東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

視覚その4

 佐助担当の6日目です。ブラインドサイトという言葉があります。直訳すると「見えない人の視覚」と訳すことができます。今日はブラインドサイトについて触れてみたいと思います。よろしくお願いします。

全盲の男性が散らかった廊下を歩く動画があります。この男性は「そこには何もない」と伝えられていたにもかかわらず、障害物をかわして進んでいきます。しかも、本人はそこに障害物があったことも自分がそれをよけたことにも気付いていないといいます。

このような視覚障害者の中に、「ブラインドサイト」と呼ばれる特異な能力を発揮する人がいるそうです。

視覚は網膜から視神経まで、光情報の通り道は基本的に直列ですから、網膜や視神経などの視覚経路の末梢側が損傷を受けると、それ以降に光情報が伝達されなくなってしまいます。視神経以降では、光の情報は視覚経路の末梢から脳内の複数の中継核に運ばれて様々な所に伝達され、情報経路が並列化します。3日目のブログにも書きましたが、通常視覚と呼ばれている「意識できる視覚」は、大脳後頭葉皮質の第1次視覚中枢に行く経路によって起こるものです。
視覚野が損傷した場合には意識的に見えているわけではないので、眼で見た情報を覚えておくことはできないと考えられていました。しかし、昨日も書きましたが、視野障害がある場合でも、中脳(上丘)の神経の働きによって無意識に記憶することができることが報告されており、ブラインドサイトで使われる神経回路が研究されています。

脳損傷によって物が見えなくなった状態と機能的に同じかどうかはまだ議論中だそうですが、このブラインドサイトと同じような能力が、一般の健常者にもあるかもしれないとのことです。サブリミナル画像を使って、気付かないほど一瞬の間に画像を示したり、特殊な方法で第一次視覚野の機能を一時的に止めたりすると、何が見えたかわからないのに、示した画像の性質を当てることができるという。これもブラインドサイトと関係があるようです。

我々臨床家は視診の際に、からだを注意深く目視しなくても、直感的にからだの原因部分が直感的に診えるときがあります。これはブラインドサイトとも関係し、本能的(無意識)に中脳(上丘)で診ているのかもしれません。

今日はこのあたりで・・・。ありがとうございました。

2013年7月15日(月)の海の日に、東京千駄ヶ谷 津田ホールにて、操体マンダラ 2013を開催致します。