勉強するとき、独りの時間を過ごすとき、最近はもっぱらコーヒーを飲んでいる。
以前はブラック派だったのが、日に何杯か口にするようになり、ミルクを入れるようになった。
朝のぼんやりとしたひととき。
コーヒーにミルクを入れ、スプーンでかきまぜる。
ある朝、あまりにぼんやりしすぎて、ミルクを入れてからしばらくぽかーんとしてしまう。
朝の新鮮な日差しが入り込んでいる。静かなひととき。
ふと、放置していたコーヒーを見ると、ミルクがくるくると渦を巻いている。
混ぜなくても勝手にミルクはコーヒーと溶け込む。当たり前のことだよなぁと思って見ている。
とは言いつつも、その渦の感じ。
お?
当たり前だと思って漫然と見ていたけれど、なんだか面白く見えてくる。
コーヒーの水面には次々に底の方からミルクが湧いてくる。
それが大小さまざまな螺旋を描き、それぞれのスピードでくるくるしている。
勝手な動きのように見えて、見えない歯車がかみ合っているように。
全体一体の流れのごとく刻々と変化している。繊細でダイナミック。
昔、美術の授業で習ったマーブリングのようなミルクの動態。
なんとなく「脳の皺」のようにも見えてくる。
あぁそういえば、脳のあの「皺」も熱対流が原動力になってできあがるという説を聞いたことがあった。
ミルクの渦と脳の皺。まさに宇宙の神秘。
そんな風に、ちょっと感動を味わった後、「ではそろそろ飲もうかな」と思った時。
「水面下」に揺らめいているものを発見する。
ずっとコーヒーの水面ばかり見ていたけれど、カップの中の目に見えない底の世界にも流れがあることを知る。
ここにも渦があったのか。しかもこっちのはだいぶ立体的。
この見えない流れがあって、水面の渦が見せてくれる世界があるのか。
水面の渦は「氷山の一角」。
コーヒー然り、裏側の世界にはさらなる神秘が隠されていることをここでも思い知る。
コーヒーの世界では、わざわざかき混ぜなくても、ミルクとコーヒーはゆったりと調和していく。
飲む人はミルクを入れただけだ。
からだの世界でもそう。「からだ」と「快」が出会うきっかけを演出することだけ。
あとはからだにおまかせすること。
そうは言いながら、からだを前に「必要以上」のこと。
例えば、スプーンでかき混ぜる様なことを自分はしていないだろうか。
コーヒーとミルクが描くのびのびした螺旋の渦が、一際美しく見える。