東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

五感

人間の治癒力とは不思議なもので、何で症状が緩和するのか?何故
病気が治るのかは本当のところは多分誰にも説明は出来ないでしょう。
現代医科学では様々なデータを挙げてこの部分がこう良くなったから、
結果、治ったんですなどとまことしやかに説明付けています。

私も曲がり形にも臨床家として数十年が経過し、様々な身体が変化す
る瞬間に遭遇することが出来ました。良くなっていく過程をみること
も大いなる楽しみなのですが、ここだ!とまさに身体の方向性が一気
に変化し、動き出す瞬間に立ち会えるのはこの仕事の醍醐味とも言える。

人間の身体や意識が大きく動き出す瞬間や切っ掛けは、やはり『五感』
の変化です。人間にはご存じの通り『嗅覚、触覚、聴覚、味覚、視覚』
といった五感とスピリチュアルな部分があります。

クライアントは様々な症状疾患を抱えてやって来ます。ここ最近、と
言っても数年ですが、明らかに物理的破壊が原因で来所される方は減
少しています。
原因の殆どは生活習慣、主にどの様な業務に従事されているかによって
7割方特性がハッキリします。
但し、特性がいくら分かっても、その方が改善方向へと向かうかどうかは、
その方が持つ治癒力がどれだけ発動するかが鍵であり、自然治癒力の高
まり無しに改善は見込めません。

自然治癒力という元々、誰しもが備わっているのに、その力が明らかに
落ちているから、身体の状態がベストではないのです。
この自然治癒力発動の鍵こそが、『五感(六感)』なのです。

面白いことにこの鍵は人によって違うのです、私たちはクライアント
が、どの鍵穴を持っているのかを見極めながら、様々なアプローチを
重ね、改善方向へと導いていくのです。
操体の臨床・・と言うよりも『渦状波(かじょうは)』を使った施術を
行っているとその様な場面に日々出会います。
その場面こそが、渦状波によって導き出された様々な治癒力高まりの兆しです

『ムムム・・・鼻の奥で草の匂いがします。。子供の頃、河原の土手で同じ匂いを
嗅いだ気がします・・』
『何だか身体の中を血液とは違うリズムで何かが流れます・・』
『夢か起きているのか分からない中で、遠くで誰かが読んでいるんです・・』
『色んな色が目の前に顕れては拡がります。。色が変化します・・万華鏡みたいで楽しいです♪』
『悲しくないのに涙が出るんです・・何でですか?』

渦状波ほど臨床を行っていて面白味を感じるものはありません。渦
状波の特徴はどちらかと言いますと、他人には分かり難い、内部感覚
での対話になるのですが、一応、ご本人の許可を得て、臨床中の動画
を撮らせて戴いた方が居ます。

この女性は来所戴く様になって五年以上になりますが、来所当初は事故後
15年経過してから突如あらわれた重度の『頸椎捻挫(ムチ打ち症)』に苦
しめられていました。目を動かしても頚に響き、生活に支障どころか途方
に暮れていたと、当時話されていました。
渦状波の五感の『動』部分は自動運動が発生したり、身体の一部が動き出
したりと、よく見る光景ですが、この方は身体や心のストレスをそのまま
動きで表現するタイプの方です。

この方の施術は私は最初の切っ掛け作りだけすれば、後は一切触れる
ことはありません。
後は決まって一時間動きを通して、計った様にピタリと終了致します。
その動きも本人が動画を撮って下さい!と言われる位に予想不可能で、
施術室全体を縦横無尽に使いながらの調整となります・・・
これだけを見るとやらせの様に見えますが、軽量の女性がV字腹筋状態で笑
いながら会話をするのは、筋力を使っても大変な作業です。
無意識の内部感覚は筋力を越えた何かを感じさせます。

渦状波の顕現期はこの様に様々な現象によってターニングポイント
を迎えます。顕現期は個人差がありますので、初回の施術からガン
ガン反応が出る方も居れば、数回回数を重ねながら学習を重ねて行
く方も居ます。

いずれにしいても、身体とは学習が大切なのです。何故なら、本来
持っている自然治癒力が忘れられているのなら、思い出す必要があ
るからなのです。

そのために重要なのはクライアント自身の内部対話です。この内部
対話こそが五感との会話です。五感と響き合い、共鳴すると身体は
必ずリアクションを起こします。それが、様々な予備感覚であり、
体感覚です。

私たち操者はその五感との会話を繋げるナビゲーターであり、クラ
イアントに充分な治癒力をどう引き出してもらうか、まさに静かな
る汗です。
『静と動のバランス』それが今の私が感じる操体臨床の魅力です。

今週一週間本当に有難う御座いました。
明日からはお待ちかね、三浦先生の順番です、お楽しみに!