東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

間似合紙より。

おはようございます。

 今回のブログ担当も今日が最終日となりました。陽が暮れるのが早くなったせいか、ホントに一日が早く、一週間もあっという間と感じます。

 この、あっという間に、自分は間に合っていただろうか。間に合うという言葉は、寛げるような、安心するような言葉ではあるが、奥の深さを考えさせられる言葉でもある。

 最近、テレビを見ていて、間似合紙というものを知った。これは雁皮紙の一種で、名称の由来は襖の半間の幅に継目なしにはるのに、間に合うという事柄からだそうです。

 「間に合う」から「間似合う」へ。当初は襖にはる襖紙に、ちょうどよいサイズとして、間に合うという意味からだったと思う。しかし、襖は室内空間に合わせて、絵が書かれたり、金箔が貼られたりするので、紙質も用途に適応するものでないと間に合わなくなる。
 「間似合紙」という名称が生まれたのは、そういった背景があったからではないだろうか。

 テレビ番組は、間似合紙として名高い名塩雁皮紙を作る人間国宝の職人さんの仕事ぶりを紹介したものであったが、名塩雁皮紙のすばらしさが十分に伝わってくるものであった。

 名塩雁皮紙の特徴としては、日焼け、変色、湿度の変化に強く、保存性に優れている。その他に書画の墨ののりも良く色も良くなる、絵具の発色も良い、摩擦熱に強いことから箔打ち紙にも最適など。この適応力の高さ。正に間似合紙。重要文化財の修復には、なくてはならないというのも頷ける。

 襖が部屋どうしを仕切る単なる間仕切りであったなら、襖紙もサイズがちょうど良く、保存性に優れるという面だけで十分間に合い、間似合紙という名称はつかなかったかもしれない。しかし、人々は室内空間をより豊かに愉しむ為、美的景観を求めた。
 襖にそれを求めても何ら不思議はない。格好の下地だと思う。そして、文化の発達に伴い、書や絵画という芸術作品のキャンバスの役割も担うようになった。

 そうなると、襖紙も人々の要求、時代の要求に応じて、質的に進化していかなくては間に合わなくなる。
 保存性に優れるという事をベースに、書の墨や絵画の絵具への適応性を付けていくという事であり、墨ののりや絵具の発色が良くなったからといって、保存性が薄れ、日焼けや変色が起きやすくなってしまっては元も子もない。

 基本をおさえ、基本を成す事柄を深化させ、その上で適応性を付けていく。雁皮紙の原料を再確認し、足りないものは足し配合のバランスを調整し、紙すき、乾燥まで、要望に沿う為の調和を模索していく。地道な精進の積み重ねであり、突然変異的進化ではない。深化を元にしての進化。

 当初はサイズが間に合うだけの襖紙だった。それが時代や人々の美的空間への要望が加わり、その美的価値に似合う襖紙が求められた。間に合うように進化させていった結果、間似合い紙と呼ばれるような適応性の高い上質な紙となったのではないだろうか。
 


 操体も進化している。こちらも突然変異的進化ではなく、深化を元にした進化だ。何を深化させているのか、もちろん自然法則だ。自然法則の原求を深めた上で進化している。

 なぜ、進化しなければならないか。それは、時代とともに、人々のからだの要求が変化しているからだ。
何十年か前の、コキンとやったらパッと良くなった、という長期的展望抜きの考え方は通用しなくなっている。物質的に豊かになり、生活様式も大幅に変化した今、人々のからだに、それを受け入れるだけの素地がなくなってきているのだと思う。

 人々の心とからだは快を求めている。それも年々、より高い調和に向けた快が求められるようになってきている。出来るかぎり、からだにやさしく、効果のあるものへ。
 進化していかなければ、間に合わない。

「2014年秋季東京操体フォーラム
今回は11月22日(土)23日(日)の二日間開催いたします。
メインテーマは「操体進化論」。
22日は満席となり、締め切りとなりました。
23日は参加可能です。ご参加希望の方は、お早めにお申し込み下さい。
詳細は以下、「東京操体フォーラムHP」をご確認ください。
http://www.tokyo-sotai.com/?p=813

 一週間お付き合いいただき、ありがとうございました。
 来週は中谷祐祥さんの担当となります。
 来週も、どうぞ宜しくお願い致します。