネルギー変換その2

 佐助の担当六日目です。よろしくお願いします。
 昨日も書きましたが、ATPは長期貯蔵ができません。また、ATPの産生も消費も個々の細胞内で行われるものであり、他の細胞で作られたATPを利用することはできません。つまり、ATP産生の原料であるブドウ糖と酸素は常に全身の細胞に供給され続けなければならないのです。この供給には血液循環が使われため、ブドウ糖も酸素も血液によって全身に運ばれています。
 酸素は肺でヘモグロビンの酸化によって吸着され、細胞に運ばれると二酸化炭素とガス交換されます。そのために呼吸が停止すると酸素の供給がただちに停止し、全身の細胞において好気的反応ができなくなりエネルギー不足の状態を生じます。脳細胞においてはこの影響は特に敏感で脳細胞の機能停止は意識混濁から昏睡状態に陥り、ほどなく死に至ります。これは酸素が水には溶けにくいという性質ゆえに、常時細胞内に蓄積しておくことができず、なんらかの方法で運搬し続けなければならないという事情に起因します。もしも、ヒトの生命維持に十分な量の酸素が水に溶けうるものであるとしたら、長時間呼吸停止しても細胞内に溶け込んだ酸素を利用することでただちに死に至るという状況は避けられるのかも知れません。
 ブドウ糖は摂食され消化、分解された炭水化物が肝臓でグリコーゲンとして貯蔵され、グリコーゲンからグルコースブドウ糖)に分解されて血液中に供給されます。 筋肉細胞や脂肪細胞にはグリコーゲンの貯蔵機能があり、短時間であればこれを解糖してエネルギー供給が可能ですが、神経細胞、赤血球にはグリコーゲンの貯蔵機能がなく、血液からのグルコース供給に完全に依存しています。そのため血液中のブドウ糖濃度すなわち血糖濃度が一定値に保たれなければ、脳においては酸素欠乏と同様な結果をもたらすことになり、低血糖となり呼吸停止と同様に脳細胞の機能停止、意識混濁、昏睡状態から死を招きます。
 血流の途絶はエネルギー産生の停止を意味し、細胞の壊死に至ることになり、また逆に血糖濃度が高くなりすぎると、大量の糖が細胞内に入り糖尿病に見られる合併症を引き起すということになり、血糖濃度におけるホメオスタシスは生命維持に極めて重要となります。
 血糖濃度のホメオスタシスにはインスリン、グルカゴンというホルモンが作用しています。 摂食された炭水化物は単糖に分解され、小腸で吸収され門脈を経由して肝臓に運ばれ、また摂食によってすい臓ではインスリンが産生されます。インスリンは糖分を細胞に取り込む作用をし、肝臓ではインスリンの増加によって余分な糖分がグリコーゲンに変えられて蓄えられます。
 食後1時間ぐらいは消化管から吸収された糖により血糖値は少し上昇するが、インスリンの作用によって2時間後には食前の状態に戻ります。逆に外界からの糖の供給が減るとすい臓ではグルカゴンが作られ、グルカゴンの増加によって肝臓はグリコーゲンをグルコースに変え(糖新生)血中に放出する。食事をしていない間は糖新生によってつくられたグルコースによって血糖濃度が維持されています。
 長期の絶食では、グルカゴンの働きで糖新生が行われるために、血糖濃度が維持されることになり、糖新生にはグリコーゲンからグルコース、乳酸からグルコース、脂肪からグルコースというようにグルコースが生産されます。しばらく絶食しても、グリコーゲンや脂肪をグルコースにしている間は、血糖値が維持され生命は保たれます。しかし、筋肉のタンパク質が分解されて出来たアミノ酸からグルコースは最終段階で、タンパク質が分解されてくるともはや生命を維持できない状況に陥ってしまうようになります。
 筋肉のエネルギー利用に触れてみたいと思います。
 筋肉は性質から白筋と赤筋に分けられ、白筋は短筋とも呼ばれ瞬発的な動作に優れ、グリコーゲン、クレアチンリン酸に富み、嫌気的解糖によってエネルギーが得られます。赤筋は長筋とも呼ばれ持続性に優れ、ミオグロビン、ミトコンドリアに富み、酸化的リン酸化でエネルギーを得られています。ただし実際には、白筋と赤筋は入り混じっていて区別はつきにくいようですが、一般には上肢筋は白筋繊維の割合が多く、下肢筋は赤筋繊維の割合が多いようです。
 短距離走では、始めの数秒間は筋肉細胞内にあるクレアチンリン酸とADPが使われ、その後グリコーゲンが使われますが解糖によるものであり、乳酸とATPが発生します。 乳酸は蓄積すると筋肉が酸性化し痛みを感じます。短距離走による筋肉の痛みは乳酸蓄積によるものであり、その後は乳酸が血中に放出され肝臓で捕捉されます。 肝臓では糖新生によって乳酸からグルコースへの反応が起こりますが、これにはミトコンドリアの酸化的リン酸化によるエネルギーが利用されることになります。運動後に呼吸が亢進するのは、乳酸処理に大量のエネルギーが必要となるためです。
 中距離走では、血中からグルコースを取り込み、グリコーゲンを再合成して次の急激な運動に備えます。
 長距離走では、筋肉のグリコーゲンが緩徐に消費され、好気的酸化によってミトコンドリアで完全に酸化されます。したがって乳酸の蓄積は起こらず、筋肉の痛みを避けた状態で長時間の運動が可能となります。
 長時間の持続運動では、骨格筋のタンパク質は筋収縮のために必要ですから、血糖維持のために使い尽くすわけにはいかないため、長時間の持続運動のためには脂肪がエネルギー源として使われます。脂肪によるエネルギー供給は、脂肪組織ではアドレナリン(ホルモン)によって、脂肪はグリセリン(グリセロール)と脂肪酸に分解されて血中に放出されます。 グリセリンは肝臓の糖新生系でグルコースになり、 脂肪酸は血中のアルブミン(血清タンパク)に結合し、肝臓に運ばれミトコンドリアの酸化系でアセチルコエンザイムエーになります。この過程で生成されるエネルギーはATPに換算すると33個になります。
 からだのエネルギー変換に起こる無意識の細胞の自己更新にはビックリするような機能があります。細胞は炭素、水素、酸素、窒素、リン、硫黄などの元素から構成されているそうです。環境が不変で成長もしない限り、細胞の自己更新とは、これらの元素からなる化合物の分解、再合成が可能なため、構成素材として新たな供給は不要で、環境変動のために化合物組成を変える場合でも、化合物相互の変換によって対応できるので、必要なのは呼吸によるATPだけだそうです。
 最低限の生命活動(生物学的仕事の統合、タンパク質作用のネットワーク)とは生物体の現状を自己維持すること(生きていること)であり、エネルギー変換を通じて絶えず細胞の自己更新する(新陣交代する)細胞の全体的統合の活動だそうです。
 今日はこの辺りで・・・。ありがとうございました。