東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

最高の名医

人にとって目にみえるものとはどれ位あるのでしょうか?
今、自分の目の前に拡がる世界と風景だけが、全てで、みえないも
のや証明出来ないものは全て”無い”と評価してよいものでしょう
か?

まがりなりにも、臨床家として、十数年を過ごしてきて、強く感じ、
確信をして来ていることが、やはり、からだと向き合うということ
は、目にみえる”現象”だけを追っかけては、遠回りになるという
ことです。

とかく、クライアントは自分の愁訴を強く訴えます。「膝が痛い」
「腰が痛い」「頚が痛い」
などなど、いわゆる目に見える現象とし
て、我々臨床家人生にとっての第一関門として突きつけられるので
す。
ここで、私たち臨床家に求められるのは、クライアントと向かい合
うか、クライアントの”からだ”と向かい合うかの明確な意思決定
です。

とかく、最初の頃はクライアントの要求に答えようと思って、痛み
をとることに終始します。膝が痛いと言われれば、ひたすら膝の痛
み取りと、クライアントの要求を満たすことが、施術だと勘違いし、
気が付くと痛みをとることが仕事となってしまいます。

これは、臨床家なら誰しもが、陥る最初の難関かもしれません。
しかし、クライアントが抱える痛みを取り去ることが、その方の本
質的な改善になっているわけではないのです。
その証拠に、膝が痛いと訴えているクライアントの痛みが楽になる
と、次は腰が・・肩が・・頚がと、痛みが飛び火をするのです。

これこそが、木を見て森を見ずといった、本質から外れていく施術
となってしまっている証拠です。
こうなると、クライアントも臨床家もお互いが、迷路へと迷い込ん
でしまいます。

迷路に迷い込まないために必要なのは、やはり、クライアント本人
の要求に向き合うのではなく、本質部分である『からだ』と如何に
向き合って行くかが、臨床家のみならず、クライアントのためにも
なるのです。

よく、クライアントの中には、自分のからだはDr.やプロの施術家
が治してくれるものだと勘違いしている方が多々いらっしゃいます。
これは大いなる勘違いで、からだを治すのは当事者の『からだ』
そのものの役目であって、決して、Dr.や臨床家達が治すわけでは
ないのです。

私たちがお世話出来るのは、元に戻しやすいからだの状況を作り、
現在の間に合っていない状況から、いち早くニュートラルな状態
になって戴くことだけです。
これが橋本敬三師が仰っていた、『治すことまで関与するな!』
意味だと思うのです。

風邪だって、安静にしてホッとけば治りますし、大概の疾病は間に
合っている状況下においては、Dr.なんて必要ないのです。寝れば治
る!これが究極の治療なのだと思います。

要は”神の手””奇跡の治療”何てものは、この世に存在しないの
です。
本人にとって最大で最高のDr.とは自分自身であり、その自分自身を
最高に可愛がり、慈しんでやることが最大の治癒力UPに繋がっていく
のです。

今回の春のフォーラム冒頭で、三浦先生が『自分のことめんこい
(可愛い、愛らしい)と思ってる?』
という問いかけを参加者にされ
ていました。

最初は皆さん、『ん?!』と質問の本質が解らず、首をひねったり、
上を向いて考えたりしていましたが、ここに最高の名医になれるかど
うかの、境界線があるのです。

病んでいるクライアントの共通項は『自己否定』です。
『何でこんなからだに生まれて来たんだろう!』『何で私ばかりが
こんな目に遭うんだろう!』『もう!この膝のせいで!』などなど、
恨み辛みのオンパレードです。自分の日常の行いはさておいて、全
て悪くなったからだへの怒りと、憎しみで充ち満ちてます。

どうでしょう?例えば、からだでは無く、自分自身の人格を、毎日
『オマエはクズだ!』『オマエは駄目だ!』と否定し続けられたら、
どんな気分になるでしょうか?どんなに出来る人でさえ、病んでく
ると思います。

でも、膝や腰、頚を否定し続けるとはこういうことなんです。
否定し続けられたからだ達は、精神的に病んでしまい、動けるはず
の機能にブロックをかけ、可動域を狭め、痛みの信号を更に強く本
人に送り出すのです。
からだの痛みや、心の辛さを否定したり、逃げるのではなく、敢え
て受け入れ、向き合うことで、先ずからだの声を理解してやること
が、治療における第一歩なのです。

その上で、こんな状態になるまで一所懸命に色々なものから守って
くれたからだを愛おしく、愛でてやることが重要なのです。

我々にとって目に見えなく、効果の最大作用として伝わるものが
『感謝』です。
不思議なもので、声に出さなくても、空間を通してこの、感謝は
伝わってくるのです。あぁ、本当に喜んでもらっているなぁとか、
感謝戴いているなというものは、理屈ではなく本当に肌で感じ取る
ことが出来ます。

本当に自分のからだを”めんこい”と思い、感じ、声に出してやる
ことこそが、最高の治癒力UPの鍵ではないでしょうか?最高の名医
である自分自身は、自分で育てるのです。めんこいと思うだけで良
いのです。

一週間お付き合い戴き有難う御座いました。明日からはお待ちかね、
最高の師匠、三浦寛先生です。