東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

病気と自己責任(3)

昨日の続き

 どんな病気にしても、その原因を追求していくと、必ず「血液の濁り」の一点にたどり着くのは確実なことである。ゆえに病気を治したいと思うなら、まず、血液を浄化することから始めなければならない。血液を清めたのにもかかわらず、治らなかった病気というのは未だかって聞いたことがない。血液が汚れる、濁る、とは一体何を意味するのだろうか。一つは血液の質が下がることと、もう一つは血液の循環が悪くなる、すなわち血のめぐりが落ちることである。

 血液の質の要因としては、「呼吸」と「食事」が関係している。呼吸が浅くなれば、血液中の酸素が少なくなって、せっかく口から取り入れた栄養が不完全燃焼となり、燃えきれずに残ってしまう。これは酸素不足の状態で火を焚くのと同じことで、可燃物は火になって燃えずに、煙になるばかりで燻ぶってしまうことになる。口から栄養を取ることにより、カロリーが出る、と思っている人が多いようであるが、食物が栄養になるためには、まず十分な酸素が必要なのである。ということは、呼吸の浅い人が栄養を摂れば摂るほど、ますます栄養不燃焼を起こして、血液が燻製になって濁ってしまうことになる。これは自動車のエンジンやボイラーなどの内燃機関における不完全燃焼と何ら変わることがないのである。

 酸素をとり入れる呼吸の座は、鼻であり、栄養をとり入れる食物の座は、口であるが、この二つは顔の中央正面に、同等の資格をもって縦に並んでいる。いずれがより大切ということはなく、二者協力によってのみ、良質の血液をつくることができる。にもかかわらず、TVのCMに見るような栄養摂取のみを説いて、それで良質の血液がつくられると思い込ませるのは、いったいどうしたことであろうか。呼吸の大事なことをあまりにも認識していないように思える。人間は自然に呼吸しているから、あえて説く必要はないと考える人もいるが、それならば、人間は自然に食べているから、栄養など説く必要はなくなるのである。人間は人間だから、やはり「栄養学」が必要であるというなら、それとまったく同じように、人間は必ず「呼吸学」を必要とするのである。

 人間の腹部には、肉食中心の西洋人などで全長4〜7m、穀物や野菜中心の我々日本人は9〜11mという身長の何倍もの長さの腸管が詰まっており、この腸の周囲を多くの血管がとりまいている。したがって腸には大量の血液が集まっているが、構造的に血液循環が悪く鬱血状態になりやすい。血液の循環が悪くなれば、血液中の酸素や栄養も全身に運ばれなくなってしまう。
 そこで呼吸によって肺底まで空気が満たされることで、肺は大きく膨らみ、ポンプの圧力のように自然に、無理なく横隔膜を下げることができる。すると腹圧が高まって、滞っていた血液が勢いよく押し出されることになる。このように血液の流れがよくなれば、酸素をはじめ、腸から吸収された蛋白質、炭水化物、ビタミンといった多くの栄養素の運搬もよくなって、全身の細胞に新鮮な酸素と栄養が行き渡るようになり、体細胞を活性化させる。また血液が体内から回収してきた二酸化炭素も十分に放出することができるのである。

 良質の血液のためには、呼吸とともに栄養の大事なことは言うまでもない。澱粉質、蛋白質、脂肪質の三大栄養素をはじめとして、ビタミン、ミネラル、酵素などの栄養学の発達は実にすばらしいと思う。しかし栄養学がすでに完成しているわけではない。厳密な意味では、永遠の未完成であり、無限の追究を要する課題である。

 動物はまったく栄養学をもっていないが、立派に栄養を摂り、人間以上に、健康と天寿を楽しんでいる。その「栄養摂取本能」は、人間にも与えられているはずである。この本能を動物のように発現させることができれば、どれほど健康に役立つことだろうか。だからといって、今さら動物と同じような自然の食事法をするわけにもいかない。そこで人類の先人たちが「腹八分目」と教えるように、少食にして、菜食中心の食生活を心がけることにより、本来の自然な食事法に近づけることができるのである。

 このように呼吸と栄養とは、血液の質に関する大切な要素であるが、この血液の質に対照して、血液の循環が問題である。良質の血液であっても、その血液の流れが停滞すれば、不良血質に変わり、そのまま放置しておくと、生命維持の根源である正常な体細胞分裂ができなくなってしまう。その結果、がん細胞のように細胞分裂が不規則になった無秩序な細胞は、正常細胞より活発に分裂し、周囲の組織をおかすだけでなく、血管やリンパ管などに入って転移するようになるのである。いずれの病気にしても、このように血液の流れが淀んでいるという現象が起こっているのは確かなことだ。

明日に続く

2013年4月28日 東京千駄ヶ谷津田ホーにて、春季東京操体フォーラムを開催致します。