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東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

病気と心とからだの歪み⑦

昨日のつづき

 生体機能がサーカディアンリズムやインフラディアンリズムにのっているということは、我々の精神的な働きや肉体的な働きには、最も強い時期と最も弱い時期があることを意味している。そうであれば、日常生活であらゆる種類のストレスに対して我々が反応する仕方も、これによって当然微妙な影響を受けることになる。毎日、毎週、毎月、我々はいつもより強かったり、理解力や忍耐力が旺盛だったりする時期が、それぞれの期間の中にあるというわけだ。それは免疫力すらも例外ではない。また、薬物の毒性にもリズムがあって、ごくありふれた薬についても投与のタイミングによってはよく効いたり、反対に害になったりする違った結果をしばしば生むことになる。月経異常、高血圧、胃潰瘍鬱病、その他多くのよく知られた肉体的、精神的病気が、生体機能の変化と関連した周期的な現象によって影響を受けていることがわかってきている。

 現代科学の研究の中で最も魅力的なものは、生物学的なリズム現象に何らかの役割を演じているという「松果腺」の研究ではないかと私は思っている。松果腺というのは、左右大脳半球の中央奥深くに位置した小さな松の実状の形のもので、交感神経線維を伴っている。この松果腺は、東洋の瞑想の現代的な解説の中でしばしば引き合いに出される。というのも、とりわけヨーガや禅で深い瞑想状態に入ると、「心の目」または「第三の目」といわれるもののイメージが額の上の、眉間のあたりにありありと映じてくるのであるが、この「目」の実体がひょっとするとこの松果腺ではないかというわけである。この「心の目」のことについては、ヨーガの古典『ヴァガヴァド・ギータ』にも、そしてキリスト教の聖書では『マタイ伝六章二十二節』にも「からだのあかりは目である。それで、もしあなたの目が健全なら、あなたの全身が明るい」というように記されている。

 この松果腺の生物学的機能については、まだ正確にはわかっていない。西洋の科学が現時点で言えることは、松果腺は一種の生物時計としての働きをもっており、おそらく視神経と交感神経を通じて明暗の変化によってコントロールされるのだろうということである。この生物学的リズム性の発見により、西洋科学は時代を超えて、古代インドの考えに到達したのである。インドの古典哲学であるヴェーダの概念の中には、創造の相対的世界の二元性があり、マーヤとカルマの法則で表現されているが、これがまさに現代の考え方と通じているのである。

 西洋医学が、人間の不幸を直視して、現実的に取り扱うべくあらゆる試みを行なっている点は、正当に評価すべきである。ところが、健康とか病気の問題を、単に肉体的な見地からのみ解決しようとしている点では、西洋医学は間違いをやっていると言わざるを得ない。保健科学が、たとえ心理学的なアプローチをとったとしても、肉体の物質的な改善のみを考えているかぎり、人の一生を幸せにするという崇高な目標に対しては何の援助も指導も出来ずに失敗するだろう。なぜなら「魂」と「心」と「肉体」との三つからなっている人間の全体像を無視しているからである。この基本的な誤りの故に、ある一定の治療限界を越えようとする臨床的なアプローチはその大部分が失敗してしまうことになろう。あるいは少なくとも、実験室の中での研究段階では成功の見込みを謳われていたことが、実際においてはあまりその通りになっていないとだけは言えるだろう。

 臨床医にしてみても、自然の法則に外れない範囲で治療の仕事を進めている限りは成功するだろうが、ひとたび自然のメカニズムを無視して治療行為を先走らせようとするならば、臨床医はその対象となる生体からさまざまな反応をつきつけられることになる。それは、自然の法則を犯すようなすべての行為に対する抵抗を意味している。それは何を言いたいのかというと、他人のからだからとってきた臓器を患者のからだに移植するような医療は感心できないということだ。その理由は、個体の生物学的な同一性を侵害するものとして、外来の臓器を拒絶し破壊しようとする自己防衛反応がからだの細胞組織に直ちに働きだすからである。

 たとえば腎臓移植における成功例が最近では九〇%以上におよんでいることは確かに事実ではあるが、これは手術後死ぬまでステロイドホルモンを投与し続けることによってからだの自己防衛機構を抑制しておくことを前提にした、人工的な方法による達成のデータである。このように生体の防衛機構を抑制し続けるということは、あらゆる病原菌からの感染、内分泌異常、代謝異常、心理的不適応等多くの危険に患者をさらすことになる。こうした事態は、臓器移植を扱っている世界中の医療センターが急速に気づいてきていることである。

 健康科学が近い将来ぜひ実現すべきことは、現在我々がもっている科学技術と人間の全体像に対する深い理解とを結びつけることである。それによって、健康問題に対し真の、永続的な貢献をすることができるように思う。それだからこそ自然の法則に適った操体流の生き方が基本的に志向しているのは、苦痛や病気から脱してより健康な、より喜ばしい生活次元へとのぼってゆく技術を、からだの使い方、動かし方をはじめとする生活習慣を通して教えることにある。

今回は少しネガティヴ思考に偏った内容となってしまったが、明日からはポジティヴ派の香実行委員が担当します、お愉しみに!


「2014年秋季東京操体フォーラム」 開催決定
今回は11月22日(土)23日(日)の二日間開催いたします。
メインテーマは「操体進化論」です。
特に、22日は場所の都合上、人数が限られておりますので
ご参加希望の場合はお早めにお申し込み下さい。
詳細は以下、「東京操体フォーラムHP」をご確認ください。
http://www.tokyo-sotai.com/?p=813