東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

りんご

この間喫茶店で新聞を眺めていたら、ある広告が目に留まりました。
「すべては宇宙の采配」という本の広告でした。
タイトルも面白そうだと思ったんですが、ちょっと内容が紹介してあって、「不可能だと言われていたリンゴの無農薬栽培を成功した農家の方がUFOや宇宙人についての体験を書いた本」らしいのです。無農薬リンゴ栽培に成功したというだけでも面白そうですが、それとUFOや宇宙人が僕の中ではすぐに結びつきませんでした。これは面白そうだと思い、この本と、リンゴ栽培について書かれた「リンゴが教えてくれたこと」を読みました。
不勉強で存じ上げませんでしたが、著者の木村秋則さんは無農薬リンゴ栽培を成功させたことで大変有名でTVにも出演されているらしいですね。
無農薬栽培を始めて9年、病気と虫で実がなるどころか花も咲かせなかったリンゴが、苦心された木村さんに応えて花を咲かせるところからこの本は始まるのですが、長い間待ち焦がれたものが目の前に現われる様は大変ドラマチックです。

翌年になって初めて小さい2つの実がなったそうですが、家族を抱えながら10年もの間リンゴで収入を得ることが出来ずに、社会的にも経済的にも精神的にも追いつめられてもなお、ご本人もご家族もその軸をブレさせないでいられるというのはどういうことなのか、スットコドッコイ代表としては人が何故生きるのかということを感じさせてもらう本でした。

木村さんがリンゴ栽培について書かれていたことでちょっと面白いなと思ったのは雑草の話です。
自然農法ではあえて雑草を刈らないことがあるらしいのですが、木村さんは秋になるとリンゴの下草をあえて刈るというのです。

『それは草を刈ることによってリンゴの木に秋を教えたいからです。草ぼうぼうの伸び放題だと土の温度はいつも同じです。するとリンゴの木は秋が来たことが分からなくなります。九月に入ると津軽地方は夜の温度と日中の温度で差が出てきます。その頃を見計らってリンゴの木に「秋が来たよ」と草を刈って教えてやるのです。』

『自然というのはただ『手を加えないでそのまま放っておけばいいというものではではないようです。自然をうまく利用するのが人間ではないでしょうか』〜「リンゴが教えてくれたこと」より〜


以前友達に誘われて自然農法の畑をやらせてもらったことがあります。木村さんは農薬でからだを傷めた奥様のために無農薬栽培を決意されたらしいのですが、僕の場合は立派な動機は何一つなく(笑)、「一ヶ月に一度畑に行くだけで収穫が出来る」と聞き「そんなウマい話があるのか」とやってみましたが、もちろんそんなウマい話がある訳がなく(笑)、草ボーボーになっただけでした。
その時わかったのは「上手な人はわかっていて手を出さない」ということです。放っている訳じゃなく、プロセスを熟知しているので、どこに手を出すべきか出してはいけないかがわかるんですね。これはからだという自然にも当てはまることではないでしょうか。「簡単に出来る」からいいわけじゃない。「よく知って本当にどこにいつ手を出すべきかがわかっている」ことが大事なんですね。


リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)


山本明