東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

直感という思考

六日目です。よろしくお付き合いください。
皆さんは将棋をやったことがありますか?僕も久しぶりに将棋をおこなう機会がありました。先の手を読みながら指しているつもりでも、結果は惨敗です。将棋は先を読むこともですが、直感も必要な頭も最大限に使うのではないかと思います。プロの棋士の頭の中はどんな状態なのでしょうか?と思っていたら、羽生名人をはじめとするプロ棋士60人の頭をfMRI(機能的核磁気共鳴装置)で撮影した結果の論文をみつけましたので紹介します。
実験の方法は、将棋の(1)序盤(2)中盤(3)終盤(4)詰将棋の各局面を棋士に見せ、そこで指すべき手(正解手) を 「ごく短時間のうちに」 示させる、というものでした。 このときの棋士の脳内をfMRI計測 (脳のどの部位を活動させているか) と 脳波計測 (いつ、どのように活動させているか)を行ったものでした。
結果は、プロ棋士の全員が正解手を示し(1)の序盤では局面を見てから 0.2秒後、(2)の中盤(3)の終盤では局面を見てから0.9秒後、(4)の詰将棋では、局面を見てから 1秒間ですべての駒の配置と駒の利きを把握し4秒以内に解いてしまったという。この時の脳の働かせ方こそ、実際の対局の場において プロ棋士たちが採用している「思考」 のプロセスがあり、脳科学が 「人間の思考のメカニズム」 を解明する手がかりの1つとして注目しているもののようです。プロ棋士のfMRIと脳波計を使った 測定の結果は「小脳」の活動が確認されたとのことです。小脳と聞いて「えっ」と思うかもしれません。小脳の本来の働きはヒトの脳のなかで「運動機能を統合する」役割を担うことで知られるのが小脳だからです。これらのことから、将棋で小脳が働くということは、プロの棋士達は脳のなかでスポーツをしているということになります。
また今回の結果では、小脳の他にプロ棋士でのみ活動している脳の領域が見つかり、それは「大脳基底核」だったようです。大脳基底核は大脳皮質と視床や脳幹を結びつけている神経核の集まりで情報の選択装置として働くことで、大脳基底核が選び、小脳が答えを出すという直感の閃きのメカニズムなのではないかとのことでした。
「直感には小脳が行う予測が重要である」と「小脳仮説」を唱えていた博士もいたようですがこの仮説を立証する内容でした。またこの博士の説では、次のように述べています。大脳皮質で起きていることは人間の意識に上ってくるが、それ以外の小脳や脳幹で起きていることは意識に上ってこない。脳内では無意識の状態でもたくさんの情報処理が行われている。運動では、最初、大脳皮質を使って意識的に手足を動かして、上手くいったかどうかを確認しながら練習をする。そして練習を重ねるうちに、手足の模型のようなものが大脳皮質にできてくる。それが「メンタルモデル」と呼ばれるものだ。大脳皮質にメンタルモデルができると、当初はそれを使って予測をするが、ある段階でそれが小脳にコピーされる。すると、その「内部モデル」を使って、小脳自体が予測をするようになり、意識をしなくても手足が正確に上手く動くようになる。大脳皮質のメンタルモデルが小脳に移されることによって、意識から無意識への移行が行われるわけである。思考はモノを動かすという点で、運動と似ている。運動では手足を動かすが、思考ではイメージや概念を動かす。そして運動の場合と同様に、思考でも最初は大脳皮質にメンタルモデルができる。大脳皮質の後側にある 頭頂・側頭連合野にイメージや概念が記憶されていて、それを前側の 前頭連合野が動かす。それが意識的な思考である。そして、いろいろ思考しているうちに、概念やイメージのモデルが頭頂・側頭連合野から小脳にコピーされ、無意識のうちに内部モデルを使って小脳自体が予測をするようになる。 つまり、直感的に答えを出すようになるのである。という内容です。
プロ棋士のみならず、人間の誰もが 多かれ少なかれ持っている 「本物の直感」この直感という思考は、楽な状態や、人任せや、何もない状態でただ出てくるものではないと思います。真剣に向き合い、物事の本質を心にとどめ、常に真理を求める心が必要ではないかと思います。
からだの感覚(快適感覚)も同じではないでしょうか。