東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

直立二足への進化

 昨日に続いて、三日目のテーマは 「直立二足への進化」 とした。

 

 生命の始まりである海洋生物から地上に上がり、四足歩行動物の時代を経て、二足歩行の人類へと進化してきたものであると、生物学の本には記されている。 人類は大後頭孔の位置が頭蓋の底面に移動したから二足歩行するようになったのか、二足歩行するようになったから大後頭孔が頭蓋の底面に移動したのか、それは、ダーウィンの進化論に委ねるが、 大後頭孔の位置の変化は人類にとって最も大きな革新であった。

 

 さらに、人類は頭蓋骨の形状を変え、前頭葉を大きく変化させ、頭脳を発達させていったのである。 また、人類の直立二足では地上の重力による体重が、垂直に伸びた下肢から直接足底に伝わってくる。 それを和らげるために 「土踏まず」 が発達し、三六〇万年前までには人類は完全な直立二足歩行を習得していたと考えられている。

 

 人類は三六〇万年も前にすでに二足歩行を始めていたのではあるが、それは何も人類だけの専売特許ではない。 チンパンジーやテナガザルやカンガルーなども二本足で歩いたり、飛び跳ねたりしている。 このように人類以外にも二本足で立ったり歩いたりすることができる動物がいるのも事実である。 

 

 では人類の二足歩行とどこが違うのか、それは単なる二足歩行ではなく、人類は直立二足歩行であるということだ。 この直立というのは、膝や股関節が曲がることなく、下肢が垂直に下方に伸びていなければならない。 その垂直に伸びた脚の上に、直立した上半身がつながっている。

 

人類は直立二足になったことで、膝と股関節を曲げる必要がなくなった初めての陸上動物である。 しかし四足歩行動物が頭部を前方に突き出し、常に筋肉を働かせて頭をひっぱり挙げていなければならないのと同じように、人類の場合も脚の筋肉を使って膝と股関節を伸ばしておかなければならなくなった。 

 

 人類が膝と股関節を伸ばした状態を維持するために必要とされる筋肉は、大腿部後面のハムストリングと下腿部のヒラメ筋である。 ところが、人類が直立二足歩行に至るまで、四足歩行の時代が長く続いていたこともあって、膝や股関節が四足動物の後ろ足と同じように屈曲しやすい習性も今なお引き継いでいる。 そこで、膝や股関節を伸ばしておくために、人類はこれら脚のハムストリングやヒラメ筋を使って維持するようになったのである。 

 

 ハムストリングは、大腿骨の後面の深部にあり、インナーマッスルといわれていて、弛んだヒップを持ち上げる効果もある。 だが、文明時代の昨今にあっては、大腿骨前面の大腿四頭筋を使って立っている人を多く見かける。 この大腿四頭筋を使って直立二足を維持していると、セルライトの原因にもなりやすく、またO脚になる確率もひじょうに高くなる。 

 

 膝が屈曲すると、両膝の距離が離れていくのは生理的に自然なことであるが、実はこれこそがO脚の根本原因なのである。 これをからだの土台は足だからというので、整体療術家のなかには、とんでもない方法でそれを治そうとする人もいる。 

 

 直立二足という人類の原点に戻れば、下肢と上半身のバランスが取れれば、膝と股関節は自然に伸びて、O脚は解消するものである。 特に上半身の前方に片寄った狂ったバランスを是正するのに、操体では骨盤の前湾曲を誘導している。 すると、臀部が後方へ向き、上体のバランスを後方へ移動することができて、ハムストリングやヒラメ筋の支えとなることができる。

 

明日に続く

 

 

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