東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「人間の病6」

人と病との相関性を紐解く上で大切なキーワードとなるのが「欲」である。

私が担当する時には毎回書いていることなのだが、人間界だけに存在するこの「欲」こそが病を生み出している一つの要因となっている。

自然界に自在する法則にはあって人間界には存在しないものは「命のつつしみ」である。

自然界はある環境のもとで自ずと適正な規模の数量というのが決められている。動物の数や植物の数は「生と死」によってそれぞれの命の営みに応じた数だけの命が存在する。そういった自然界のルールは命の慎みによってバランスを保ち調和がされてきた。
しかし人間界では「死」という存在に対し背を向け、遠ざけていく事で「生と死」のバランス制御が出来ない状況になってしまっている。それは人間の「生」に対する執着がそうさせたのであり、現在人間が悩まされている病はもしかすると人間の戒めなのかもしれない。

これは「遺伝子」にも証明されている。一部の研究者によると遺伝子には「利己的遺伝子」と「利他的遺伝子」が存在しているという。「利己的遺伝子」とは自分が得をしようという振る舞いを行うもので、「利他的遺伝子」とは死へと誘う遺伝子だと言われている(生命の暗号 村上和雄署)
つまり私達の遺伝子には「生きたい」という意思が存在する一方で「死」というものを必然的に受け入れられる遺伝子も存在するのである。これを踏まえて病気を見ていくと「病とは人間の生命のバランスを維持するために存在するもの」という捉え方も出来る。こういった捉え方をすれば「死」というのは必然的な現象であり決して恐れるものではないと言える。そして病死も人間界が生命の維持バランスを計る人間の生き方の一つの報いになるのではないだろうか?

私も今までは病気に対しては敵対心を持っていたのだが、現在では素直に受け入れるようになった。なぜならば病とは命に対しての「つつしみ」の欠如によって起こることが分かってきたからだ。人間は命は他の命によって「生かされている」のである。それを肝に銘じておかなければ病という形で自分の身に降り掛かってくる。