東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

脱デフレ

『安く物を作って安く売る!』今では当たり前の様に感じますが、
20年近く日本企業が”デフレ”対応型経営として身に付けてきた
手法です。
現状、アベノミクスで利益を上げている大多数の大手メーカーは、
その殆どが現地生産へとシフトし、今後、日本から海外輸出する
メーカーは激減すると言われています。

更に中小・零細企業に関しては円安影響をまともに受け、原材料
の高騰と円安のダブルパンチで、もはや何のために仕事をしてい
るのか分からない状況となっています。
一例として、うどんチェーン店を経営するはなまるうどん
昨年、「かけうどん(小)」の税込価格が105円から130円に上が
りました。値上げの原因は2008年以降の輸入小麦の価格上昇とや
はり円安が要因と言われています。

ですが、牛丼も含めた大多数の店舗の売りは”低価格戦略であり、
値上げに関しては、社内的にも反対派と推進派に分かれる位、難し
い状況になっているようです。

どちらかと言うと外食が殆ど無い私としては、牛丼が幾らになろうと、
うどんが高くなっても別に生活の痛手はありません。
ま、確かに増税後、エンゲル係数の高い”糖質制限食”を行っている
身としては、ほぼ100%輸入品であるナッツ類の値段が上がったのは
痛いですが、死活問題ほどではありません。

しかし、何でもそうですが、本当に安くないと人は物やサービスを
買わないのでしょうか?確かに適正価格ってものはあるでしょうが、
人は『コストパフォーマンス』だけが購入動機では無いのです。

例えば、『付加価値』といった面で言えば、”ダイソン”なんて分
かり易いかもしれません。キャニスター型と言われる「DC63・48」
いったタイプでは90,000円台前半の金額が付き、今人気のコードレス
タイプにしても70,000円台と、他の国産掃除機メーカー(平均2万〜3万円)
と比較して考えると、倍近い金額の差があります。
この価格差はマレーシア工場で働く約1500人の従業員達の『ハンドメイド』
であるということ、それも昔ながらの手法です。あのデザイン性が高い
複雑な形状の商品は大量生産に向いていないのと、改善点が見つかる度に
ICチップや形状変更が頻繁に行われる中で、柔軟に対応出来る手作業が
向いているのだそうです。この辺りは研究開発費に莫大な金額を投入し
ている『ルンバ』とよく似ていると思います。

私は車には乗りますが、残念ながらバイクとの縁は余りなく、春や秋に
颯爽とバイクをかっ飛ばすバイカーを見ると良いなぁ〜などと眺めてし
まうことがあります。そんなバイクメーカーの中で、一時期、低価格
で品質の良い日本製バイクに押されて存続の危機に陥ったメーカーが
ありました。
それが、かの有名なハーレーダビッドソンです。
1970年代の大変な時期にハーレーが打ち出した戦略が、『H.O.G(ハー
レーオーナズグループ)』
です。

これは、ハーレーが重視するのは既存客を含めたファン作りに特化し、
ファンの集いやツーリングなどのオーナーズグループの活動に多くの
予算を割いているということです。テレビCMなどメディアを使った不特
定多数への販促費使用をせず、あくまでもハーレーを愛してくれるコア
なファンに集中投下するという徹底した方針です。このオーナーズグル
ープの規模は現在、世界131カ国、90万人に上るのだそうです。

2014年のハーレー目玉商品は”トライグライドウルトラ”という三輪
自動車で販売価格は約400万円、今年二月に日本上陸したそうですが、
僅か二ヶ月で初回出荷分をほぼ完売したそうです。
ん〜、さすがコアなマニアって感じです。

そしてパンマニアの私が一度は食べてみたいと思っているのが、一本(三斤)
で3,143円
という相場の三倍はする高価格食パンを販売するメーカー
があります。
株式会社イコールコンディション(世田谷区)のインターネット通販
専門のパン店ルセットです。販売は完全予約制、毎日100本限定で
パンを焼くとのこと。食パン以外もベーグルなど色々有りますが、
一ヶ月先はほぼ予約で一杯。

こだわりが強く、小麦、水、天然酵母の質は勿論、通常の五倍近く
かけて発酵させ、工房の中ではモーツアルトを流し、空気清浄機で
清潔な空気を保ち、酵母菌の住みやすい環境を整えているそうです。
そして男女の手の温度の違いも考えて、パン作りのスタッフ五人は
全て女性だそうです。
このようにコモディティー化(一般化)された商品を高付加価値で
売ることは究極の”脱デフレ”ビジネスと言えると思います。

一方で我々の業界でも60分3,000円弱で施術を行う店舗なども
沢山あります。何故、金額を下げるのか?理由は色々有るでしょう。
競合相手が周囲に多いから他店より安くすることで集客を増やす
とか、相場が大体これ位だから相場に合わそう等々、理由は様々です。

私たち臨生家は時間幾らの概念が薄く、どちらかと言うと、クライ
アントの身体がききわければ目安にしている時間より早く終わるこ
ともあるでしょうし、あるときは時間オーバーしても終われないと
きもあります。

体感覚は『一期一会』の世界であり、その時のそのタイミングでな
いと身体が変われないタイミングも存在するのです。今日はこれ位
でとか、この程度などと言った曖昧なことでは、次の波が来るまで
数ヶ月かかってしまうこともあるかもしれません。だからこそ面白
さも怖さもあります。

そう考えると適正価格は自らの思いに比例すると言ってもいいかも
しれません。脱デフレとは大きくズレそうですが、私は自分自身の
思いを安売りするつもりもありません。

ある方に、師匠より高い金額設定をすることが一番の師匠孝行だと
言われたことがあります。君は師匠から安売りしなければ売れない
様なモノを教えてもらったのか?そうではないと思うのなら、師匠
よりも高い金額を設定しなさいと。
それが最高の恩返しでありリスペクトだよと。

脱デフレとは自分自身への値決めでもあり、自分がやっていること
への最高の自負だと感じます。

そう言いつつも4月から恐縮しつつ1,000円値上げした私でした・・
スイマセンビビリで。。