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東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

歪み③

 

 昨日のつづき

 

 ヒトのからだが歪むのは、てっぺんに乗っかっている頭の重さが一番の弱点であるとすでに述べた。  そしてそれを支えるのが、柔軟性のある背骨であるということも。

 

 そもそも頭の重量はできるだけ背骨が背負ってくれるのが、からだはいちばん楽ができる。 静止状態なら、背骨の上に頭がバランス良くのっていれば問題ない。 しかし、動物である限り、常に動きによって体勢は変化するので、常に背骨に頭の重量を背負ってもらうためには、その変化に応じて背骨を対応させなければならない。

 

 そのような頭の重量を支える背骨の状態をより良く保つためには、首の位置がとても重要な意味を持つことになる。 まず、頭の重心であるが、頭蓋骨底部の大後頭孔という穴に頸椎が差し込まれるようにつながっており、この穴の位置で頭蓋が支えられている。 しかし、この大後頭孔という穴と頭の重心とが一致しないのである。 それが一番の問題だ。

 

 人類進化の過程で、直立二足形態を選択したヒトの脳の進化においては、前頭葉に凄まじい発達があり、それは前方向へと成長していった。 その結果、頭の重心は頭の重みを支えるはずの頸椎より前、つまり、頭蓋の大後頭孔より前に移動してしまった。 別の言い方をすると、頭は重いのに、それを支える頸椎は、中央ではなく、その後方に位置する。 だから顎は、年齢とともに前に突き出て、それが頸椎を歪めることになるのだ。 こうなると、頭の重みを背骨に負担させることはできなくなってしまい、首や肩の筋肉を硬くする、すなわち首凝り、肩凝りによって支えるようになる。

 

 この理論をヒトにおける構造運動力学的に考えれば、頭の重心が背骨を通るようにすれば良いということになるから、頭の重心を前から後ろに移動することで問題は解決するはずだ。 ではどのように重心を移動させるのか。 ここで首の位置が重要視される、 その首の位置によって逆に背骨の状態が決まってくることにもなる。

 

 自然な首の位置というのは坐禅で教えるように、「鼻は臍に、耳は肩に」である。 これは道元禅師の言葉であり、 正面から見たときには、鼻は正中線上の臍からまっすぐ上に、側面から見たときは、耳が肩の上に位置するように坐るということだ。 それは頸椎の湾曲を説明したもので、首全体を後ろに移動させることであり、それには頭の重さを使って、後ろ寄りに頭を傾けてから少しアゴを引くようにして、背筋ではなく、うなじを伸ばし、頭の重みを背骨にのせて重心軸をつくることなのである。

 

 頭の重量によって首の位置を後ろに移動することで、それまで前屈気味であった背骨が後ろへ伸びながら立ち上がってくる。 こうして上半身は十分に伸ばされ、頭と背骨のバランスが後ろに寄り過ぎないよう、ここで腹筋がリミッターとして働き、背骨の自然な湾曲が作られるのである。 特に肩甲骨の間にある胸椎は後ろへ出っ張りやすく、猫背の原因となるものだが、首を後ろへ移動することによって頸椎が立ち、猫背は軽減されることになる。

 

 理論的にはそのように納得できるのではあるが、すでにからだの歪みを抱えている多くの人は、首全体の位置を後ろに移動させても、背骨の上に頭がバランス良くのせることは多分難しいことだろう。 何故なら歪みのある人は、肩こりや首の痛みを訴えていることが多く、それは首の筋肉が凝って硬くなっており、また背中の筋肉もやはり硬くなっている。 その硬くなった筋肉が首を根元から前方へずれさせているために、頭の重心を背骨の上にのせるような状態へ首をもっていけないからである。

 

 しかし、頭の重心が背骨にのっていないと、からだの動きによって頭も揺れ動くことになるが、頭には脳が納められており、その脳は非常に揺れに弱いことがわかっている。 そこで頭の揺れを止めるために、首や肩の筋肉を凝らせて硬くし、首の自由を制限して揺れを止めているわけだ。 すなわち首や肩が硬くなることそのものが脳自らのなせる業なのである。

 

明日につづく