東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

易経

四書五経ってご存じでしょうか?うっすらとは分かると思いますが、
今のように学校が一般的で無かった時代に主に、武家の子息達の
スタンダードな教科書として用いられていたものが、四書五経です。
基本、儒教の教えを説いているもので、テレビの時代劇とかで、
長机に子供たちがズラッと座って「師曰わく〜」で素読をしている
論語などが、その代表でしょうか。

『四書』「大学」「中庸」「論語」「孟子の四書、『五経』
易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」になります。
ここで四書五経の説明をすると、私のボキャブラリーでは解説不能
なので、詳細を知りたい方は個々に自習をどうぞ・・

四書五経は江戸期においての武家の嗜みであり、当たり前の様に当時、
武家のご子息であれば、四書五経は頭の中に入っており、諳んじて言
えたようです。
四書五経では無いですが、私の敬愛する高杉晋作大先生所属の長州藩が、
幕府の攘夷号令の元に下関を通過する外国船に大砲を撃ちかけ、
イギリス、フランス、オランダ、アメリカの四カ国と戦争をしました。

結果は砲台が占領され、実質上負けた形になったのですが、講話条約
調印の際に、下関海峡の外国船通行の自由、石炭・食物・水など外国
船の必要品の売り渡しなど、出された5カ条は何の反対もせずにすべて
受け入れたのですが、ただ一つ、長州藩領土にある彦島の租借に
関しては、何を言われても首を縦に振りませんでした。

諸外国の代表は負けたくせして何を言うか!とかなり強引に交渉して
きたのですが、当時イギリスの上海における植民地政策を渡航した際
に目の当たりにした、高杉は領土は1ミリたりとも、租借しない覚悟でした。
高杉らしいのは、租借しない理由の説明として、『我が国は高天原〜』
に始まり、古事記』『日本書紀を延々と暗誦し出し、長烏帽子に
陣羽織姿で狂気の相にて語る高杉を、四カ国艦隊代表等は、『魔王の如き』
と高杉にビビリ、長州藩彦島の租借を有耶無耶にしてしまいました。

ま、それ位に当時の日本人は四書五経は言うに及ばず、他のジャンルに
おいても知的レベルの高い民族であったと言えます。

私も齢50を前にして、先日より五経の中の易経を学び始めました。
理由は氣學の延長線上に易経があったということもあるのですが、
未だ駆け出しも駆け出しの私ですら、易経の中には大いなる宇宙が存在し、
世の中の全ての事象が凝縮されていることが、うっすらと分かり始めて来
ているからです。

易経などと聞くと、何千年も前の古臭い学問の様に考えがちですが、
有名な話しだと、今の私たちの生活に欠かすことの出来ない、コンピューター
の基礎理論である『二進法』易経からヒント、確信を得ているのです。
ドイツの哲学者で数学者、IQ200以上あったと言われる、稀代の知的巨人と
言われた、ライプニッツは1703年、イエズス会宣教師ブーヴェから、易経
64卦を配列した先天図を送られ、そこに自らが編み出していた2進法の計算術
があることを発見しました。

そして、更に言えば生命の根源であるアデニン(A)、チミン(T)、
グアニン(G)、シトニン(C)といった4種類のDNA塩基配列にも64卦が
キーワードになります。
ご存じの通り、これらの塩基配列が二重らせん構造の梯子になっていて、
組み合わせは各々決まっており、DNAの二本鎖が解けて、RNAに転写されると、
また別の仕組みがあり、最終的な組み合わせが4×4×4=64通りになるという、
易経で言うところの64卦は宇宙の縮図である所以です。

易を端的に表す言葉として言われているのが、『易とは大宇宙と小宇宙を一貫
する”道”を明らかにする哲学』
と言われています。
儒教の創始者である孔子も晩年、易を研究し、自身のレーベンステーマ
として、片時も易経の本を離さなかったようです。
又、心理学者として高名なユングシンクロニシティ(偶然の一致)』
ベースになっているのは易経だったのです。
易は儒教経典の中でも珍しい、宇宙論的哲学』であり、その後におきる朱子学
に大きな影響を及ぼしています。

易経は全部で64の卦で構成されています。
「卦(か)」というのはある時の様相をあらわし、人生で遭遇するであろう、
あらゆる場面をその64の卦で示しています。
太極から陰陽2つにわかれ、次に4つ象(老陽・少陽・老陰・少陰)にわかれ、
更に分裂して3本の爻(こう)からなる8種類の象(8卦)になります。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」というのはここから来ています。

この八卦『乾(けん)・兌(だ)・離(り)・震(しん)・巽(そん)・
坎(かん)・艮(ごん)・坤(こん)』
という名前が付いており、
これら各々の性質を地球上の自然現象に当てはめ『天(てん)・沢(たく)
・火(か)・雷(らい)・風(ふう)・水(すい)・山(さん)・地(ち)』

となり、自然現象で言えば、天(てん)で始まり、地(ち)で終わる構成と
なっており、八卦で言えば天は乾(けん)にあたり、地は坤(こん)にあたります。

2つを併せて『乾坤(けんこん)』でそのまま天地の意味になります。
運を天に任せ一世一代の大勝負に出ることを『乾坤一擲(こんこんいってき)』
と言いますが、一擲はサイコロを投げるの意味ですので、この様に故事成語
には易経や氣學から来たものが多く見られます。

基本、『略筮法(りゃくぜいほう)』と言われる方法で卦をたてるのですが、
これが本当に不思議です〜。
卦は道具を選ばない様なので、ふざけた私の筮竹はバーベキュー串ですし。
不思議なのは、卦は64通り有る筈なのですが、内容の違うことで卦をたてても、
同じ卦が出続けることがあり、先日、先生に伺うと、宇宙の意志としてクリア
しなければならないテーマがあるときはそれが卦にも反映されるとのこと。

卦の内容は微妙なのでご公表は致しませんが、そこかぁ〜と妙に納得しつつ、
それをクリアするためには何をすれば良いのかが私のこれからのテーマだな
と感じております。
易経帝王学の書』とか、『智慧の書』と呼ばれてもおり、「君子占わず」
という言葉があります。
これは、荀子「よく易を修める者は占わず」といったことに由来しています。
よく易を学んだならば、占わなくても先々を知り、行動の出処進退を判断する
ことが出来るという意味だそうです。

易経は、時について説き、兆しについて言及している書物です。物事が動く
微かな兆しを示すだけではなく、如何にすれば禍(わざわい)を避け得るかが、
そこには書いてあります。
学ぶことによって、時の変化を知り、禍の兆しを察し、未然にそれを避ける、
世界中の多くの経営者達によって指示されているのがよく分かります。

混迷の時代だからこそ、今を読み先を読んで行くことが、重要な要素と感じます。
”転ばぬ先の杖”と言うよりは、『進んでいくための翼』と私自身は易経を捉えています。