東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

現成公案

タイトルの『現成公案』を見てムムムと思った方はかなりのマニア
か、曹洞宗関係者かと思います・・・
現成公案は道元の大作95巻からなる正法眼蔵の中でも非常に重
要視され、現成公案こそが正法眼蔵の総論であり、最高のエッセン
スとも言われています。

あまり深く書き出すとボロが出るので、私の心に響き生き方を考え
るヒントになった現成公案の中の一節があります。
『魚の水を行くに、行けども水の際なく、鳥空を飛ぶに、飛ぶとい
えども空の際なし。しかあれども、魚鳥、いまだ昔より水空を離れ
ず』
正法眼蔵3巻)
この一節が私の心を鷲掴みにしました。

この部分だけを抜き出して説明するのに無理があるのは重々承知で
すが、文章自体は要約すれば「魚が水の中を泳ぐとき、いくら泳い
でも果てはない。鳥が空を飛ぶとき、いくら飛んでも空には果ては
無い。それなのに、魚も鳥も、いまだかって水や空を離れたことは
ない。」という感じになります。

これだけでは何となく言っている内容は分かりますが、私が分かる
レベルでは無い本質部分が必ずあるはずですが、所詮素人にはそこまでです。

私はものの学びで一番大切なのは誰から教えを請い、教え
を請う相手を見誤らない目を持つ事だと感じています。
どんな師匠に付くかによって、大いなる学びが待っているのか?
はたまた、世界が小さくなるのか?運もありますが、日頃の行い
も含めた、人を見る目を養うのって大事です。。

またまた、話逸れましたが、同じ一文を解説しても文字面だけを見
て通り一遍の解説だけであったなら、分かったつもり、その行間に
ある本質を見極められるかどうかが、名人と凡人の違いと思っています。

この現成公案は村山幸徳先生の『仏教塾』に参加させて戴いた際に
話された一説でした。まぁ元々が宗教家の側面もお持ちですので、
造詣が深いのは当たり前なのですが、毎回、村山先生の解説には驚
きを飛び越えて口があんぐりと開いてしまうインパクトがあります。

この現成公案の一節は道元による大いなる『進化論』だと解説されました。
進化論を間違った解釈をしてはいけないと。
一般的に言われている進化論は、弱いものが淘汰され強いものが最
後残っていって進化を遂げたと、言われています。

しかし、この道元の一説は進化論の一端があると言われます。
水には際限が無いのに魚は水から出ようとしない、空にも限界が無い
のに鳥は空を飛ぶのを止めようとしない。ここに進化論の真実が有る
と言われます。

ここから読み解ける進化論とは勝者の法則ではなく、敗者の法則だと。
海に棲んでいたが自分より大きな魚などに食べられてしまうから、海
に居られなくなった者が、川にのぼり、更に川でワニやら水辺の強者
に追いやられたものが足を持って地上に上がり、地上で肉食動物に追
われたものが、空中に逃げて進化を遂げていったという弱者の進化が
進化論の本質だとの話しでした。

そして、道元が言いたかったのは、人間が進化を遂げる時にには必ず
困難さを伴うということ、困難が訪れたときこそ寧ろ進化のチャンス
なんだと言います。
困難さを伴わない進化はあり得ないと。

とかく我々は困難なことが訪れると、尻込みしたり、避けたくなって
しまいますが、進化のチャンスが困難さに有るというのは何だか楽に
なった気がしました。この現成公案の一節を聞いてから、困難なこと
が来ると何だか嬉しくなる様になりました。お!又、進化するぞ!チャンスが来てる。。

『楽は苦の種苦は楽の種』理屈では分かっていた諺も真意が分かると
何だか味わい深くなるものです。
ピンチは進化・・何だかラップ調だなぁ〜