東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

病気と自己責任(5)

昨日の続き

 病気は血液循環をよくすれば治る、と昨日も述べた。そしてそれには筋骨と皮膚に働きかけるとも言った。まず筋骨格系については、これを力説しないものはない。歩け歩け運動から始まり、ジョギング、エアロビクス、ストレッチ、そして筋トレに至るまで、みな血液の循環を目的とするものである。科学文明の発達とともに、ますます運動の大切なことがわかってきたのは必然的なことだ。
 運動筋肉の血液循環がよくなることで、その血液循環の勢いが、内臓筋肉にも及んで、内蔵の血液循環もよくなってくる。すると、腐った細胞も運び出されることとなり、新しい栄養も配られるので、病患部は元の健康に戻るという論理である。運動を抜きにして健康は論じられないことは、もはや常識である。

 しかし骨格の重要さについて気づいている人は少ないようだ。私の施術院にやってくるクライエントには腎臓を悪くしていると、訴える人がいるが、「あなたはゴルフをやっていないか」と私は尋ねることが多い。なぜならゴルフを熱心に練習すると、どうしても胸椎10番に無理がかかって、そこが歪んでくる。胸椎10番が歪むと、必ず腎臓が悪くなるからである。ゴルフは運動としては結構なことであるが、そのゴルフによって、骨格が歪むことに気を使っている人はあまりいない。
 骨の歪みが原因で重患になるケースとしては、ムチウチ症が多いが、追突されて10年、病院に通いつめてもなかなか治るものではない。骨格の歪みの恐ろしさは、これでよくわかるはずである。それを矯正する方法としてオステオパシーカイロプラクティック、それに東洋の鍼とかがあるが、どれも思うほどではないのが現実だ。これについても操体法は、実にすばらしい効果を出すことが期待できる。骨格の異常をピタリと整復する実力を持っているからである。

 次に皮膚については、外部から容易に触れることができるので、その刺激が内部に伝達されて血液循環をよくすることは、誰でも知っている。日光浴、風浴、水浴、摩擦、湿布、膏薬、果ては吸玉、鍼、灸、電気なども皮膚による血液循環法である。ひと風呂浴びると、さっぱりするのも、皮膚の刺激が、内部の血液循環をよくしたことで清涼感を覚えるからだ。
 それほどに皮膚というのは、血液の循環をよくする方法なのであるが、事実は、あまり注目されてはいない。筋肉の運動は、血液循環のために大切だということは誰でも知っているようであるが、皮膚の刺激が血液循環のためにどんなに大事なことか、知っている人は少ない。その証拠に、健康法と称する本が無数に出版されているが、運動の大事なことに言及していても、皮膚の大切なことには触れていない、説いていない本が多い。

 血液循環のことをいうならば、皮膚への働きがけと、筋骨の運動とは、まったく対等の価値をもっている。ゆえに一方を言うならば、必ず他の一方を言わなければ、健康道としての作法に、大いに欠けるところがあるのだ。この一辺倒の傾向は、血液の質について、呼吸を疎かにし、食の栄養一辺倒に流れやすいのと、不思議なほどに似通っている。健康を学問とする専門家たちが、大いに筆をふるっていながら、血液の質において呼吸を忘れ、血液の流れにおいて皮膚を見落としているのは、一体どうしたことであろうか。操体法ではこの皮膚に働きかけることで生体の歪みを正すことに開眼したのである。ただ操体法においては、皮膚への刺激ではなく、軽い接触をもって対応しているのが何よりの違いである。

 明日に続く

2013年4月28日 東京千駄ヶ谷津田ホーにて、春季東京操体フォーラムを開催致します。