東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

コンフォートゾーン

「いやぁ〜、もうすぐ10月ですねぇ〜、1年がアッという間です
よねぇ〜」「今週も早かったねぇ〜」「今月も終わったねぇ〜」
などなど、よく口にする会話ですよね、特に年をとるにつれて、
1ヶ月、1年が早いこと早いこと、気が付くと月末、そして年末と
年々感じています。
この現象は年を重ねれば重ねるほど、その傾向にあるようです。

子供の頃って時間が経つのが妙に長く感じたりしませんでしたか?
夏休みまで指折り数えたり、お年玉がもらえる正月やクリスマス
などの行事も含め、ホント待ち遠しかったのを覚えています。

でも、これって冷静に考えると、あり得ない現象なのです。
1日の時間の流れは若かろうが、年をとろうが変わらないはず
ですし、変わるわけが無いのです。
では、何故、時間の感じ方が人によって変わるのでしょうか?

これは、どうやら『脳』の働きが大きく影響を及ぼしているようです。
脳が一番嫌がるのは自分自身に負荷をかけられることです。
脳への負担が増えると、脳温が上がり、コントロールが困難な状態
になりやすくなります。
これはパソコンのCPUと同じで、CPU負荷がかかり過ぎると、熱暴走
を起こして、フリーズしたりエラーが頻発したり、とんでもない状況
になってしまいます。

この、時間を長く感じたり短く感じたりする現象も、『行動のパターン化』
の様です。パソコンも同じですが、よく使う単語や文字はメモリ領域で
記憶をすることで、次に同じタイピングをした時にはスンナリと出て来ます。

人間の行動も同じで、過去に経験をしたことがあるものに対しては、
脳はメモリ領域に記憶をしているので、スンナリと引き出すことが出来ます。
ですから、子供と違って新しい経験や新鮮な感覚が少なくなり、既に
経験したことを日常的に多く行う大人にとっては、脳への新しい記憶
の書き込み量が圧倒的に少なくなり、日常生活に子供の頃の様な新鮮
さが無くなってしまっているのです。

そして、脳の特異な作用として、『住めば都』症候群的作用があるのです。
それが、タイトルにもなっている『コンフォートゾーン』と言われるモノです。
”コンフォートゾーン”って直訳すれば、「安心感・快適さ」になります。
別の言い方で「ぬるま湯」などと呼ばれることもあります。
先程も言いましたが、脳は冒険を怖がるところがあります、出来得る限り、
現状維持で脳温を上げない変化の無い一生を送ろうとします。

転職をしても、いつも同じ事で、つまずいてしまう・・人の好き嫌いが激しいなど、
職種や環境が変わってもその人が抱える問題は変わらないのです。
それこそが、『自己対話と自己イメージ』の問題です。自己対話とは左脳で行われ、
自己イメージは右脳で行われます。因みに、右脳は左脳の100万倍のスピードで働く
と言われています。
この自己対話と自己イメージはプラスでもマイナスでもリンクしていますので、
何をやっても上手く行く人と、何をやっても上手く行かない人が出来るのは、
当たり前なのです。

例えば、『私人付き合いが苦手なんですぅ〜』などと普段から公言している人は、
その言葉の裏側には苦手だということを証明しようと期待しつつ日々生活を送ります。
そして、そうイメージをすることで、無意識の中で人付き合いが苦手な行動を証明
しようと動きます。人付き合いが苦手だと『期待』をして動きますので、当然結果は
期待通りやっぱり人付き合いが苦手なんだわ!という結果が導き出されるのです。

何もプラスイメージだけがその人を作るわけでは無く、マイナス
イメージも強ければ強いほど、大きな期待値として結果をかえしてしまうのです。

この現象って、私達臨床家には馴染みがある光景で、クライアントで症状疾患
を抱えてきているのにも関わらず、「何処に行っても、どんな先生に診てもら
っても良くならないの!」
とか「腰痛治療の名医って言われている先生に診て
もらっても駄目なの!」
って、治らない私を妙に自慢をする方がいるのです。
どう見ても来たときよりは痛みも楽になり、スッキリ立てているの
にも関わらず、楽になったのがおかしいぞ!と言わんばかりに、
「でも、今度は首が痛いの!」「膝が痛いの!」と次々に痛みを
生産するのです。

痛みを抱えていると、色々な方から気の毒がられたり、気をつか
ってもらえることが、”快”になってしまい、痛いところが無く
なると、誰にも構って貰えないんじゃ無いかという不安から来る
自己防衛反応でもあるのです。

これもまさしくマイナス期待値の自己イメージですから、何処へ行っても同じ
結果しか出て来ません。マイナスも期待値が大きければ大きいほど、痛みも大
きくかえってきます。

人が良くも悪くも次の段階にステップアップするには、この『自己対話と自己
イメージ』
の次(高)次元へのレベルUPでしかないのです。
ですが、習慣の動物である人間は、一度手に入れた心地よい習慣や環境を変え
るのには、相当の抵抗があります。抜け出したつもりでも気が付くと又、元の
ぬるま湯に戻るといったことを繰り返します。

これら認知心理学の観点から、私自身も最近はクライアントをみるように
もしています。その人にとってのコンフォートゾーンは何なのか?など、
情報や社会が多様化している現代だからこそ、より多角的な目を私達も要求さ
れているのだと考えています。
この辺りの話しはし始めると長くなるので、又、機会が有ればと思います。
一週間有難う御座いました、来週はお待ちかね三浦寛理事長です!