東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「赤血球の不思議?」

鍼灸学校に通い始めて半年が過ぎ、ようやく生活のパターンが出来てきました。
始業時刻が9時30分にも拘わらず、世田谷線世田谷駅5時44分の電車に乗り込み、学校には6時25分頃着くようにしています。
理由は「早起きは三文の徳」。

まず、リュックを背負って車内に入れ、しかも座れます。そして、乗換駅の三軒茶屋からは、「東武動物公園行き」という早朝にしか中々お目にかからない電車に乗れます。
リュックを背負って、「東武動物公園行き」。
朝から小学生になったようなルンルン気分。
学校に6時25分頃着くと、物知り掃除おじさんと世間話が出来ます。

私の大好きな職業の一つは、掃除夫。掃除が苦手な私でも、仕事としてならやっていく自信はあります(宿直の仕事で身につけました)。
朝早く起き、人の嫌がる便所掃除をして喜ばれ、お金を戴く。おかげで、健康!ホントに良い職業だと思います。

「世間では、高い金だしてジムにいってる人がいるけど、わたしゃ、
こうやってからだ動かして仕事して・・・まあ〜朝ご飯の上手いこと!感謝してるね。」
この言葉を聞くだけで、5文の徳。

そして60円の紙コップに入ったコーヒーをすすりながら、本を読んだり、勉強したり、最近では、教室のガイコツのデッサンと全く自由に施設を利用できるのです。しかも、一人で。

丁度、退屈になってきた8時頃になると学生がやって来始めます。そこでは、情報交換。
同じ1年生で専攻が違う人が多く集まってくるので、同じ教科でも違う先生からの情報が入り、新たな勉強法が見つかったりします。

もうこれだけで、合わせて10文!

ちょっとマクラが長くなりました、それでは本題。やはり気になるのは、赤血球

水曜日の2時間目、新任のA先生が汗をかきながらの熱血生理学。

血液の組成と働き:

血液の量は、体重の約1/13(約8%)をしめ、液体成分と浮遊する細胞成分よりなる。
血液容積の55~60%は、液体成分である血漿。40~45%が細胞成分。

さらに細胞成分は、赤血球、白血球、血小板に分けられる。
とありますが、この細胞成分の割合たるや・・・・

赤血球は、1立方ミリメートルの血液中に、成人男性で約500万個、女子で約450万個存在。
ところが、血小板は、1立方ミリメートルの血液中に、15~40万個。
白血球となると、1立方ミリメートルの血液中に、わずか5000~9000個。

単純に数量だけで計算すると細胞成分の95,2%は赤血球
血小板は4,7%そして、残りのわずか0,1%が白血球となります。

授業では、血液細胞数の割合など関係なく、それぞれの血液細胞の働きを紹介していきます。

特に、白血球は食作用や抗体産生などの生体防御機能をもっていることから、教科書では「生体の防御機構」として9ページも割いてそのシステムの説明があります。

血液細胞のわずか0,1%に過ぎない細胞にこれだけの時間を掛けて説明するのですから、非常に大切な細胞には違いありません。

しかし、血液の最も大切な働きは物質の運搬であります。
そのため、血液細胞の95,2%を赤血球が占め、赤血球のヘモグロビンが肺から酸素を、からだの組織細胞へ運び、組織細胞から二酸化炭素を肺へと運んでいるのです。

また、「赤血球の新生と寿命」という項では、血球の分化の主要過程という図がページの2/3を割いて載っています。

その頂点に位置するのが、骨髄の幹細胞。

そして、とんでもなく複雑な工程を経て赤血球やリンパ球、白血球になっていき、行き着くところは95,2%を占める赤血球になります。

しかし、繰り返しいいますが、教科書では、わずか0,1%にしか過ぎない白血球が最もたいせつな細胞のように取り扱われています。

少しうんざりするかもしれませんが、その工程を簡単に記載します。


骨髄の幹細胞を頂点に、骨髄系幹細胞と、リンパ系幹細胞に分かれ、骨髄系幹細胞はさらに、

単芽球→単球。
骨髄芽球→好中球、好酸球、好塩基球と3種類。
巨核芽球→巨核球→血小板。
前赤芽球→赤芽球→赤血球となり、この過程で核を消失。
リンパ系幹細胞はリンパ芽球→T細胞、B細胞。

このうち単球、好中球、好酸球、好塩基球T細胞、B細胞が白血球に属し、残りが赤血球と血小板となります。


何とも複雑で大変な分化です。

骨髄の幹細胞を頂点とし、ピラミッドのように底辺を作っている教科書の図を眺めていると、とてつもない歪みが見えてきます。

              ー赤血球が左のピンクマークー

細胞成分の95,2%をしめる赤血球が、ピラミッドの左隅に小さく描かれ、4,7%の血小板がその横。

そして、わずか0,1%の白血球が2/3以上紙面を割いています。
これでは、赤血球より白血球の割合が多く感じてしまいます。しかし何度もいいますが、白血球は細胞成分のわずか0,1%にしか過ぎないのです。

もっと普通の言い方をすると、血液細胞のほとんどは赤血球で、まれに白血球を見ることが出来る、くらいでしょう。

また、核のある幹細胞が前赤芽球など5種類の細胞に分化し、最終的に8種類の核のある細胞が生じる複雑な行程をたどります。
しかし、その複雑さの割には、「血液細胞のほとんどは核の無い赤血球」という単純さが不可解です。

また核がある幹細胞がなぜこんな複雑な過程を経て、わざわざ赤血球の核を無くすのでしょう?

それは細胞が核分裂して増殖するという仮説に従っているからです。

つまり、核がなければ細胞分裂できず、赤血球が出来ないわけです。
ところが、これはあくまで仮説です。
もし、核分裂しなくても細胞が増えることを確認できたらこのような複雑な分化の仮説はなくなります。

また、赤芽球から赤血球になる時に核が消失しますが、その行方が定かではありません。
血液細胞の95,2%もしめる赤血球の核が老廃物として血漿内を浮遊しているのでしょうか?
これも極めて不可解。

そして、赤血球はわずか120日の寿命とあります。
となると、骨髄での赤血球の産生は猛烈な勢いでなされるはずです。
とにかく血液細胞の95,2%が赤血球なのですから。

ところが、人の成長とともに長骨(大腿骨や上腕骨)の骨髄には脂肪質が増えていき造血能力が低下し、 成人になると血液を造る骨が胸骨・肋骨・骨盤・脊髄などに限られるようになるとされています。
血気盛んな若者の長骨骨髄が脂肪で満たされ、血ができない!

もっと素朴な疑問は、造血している骨を切ったら溢れかえるほどの血がでてくるの?絶対出てきません。これまた不可解。

また、最も大きな長骨の大腿骨から、大量の赤血球を運搬する血管は何本あるのでしょうか?

私は解剖学の授業で、B先生に質問してみました。

答えは、3~4本でしょうとのことでした。

これは、実に驚きです。
果たしてこれ位の数で、運搬がまかなえるのでしょうか?
もしもこの血管が1本でもつまったなら、大変なことになります。
しかし、「骨髄から出る血管の障害で生命を落とす」などと聞いたこともありません。
もし、骨髄で赤血球を産生するならば、何十本もの血管が大腿骨から出ていないと、不自然に思います。
もっとも、大腿骨から何十本もの血管が出ていることの方が、不自然ではありますが・・・

骨格はあくまで支持・運動・保護機能が主な働きで、造血機能は特別な場合のみ営まれるのではないでしょうか?
特殊な状態に置かれた場合に造血されるなら、3~4本の血管で十分です。

          ー円盤状の数多くある細胞が赤血球

ここに赤血球と他の細胞の写真があります。

この写真を6~7才の子供に見てもらい、
「赤ちゃん細胞はどっちだと思う?」
と尋ねたなら、ほとんどの子供は
赤血球!」
と答えるに違いありません。
見るからに初々しいからです。これが核を無くしてしまった古い血液細胞だとはとても思えません。
もし、血液のほとんどを占める細胞・赤血球が古い細胞だったら我々は生き生きと生きることが出来るのでしょうか?

非常に素朴な疑問が湧いてきます。

以上が生理学と解剖学の授業で感じた「赤血球の不思議?」です。
明日は、私がこのような疑問をもつに至った千島学説との出会いを話したいと思います。



佐伯惟弘