東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

痛みとのおつきあい

おはようございます。
フォーラムの6日前に左拇指の腹を包丁でスライスした森田です。


朝から何を書いとんのじゃい!という感じですが(すみません)。

状況はと言いますと、ポン酢醤油を作ろう!と鼻息荒く、狭い台所で半分に切ってあったかぼすの断面を薄くスライスしようとして手がすべり、
自分の指をスライスした、ということです。

爪にぶつかったおかげで皮1枚でつながっており、指先の肉は分断されなくてすみました。
本当ならば商売道具である指を怪我するなんて仕事人失格の恥であり、公に曝すのははばかられるのですが、やってしまったものは仕方がない。
仕事仲間と患者様、家族に迷惑をかけるのは申し訳ないけれど、この状況を生かして何ができるか考えてました。
まずは、ブログのネタができた!この時期でラッキー。…なんてことを考えた、意外に余裕のある私(おこられますね)。
「小指側の指じゃなくて良かった。操体はできる」と思ったものの、拇指が使えないと足趾の操法や足底の触診、色々できないんですけどね。

以下、当日の様子を記します。


まずは近所の総合病院の緊急外来に電話し歩いて行きました。出血部位から指を離すと大量の血が出るので、ぎゅっと左示指で抑えて待ち合い室で腰掛ける。
熱く、ズキズキと鼓動のリズムで痛みを感じ、う〜ん、と小声を出してこらえる。
名前を呼ばれるのを待つ間、自力自動の操体をする。椅子で座位にて右足関節の外転。
右上半身に心地よさがふわ〜っと感じられる。快適感覚と同時にズキズキはちょっと軽減する。

相方には膝に手をのせてもらい、面の渦状波をお願いする。

自力自動の操体とはまた違った快適な流れがからだの中を巡る。夫とからだに感謝しつつ、しばらく味わう。
痛みも全くなくなるわけではないが、しかし確実に軽く感じる。そして、痛みと心地よさは同居できるものだな〜と感心する。


10分ほどで呼ばれ、診察室に入る。
ここからは夫は廊下で待機。

ネラトン(導尿、体液排出用のゴム製チューブ)で母趾の根元を止血しながら拇指腹に2カ所ほど局所麻酔をする(これが一番痛かった)。
感覚の麻痺を確認したら縫う、という治療でした。
この処置の間ベッドで仰向けに寝かされるのですが、目立たないように動診をする。

膝1/2屈曲位で右足関節の内外転と背屈、右手関節の示指を使っての動きの動診など。寝ている右側に壁があったので、膝の傾倒時には使いました。
今思えば足関節の内反もありでしたね。

目線や呼吸も使いましたが、ドクターの動きや看護士とのやり取りに気を取られて集中できず。
ただ、自分自身が作り出す恐怖心からは気をそらすことができ、「自分の意識が作り出す痛みの増強」から逃れることができました。結構大きいです。

調子に乗って「さあ、操体でどこまで痛みを軽減できるのか何針でも縫われてみよう!」と思うもつかの間、
局麻の注射をブッスーとされた時には、立てていた膝はもちあがり、「いって〜っ」と声を上げてしまう。
廊下の夫もこの声に縮み上がったそうだ。さすがにこういう時は痛みの軽減は無理か。

この時は思わず、
「出産時はこれより痛いのだろうか」
「時代劇で医者が傷口に酒を消毒だといってプーッと吹き付けるシーン」
「ちょっと古いが24で拷問を受けるシーン」
等が頭をよぎりました。松田優作の殉死シーンは、さすがにおこがましいな、とか。

ネラトンで止血をしているので、拇指だけが白く蝋人形の色になっていく。死体ってこんな色になるんだろうか。って、私の指か。
それにしても麻酔はすごい。ものの2、3分で痛みは薄れてゆく。
私は初体験なので、「麻酔ってすごいですね」とアホな感想をのべると、
ドクターは「そうじゃないと処置できませんから」と一言おっしゃってJの字の針で淡々と縫い上げて行く。

痛みがなくなると同時に余裕がでて縫合の様子を覗き込む。見たくてしょうがない。
できることなら携帯で撮影したいくらい。不謹慎な私である。
顔色と機嫌もちょっと悪そうな(←理由があるのです)ドクターの手腕にとにかくふむふむと見入る。
「すばらしい、見事です!」口に出すのは失礼と思い、心の中で賞賛。

フォーラムが近く、打ち上げは飲みたいと思い、「お酒飲んでいいですか?」と聞いてみると、
「飲むのは自由ですが、痛むのは自分です。でも、その前に気を失う程飲めば別ですけど」
なるほど。普通の表情でおっしゃるドクター。なんかちょっとツボ。

この日は患部をガーゼで包んで、その上に包帯をして、抗生物質、抗炎症剤を3日分と強めの鎮痛剤(頓服)を処方されて終了。
「痛くなったら心臓より指を高くあげて、それでもいたかったら鎮痛剤を飲んでください」。判断しやすくていい。

今は麻酔が効いているが、切れたらどんな痛さなんだろう、不安な気持ちで帰宅。
禁止されるとやりたくなるもので、一体何日酒を飲まないでいられるのか、それも気になる所。せっかく今日おいしいワインを買ったのに。

欲深く、飲み意地のはっている私である。


次の朝、包交外来で見てもらった後は、
縫ったその上からバンドエイド1枚で帰されました。あんなに大騒ぎしたのにちょっと拍子抜け。


縫った所も撮影しましたが、さすがに自粛しました…。



明日は、操体以外には何をしたかを書きます。
では、お仕事行ってきます。


森田珠水