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東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

歪み⑦

日下和夫(くさかかずお)

昨日のつづき

 

 「立つことと歩くこと」 は、ヒトにとって最も基本的な動作であると最初の日に述べている。 そして昨日まで、主に「立つこと」の姿勢について話を進めてきた。 最終日の今日は 「歩くこと」 、ウォーキングについて考察を試みる。 

 

 歩くことに類似している足踏みというのは、膝を曲げて足の裏を上げ、膝を伸ばして足を着地させることである。 この場合、足音は盛大であるが、足踏みだけでは前に進むことはできない。 実は姿勢が悪い人の歩き方というのは、この足踏みに近い状態なのである。 そういう姿勢の悪い人がミュールを履いてコンビニの店内を歩いたら、店中に盛大な足音を響かせてしまうことになる。 これは誰もがよく経験する光景だ。

 

 歩行速度についてはピッチとスライドで決まるのであるが、ピッチが同じならなるべく大きなスライド、つまり歩幅を大きくしなければならない。 そのためには大きく踏み出して、引き足をできる限り大きくすれば良いということになる。 しかし、大きく踏み出してしまうと、足がつんのめって制動効果が働く。 つまり前進歩行にブレーキがかかってしまうことになる。 ということは、歩幅は後ろで稼ぐしかないということだ。

 

 さて、我々人類も、元をたどれば進化の段階では四足歩行だった時期もあるので、ともすればからだが後戻りしようとしかねない。 ヒトの膝は筋肉でテンションをかけておかないと伸びきらないことも、前方に位置した重心を支えるために曲げていた四足歩行動物の後ろ足がルーツになっているからかも知れない。 

 

 それよりも、直立したことによって、ヒトの股関節ほど可動域の変化を強いられた関節はほかにない。 このためか、股関節を放置していると、後ろへの可動域が徐々に減少していく傾向が強い。 だから、ウォーキング、「歩くこと」における意義は、この股関節の後ろへの可動域を減らさないという意味もかなり大きいはずである。

 

 そのような理由もあり、歩くときには引き足を十分に引くことを常に心がけ、後ろで歩幅を稼ぐようにする。 もちろん膝は伸ばしきってから蹴り足に転じることになる。 さて、問題は引き足を前に蹴りだす時、多くの人が、引き足の膝を曲げて前方へ蹴りだし、膝を伸ばしながら足を着地させるのが歩くということだと誤解している。 そもそも、前方への歩幅そのものが歩行のブレーキになりかねない。 そこへ膝を伸ばすという動作を加えると、さらに制動効果を強くしてしまうことになる。

 

 歩行の制動作用を考えれば、前方へのストライドは小さくすべきなので、左右の脚を交差させた途端に膝を伸ばして着地させなければならなくなる。 これでは効率の良い歩き方であるとは決して言えない。 つまり膝を曲げて蹴りだすのは、膝の曲げ伸ばしそのものが無駄であるばかりではなく、さらにそれが制動効果を強くしてしまうからだ。 

 

 かといって膝を伸ばしたまま足を蹴りだすと足は地面にぶつかり、左右の脚を交差させることができなくなる。 そこでどうするのかというと、骨盤を使って、蹴り足に転じた後ろ足を引っ張り上げて、引き足と交差させるのだ。 それに加えて、後ろ足の拇趾の付け根である拇趾球を使って、地面を漕ぐようにつま先を伸ばしてやれば、ほとんど膝を伸ばしたまま脚を交差させることができるのである。

 

 何だか話が複雑になってしまったが、要約すると歩行のポイントは、足の着地と動作をイメージすることだ。 まず、膝を伸ばして踵から着地し、特に、後ろ足の踵が地面に接地している状態を意識して、ほんの少し長く保つようにイメージすることでスムーズに、リズミカルに歩くことができるようになる。 そうすればアキレス腱やふくらはぎの筋肉、膝関節、そして大腿部の筋肉が伸ばされ、骨盤が引き上げられて、張りのある美しい歩行ができ、自然と歩幅も大きくなってくる。

 

 こうすることで制動効果を最小限に抑えて効率的に、そして無駄に足をあげることなく、静かに歩くことができる。 膝の曲げ伸ばしは、斜面や階段の登り下りで、はじめて本来的に活躍できる出番となるわけだ。 引き足は拇趾の付け根の拇趾球で地面を漕ぐのであるが、その時にはある程度、踵が高い靴の方が有利なはずである。 しかし、最近はデートの時でもハイヒールを履かない女性も多いそうだ。 これは姿勢が悪すぎてハイヒールを履いた上ではバランスがとれないからであろう。

 

 こうした骨盤を使った歩き方、すなわちモンローウォークのように腰のインナーマッスルを使うことになるのであるが、それには背骨の柔軟性が要求される。 つまりからだの歪みが大きくて姿勢の悪い人には無理だということになる。 また、高齢になると転びやすく、膝を痛めるのは悪い姿勢を治して、膝を伸ばして歩く習慣が身につかなかったからである。

 

 

 明日からの担当は、ハイヒールもグッドな香実行委員です。