東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

社団法人日本操体指導者協会設立

2010年8月、社団法人日本操体指導者協会(Sotai Practitioner Association of Japan)を設立した。

この団体は、操体の専門家の地位向上、活動支援、資質向上と、新たな操体専門家の育成のために設立された。そもそも私が操体のプロの立場に疑問を抱いたのは、2000年、早稻田操体法研究会の勉強会に参加した時の事だった。他の操体関係の勉強会に参加することは余りなかった上、私が最初に操体を習ったのは、手技療法家向けの講習だったので、私はてっきり臨床家や鍼灸師柔道整復師の先生方が集まって勉強するのだと思っていた。ところが、勉強会に参加していたのは、殆どが一般の方々だったのである。勉強会の途中、早稻田の石井先生が私を紹介して『彼女は操体のプロです』と紹介してくれたのだが、その時、参加者の中には『操体のプロなんているんですか?』と驚いた人がいた。
これには驚いたが、気を取り直して考えてみると、一般の人が集って学ぶ操体の勉強会と、ある程度の臨床スキルを持った手技療法家が参加する講習では違うのだ、ということに気づいたのだ。
しかし世の中は操体愛好家(Sotai Lover)の数が圧倒的に多く、操体の専門家は圧倒的に少ない。一般の操体愛好家が『操体にプロがいるなんて』と思っても仕方無いし、彼らは自分や身近な人達の健康維持増進を目的としているのであって、操体の指導者(操者)として患者(クライアント、被験者)を診て生業をたてているわけではない。

本来、操体は医師である橋本敬三先生の臨床であったはずなのだが、いつしか健康維持増進や養生的な愛好家のほうが多勢になってきた。全国操体バランス運動研究会も、当初は操体臨床についての討議だったが、途中から『操体を生活に活かす』と、運営テーマを変えたという。『操体を生活に活かす』方法を指導することも必要だが、『操体を生活に活かす』ことを人に伝える人材、プロの育成も必要だ。

もう一つ覚えているのは、2001年、仙台で開催された全国操体バランス運動研究会の基調講演である。そこで講演をしたある大学の先生は、『操体でお金を取っちゃいけない』と言った。確か操体を学び始めて5年位の方である。参加者100名位のうち、約10名は私の仲間、後の60名は古くから操体臨床をやっておられる先輩達だった。大学の先生が『操体でお金をもらっちゃいけない』と二回目か三回目に行った時、会場の空気がざわっとどよめき、『何言ってるんだよ』という声はじめ、明らかに不満を帯びた呟きが会場に広まった。丁度私の後ろには三浦先生が座っていたが、確か苦笑いされていた記憶がある。
つまり、この先生は会場にいた70名の臨床家に対して喧嘩を売ってしまったのである。『学校の先生だったら、臨床で生活を設計しなくていいからな』『自分達は臨床で生業をたてている。それを否定するつもりか』という見えざる怒りである。

その次は、長野の全国大会の時だった。三浦先生と私は休み時間に一緒にエレベーターに乗っていた。その時、前か後ろにいた年配の女性が、隣にいた仲間らしき人に向かって『操体でお金取っちゃだめよね〜』と言っていたのである。三浦先生も私もそれを聞いてちょっと驚いた。私達は操体臨床で生業をたてているのである。また、そう言うのであれば、温古堂で治療をされていた橋本敬三先生を否定することにもなる。

やはりこのケースも、Sotai Lover(操体愛好家)ならば『操体でお金取っちゃだめよね〜』だったら意味がわかる。それは愛好家レベルの操体ではお金を頂くには値しないということでもあるのだ。言い方は悪いかもしれないが、趣味でやっているあまり上手くない歌を延々と聴かせる場合、その人は聴いてくれた人に「歌ったからお金頂戴」とは言えない(ジャイアンなら言うかも?!)。しかし、プロのコンサートやディナーショーにはお金を払ってでも聴きに行くのである。

そして、この十数年間操体の世界に携わって感じたのは『操体の専門家は非常に数が少ない』ということと『操体の専門家の立場が低い』ということだった。愛好家が多いため、専門家は陰に隠れてしまっているのである。
また、接骨院や治療院関係では『操体操体法』は業界内では知名度が高い。しかしその殆どは『操体をちょっと取り入れている』とか『ある動診と操法のみに限って取り入れている』という場合が殆どであり、知名度は高いもの、深く学んでいる専門家は非常に少ないことがわかる。ということは、浅い知識で臨床に臨んでいるので『せいぜいこんなもんか』の操体や『補助的に操体を使っている』ケースが圧倒的に多い。

こういった状況をみているうちに、しっかり学んだ優秀な操体の専門家を育成して、地位向上と資質向上、活動促進をしたいと思うようになった。そのためには、『操体を一定の時間しっかり学び、優秀なスキルを持っている操体の専門家』のポジションを確立しようと思ったのである。
それが「操体プラクティショナー」だ。

操体プラクティショナー」という名称は、社団法人日本操体指導者協会が商標登録している。


畠山裕美


8月28、29日は大徳寺玉林院にて「東京操体フォーラム in 京都」開催
9月18、19日スペイン、マドリードにて「操体フォーラム in マドリード」開催
2010年操体法東京研究会定例講習は9月から始まります。