東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

居つく・居つかない

現在、東京操体法研究会の臨床講座では、伏臥位での足関節の外転、内転の介助法の練習を行っています。
最近の受講生は割と上手くやりますが、私は最初これができませんでした。
私は器用ではないのです。要領よくホイホイできるわけでもありません。
また、それまで自分がやってきた操体と、手首やひねり、皮膚の使い方が違ったからです。
なので、人の足を借りて練習し、一つ一つの動きを分解してやる、ということをやりました。
それから一年後くらいでしょうか。別のタームの講習で足関節の内転外転を練習をした時、何故か突然できてしまったのです。
自分でも「あれれ」と思いましたが、一つできるようになると、他もできるようになってきます。
この時の私の手本は勿論三浦先生でした。「師匠だったらどうやるか」というシミュレーションを常にアタマの中でぐるぐる回していました。
これでできるようになったのだから不思議なものです。

ギターの「Fコードの法則」と「ある日できるの法則」というものがあります。前者の命名は私です。
前者は私がギターの練習をしていた時の経験からです。Fコードというのは、最初音が出ません。指にマメができて皮がむけて、それでもやっていると、ある日、あんなに力を入れても音が鳴らなかったギターが、軽く触れただけで「じゃ〜ん」という音が出る。
その時のショッキングな経験は忘れることができません。練習して練習して練習して、ほっといて、ある日やってみたら出来た、という事実です。
同じようなことを平直行さんは「ある日できるの法則」と呼んでいるのです。
ギターを持ったその日に、いきなりFコードで音が「じゃ〜ん」という音が出たという人もいるかもしれませんが、大抵はマメを作って痛い思いをして覚えるわけです。

足趾の操法の「落とし」。
結構簡単そうに見えるのですが、講習をやると、結構時間がかかったりします。
今やっている足趾の操法の講習でも、ここで少し止まりました。
落としているうちに、指がすべってきて、スピードが加速するとか、被験者に「持っている指が痛い」と言われたり。

「落とすときはすぐ落とすように」とも言われます。これはどういうことかと言うと、「落とすぞ、落とすぞ、落とすぞ〜っ」みたいな感じで、足を持ち上げてから落とすことはしないように、ということです。

操体に限らず、人のからだに触れる際(特に職業的に)には求められることなのでしょう。

以前「これって、確か武術とか柔術方面でこういう言い方あったよなあ」と思い、平直行さん(フォーラム相談役)に「何でしたっけ?」と聞いてみたところ「あ、わかるけど今出てきません(笑)」みたいな感じで二人で「う〜ん」頭をひねったことがありました。

ところがある日「あ、これだ」と目についた言葉がありました。
何年かぶりにすっきりしました(笑)

それは「居つく」「居つかない」という言葉です。

居つくというのは、端的に言えば緊張が抜けていない状態なのだそうです。
からだに余計な緊張がかかっていて、すぐには動けなくなっている状態です。

まさに「落とすぞ、落とすぞ、落とすぞ〜っ!」という状態で、すぐ動けない状態です。

介助補助の練習をする際にも、最初の一手がどうも「居ついている」状況を見ることがあります。

「居つかない」というのは、「今、その瞬間からどの方向にでも動ける状態」ということなのだそうです(柔術関係のサイトで勉強)。

そして「居つかない身体」を目指して練習するのだそうです。