東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

黄泉比良坂(よもつひらさか)

出雲シリーズ(笑)最終日は子供の頃に聞いてトラウマになりそう
だった『黄泉比良坂(よもつひらさか)』をご紹介致します。

既に出雲シリーズと言いながら、この場所は出雲は出雲でも東出雲
という、松江市になりますが、神話の世界を語るに当たって重要な
ポイントであり、あの世とこの世を繋ぐとても大切な場所なのです。

私、別名福田トラベルとも呼ばれていて、他府県からお客様がいらっ
しゃると、島根の観光名所を色々とお連れ致しております。
その際には松江城やら出雲大社といったスタンダードコースから、
マニアックな『八雲風穴』や『稲田神社』など、色々とご紹介して
おりますが、唯一、どなたもお連れしていないのが、この『黄泉比良坂』です。

この場所、駐車場もあり、分かり難いながら看板もあるのですが、
何だか気が重いのです。。夜に行くのはトンでも無く、昼に行っても
何だか薄暗い感満載で、空気の流れが場所によってヌルくなったり、
ヒヤッとなったり、どうにもこうにも説明しにくい雰囲気で充満しているのです。

黄泉比良坂は記紀”日本誕生神話”に出て来る非常に重要な話しと場所です。
国生みの話に出て来る、男神伊弉諾尊イザナギノミコト)』女神
伊邪那美命イザナミノミコト)』
はオノコロ島立って、『淡路、四国、
隠岐、九州、壱岐対馬佐渡、本州』
いわゆる大八洲(おおやしま)の
国土を二人で作られました。

その次に、その国に住む様々な神々をお生みになり、最後に火の神
をお生みになったが、この時にイザナミは女陰を焼かれて亡くなっ
てしまわれました。
悲しみに暮れたイザナギは亡くなったイザナミに会いたくて、後を
追いかけて『黄泉の国(よみのくに)』へ行きました。

ってこの後延々と話しが続くので、少々すっ飛ばしますが、亡くなっ
イザナミに会いに行ったイザナギだったのですが、既に黄泉の国の
食べ物を食べてしまったイザナミは黄泉の国の神と相談するから、
話しが済むまで私の姿は見ないでねって、鶴の恩返し的アプローチをして来ました。

暫し待っていたのですが、痺れを切らしたイザナギは約束を破って
覗いてみると・・そこには体中にウジのわいたイザナミの身体が横た
わっており、身体の八ヶ所には雷(いかずち)が生まれたふた目と
見られぬ酷い姿だったそうです。

ムムム・・今で言えば朝起きたときに隣で寝ている彼女が化粧が落ち
て別人の様だった的驚きでしょうか。。

ま、驚いたイザナギは恐ろしくなって黄泉の国からスタコラサッサ
と逃げ出しました。ところが、あれだけ見てはいけないと言ってい
た恥ずかしい姿を見られてしまったイザナミは怒り心頭!逃げる
イザナギに対して、黄泉の国の黄泉醜女(よもつしこめ)軍団を総
動員して追いかけさせました。
今で言えばゾンビ軍団に追いかけられるバイオハザード状態ってことで・・

追われたイザナギは髪の飾りにしていた木の蔓(かずら)を投げつ
けたら、ブドウがなったり、櫛の歯を折って投げたらタケノコが生えました。
醜女たちがそれを食べている間に逃げられたが、終いには黄泉の軍
団を総動員して来たので、最後に桃の実を投げつけて何とか振り切りました。

そして最後の最後でイザナミに追いつかれたので、黄泉比良坂にあった、
大きな岩で道をふさいでしまいました。
ここにあの世とこの世の境が出来たわけです。

そして怒り心頭のイザナミ『あなたがこんなことをしたからには、
これから後、あなたの国の人間を毎日1,000人ずつ殺す!』
と言いました。
その言葉を受けイザナギ『お前がそんなことをするなら私は毎日1,500人の
産屋(うぶや)を建ててみせる!』
と宣言され、ここから日本の人口が増えたと言われています。

ムムム・・神話ながら微妙に胸に突き刺さる展開に男性諸氏は身が引き
締まる思いでしょう。。
古事記には『そのいわゆる黄泉比良坂は、今の出雲之国の伊賦夜坂
(いふやざか)である』
と記されています。島根県東部に位置する
東出雲町揖屋(いや)平賀(ひらか)地区には今でも伊賦夜坂あり、
「平賀」という名称も「比良坂」が変化したと言われています。

又、イザナミが黄泉の国に隠れた後を付けて通った谷を『つけ谷』
呼びますが、今の伊賦夜坂入り口も揖屋附谷(いやつけだに)地区に
あり、他にも名残ある地名が多数あります。

イザナギは黄泉の国から帰った後、筑紫の国の阿波岐原(あわぎはら)
で禊ぎ祓いをして、その時に左目を洗うと太陽神である天照が、右目を
洗うと夜の神である月読命ツクヨミノミコト)
が、鼻を洗うと素戔嗚
が生まれました。
神話の中で『三貴子(みはしらのうづのみこ)』と呼ばれるキーパーソン
がこの時に誕生したのです。

今回、六日間に渉り私の住む出雲地方にまつわる諸々の話しを書き
ましたが、島根って地名そのものが、黄泉の国を意味する『根の国』
から来ているという説も有ります。
出雲という国は、神代とあの世を繋ぐ不思議な場所でもあり、
秋季フォーラムでも話があったように、様々な宗教家が得も知れぬ
大いなる波動を感じ、訪れています。

大和朝廷にとって出雲族は脅威の存在でもあり、死者を甦らすほどの
力を持った一団もあったと言われています。
その不思議な手技を畏れ、手首を切断し全国各地へと放逐したとも言います。

その不思議な力を生んだのは土地なのか?種族なのか?未だ未だ研究
すべきテーマが古代出雲にはたくさん詰まっています。
究極の治療とは『場』であり『人』であり、その両方を手に入れたもの
が為し得る境地だと思います。

ムムム・・古代史もチョットかじってみたくなった私でした。。