東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

先天性股関節脱臼のひろさん3

なんとなく私はひろさんの両足裏の母指球の外側のあたりに
両手の母指を軽く当ててみました。
「ここはどんな感じですか?」

「はい、なんともないです」

「ちょっとずらしてみますから感じをつかんでみてくださいねー」
「これが上、これが下」

「下がいい感じです」

「はい、では味わってくださいねー」

15秒程したら、グワングワンと上体が今度は縦に揺れ動き始めました。

「今度は縦揺れですねー!」
私が言う前にはるちゃんが笑って言いました。

「これもいい感じですか?」

「はい、なんか不思議ですけどいい気持ちです」

「動きはからだに任せて、しっかりと味わってくださいねー」

グワングワンぐわ〜んぐわ〜んと、からだが何かから開放され
たかのような感じで動きます。

「無意識の動きはバランスを整えるんですね」

「気持ちのいい動きを味わうと良くなるようになっているんだ
けども、患者さんて頑張りが足りないから治らないんだなどと
考えて頑張りすぎてしまうんですね」
「気持ちよくがんばる程度で間に合うんだけれども、欲張って
威張りたいとか人に認められたいとかいう気持ちが強過ぎると
ヒドイメに合うようになっているみたいですよ」

などと話をする私。

ひろさんは「なるほどねー」と納得。

五分程縦揺れを楽しんだからだは、満足したかのようにベットに
静かに落ち着いて脱力しました。

私はそっと手を離し、
「少しそのまま余韻を味わっていたいですよねー」
「起きたくなったら起きてみてくださいね」

「はい」

一分位してひろさんは起き上がってベットに腰掛けました。

背中に背負っていた重い荷物が消えてなくなったような
感じがしました。

つづく